ケーニヒという男はかわいい、2mを優に超える巨体は安心感がありその覆面の下に隠されたものが彼を不気味に思わせるかもしれないが話してみれば案外シャイであがり症気味で人と話すのは得意では無い、そしてその巨体から察するようにまぁ下半身も大きかった、優しく愛に溢れて相手を気遣う彼の優しさはまるで恋人のようである。

ニクトという男はかっこいい、その不気味な身なりと独特の瞳を持ち隔離性障害を持っているがその根本はまともで真面目で頼り甲斐があり、案外面白い話やジョークもしてくれる、傷だらけのあの肉体の隅々を見た事はなくとも鍛え上げられたその肉体で行われる行為はどこか乱暴的で女の喜びを熟知しているようにさえ感じる。

そして現在、そのように考える彼女は目の前にいるその二人に対してどのように対処すればいいのかと内心酷く悩んでいた、彼らは彼女に話があると行ってあまり使用されていない備品整備室の中に連れ込んでは一触即発の空気感で睨み合う

「どういうことなんだ」

それは二人とも揃った声であり、長い沈黙の末の綺麗なハモリだなんてまぁ上手。と彼女は手を叩いてやりたかったがそんな雰囲気は残念ながら全くなかった、それどころか彼女は今この男たちに何故呼び出され何故この状況になっているのか理解さえあまりしていない。
そんな状況に対してケーニヒは優しく「真実だけが知りたい」と告げるが彼女はますますその小さな頭を傾げる、真実といえばなんだ?人に言えないことをしたというのなら正直両手両足では足りないことだらけだし、彼女が軍を抜けてコルタックというPMCに来た時点でまともな生活が出来ない人間というのは分かりきっていたことだ。

「別に包み隠さず言えばいい」

ニクトの潰れた声がそうはいうものの彼女は何事かも分からないと近頃あったことを考える、先日ホランギと賭け麻雀をして他の2人を巻き込んで彼をカモにしたこと、数日前ずっと狙ってた既婚者のハッチと酒の勢いで寝たこと、一先週ヴァレリアにいいヤクが入ったからとちょっとだけ二人でハイになったこと、さらにそのヤクの残りでグレイブスとオズとはしゃいでいたこと……まぁ数えるとキリは無いがコルタックはプライベートに関与はしない為会社に迷惑をかけなきゃ何をしていいというものだったので何も思い当たることは何も無い

「包み隠さずって、隠した覚えは無いけど」
「隠してない…って、本気なのか?」
「俺たちがただ気付いていないだけだったってのか」

ケーニヒもニクトも何を言ってるんだかと彼女は立つことも疲れてきて近くにあった適当な腰くらいの高さのある小箱に座って二人に対して「ハッキリいわない?」と告げれば彼らは互いの顔を見合わせてどうしたものかといいたげな表情を見せる
ニクトが落ち着きなく右足の踵をタップさせるためそのいら立ちのみせ方は嫌だといえば彼は静かに足を止めて彼女を睨みつけるが重たげで鋭い視線はいつもの彼であるため彼女は何も言わずに二人の言葉を腕を組み待っていれば、ケーニヒがいうよりも先にニクトがいった

「恋人はどっちだ?」

恋人…思わず彼女は呟いた、それは所謂デートをしたりいちゃいちゃしたり二人きりの愛ある思い出を作る関係かと考える、そして"どっち"ということ言葉に二人を見比べた、ケーニヒもニクトもセックスはしていた、それはもう毎週毎日暇な時があればどちらかの部屋に行き首に腕を伸ばして「はあい、ハニー」と言ってみせた、所謂まぁなんというか二人は彼女にとっての親密な友人だった、具体的に言えば下半身が繋がる意味の親密さである。
しかし彼女は言い訳では無いがいえることがひとつある、それは人生で出会った人間のほとんどが彼女と親密な友人になっていたということ、つまり彼女はとんでもない下半身と頭の緩い女なのだ

「こんばんはケーニヒ」
「どうしたんだ?随分酔ってるみたいだな、送っていくか?」
「大丈夫、今日はあなたの部屋で過ごすから、さぁかわいいタコちゃん見せてちょうだい」
「あっ!あっーー!!」

まずケーニヒは彼女が浴びるほど酒を飲んで帰ってきた時に偶然部屋のネームプレートを見た時に彼の下半身が気になって食いに行った。

「お前は俺たちに対して普通だな」
「だってニクトって普通に面白いから、それに覆面の男の唇って気になるでしょ、ほらかわいいクマちゃん見せてちょうだい」
「そんなっ!あっーー!!」

次にニクトは二人での任務の成功を祝いをと二人でパブに飲みに行ってはその興味からパブのトイレに連れ込んだからだった。
簡単にいえば彼女はセックス依存性なのだ、男と女も、自分の条件に合うなら誰でも構わない(※条件外は未成年・不同意の場合、流石に性犯罪者にはなりたくない)
そんな彼女にとってこの事態は不思議だった、彼らはつまり自分を恋人だと思っているというのだと無い頭で懸命に考えて一人腕を組んでふんふんと納得していた。
しかし彼女も馬鹿では無い、こうした事態が発生したのは誇ることでは無いが初めてではない、この二人のタイプからして「え?セフレじゃん?」というのは間違いだとは理解している彼女は答えを悩んでいた

「そうよね…ケーニヒは思いやりがあって優しくて包容力高くてかわいいところがある」
「あぁそんな風に言われると照れるが嬉しい」
「そう?よかった、ニクトはワイルドで色んなあなた達見るのはとっても楽しいし新しい世界を見てるみたい」
「そんなことを言うのはお前だけだ、俺たちも同じ世界をみれるだなんて最高だ」

彼女の言葉に二人は機嫌良く彼女の腰や肩を抱いては優しく微笑み掛けており、その姿はまさに一匹の獲物を狙う獣のようにギラギラとしていた、さて問題はここからどう切り抜けるべきかということで彼女はゆっくりと二人からすり抜けつつ

「そう二人とも本当にいい人、最高の仲間、コルタックにいて二人に出逢えたことは凄くよかった、こんな素敵な友達が出来るだなんてね」

アハハッと笑いつつ二人の手が身体から離れて彼女が大きく一歩二人から距離を取れば戸棚を叩く音が聞こえ肩が震えた、ニクトの癇癪かと思えばケーニヒが拳を握り彼女を見つめた

「友達なんて言葉はやめてハッキリさせないか?俺と君は恋人だって」
「Tシャツ覆面陰キャ野郎が何か抜かしてても気にしなくていい、ちょっと遊んだら勘違いするもんだ、俺たちの方がお前をよくわかってる、恋人は俺たちだと言え」

二人はジリジリとまた彼女に詰め寄ってそう告げる瞳は今にも食わんと言わんばかりで、このままでは血が流れることになる、そもそもフリーが一番心地いいのだから誰かのものになるだなんて有り得るものかと彼女は内心毒を吐いた、決して二人が嫌いではなくあくまで自由が好きなだけなのだ
恋人を作っていても飽き性なのか色んな相手を味見したくなる、それがどれだけダメだと理解していても止められない、いわばこれは彼女の病気なのだ、ケーニヒのあがり症、ニクトの隔離性障害、実際問題医者にしてみれば彼女は立派な依存性であるだろうが楽観主義者故に気にしていないだけのこと、にじり寄る二人に対して獣を落ち着けるように両手をみせて睨み合っていればふと狭い部屋の中でスマホの着信音が鳴り響く。
誰だ?と互いを見合えば彼女が「私だ、ちょっと出るね」と一声かけて着信相手もみずに受電マークを押して耳に当てた

『よぉハニー、俺だお前のクルーガーだ』
「フレディ?」
『俺は君の悪夢か?天国を見せたつもりだったが、それより今晩食事はどうだ?丁度任務で来てるから、今晩一緒に"また"過ごしたい』

スピーカーになっていたらしく狭い部屋の中では電話先の男、クルーガーの声が響いた、甘く優しい女誑しの声を聞いてはあの甘い目元を思い出して彼女は思わず目を輝かせる、確かにクルーガーとの夜は楽しかったからだ

『今晩伝えたいこともあるし、今日こそ君に俺への気持ちを伝えてもらわなきゃな、当然ベッドでッ……』

突如取り上げられたスマホに思わず視線を向ければ血走った目をしたニクトがロシア語で何かをまくしたてていた「Убить」「Снять лицо」と言っている彼の表情から物騒なことだろうと予想しつつ彼女が苦笑をして見つめていればニクトはスマホを地面に叩きつけて木っ端微塵に踏み砕いた。
データはチップがあるからそれが無事なら大丈夫だ。と出来るだけ現状の中でマシなことを考えようとしたさなか、ふと殺気を感じてしゃがんだ所大きな音を立てて壁が穴を開けた

「ケ…ケーニヒ?」
「他の奴らを殺せば恋人になれるならそうするし、お前を殺した方がいいならそうする」
「お、落ち着いて話をしよう?話っっニクト!」
「そうだな、殺して死体を持ってる奴が恋人だ」

コルタックはもう少しまともな人材を雇った方がいいと彼女は考えつつハンマーを持ったケーニヒとナイフを手にしたニクトをみては乾いた笑いを零した。

「ホランギ助けて!」
「うおっ!血塗れじゃないかどうしたんだよ」
「ケーニヒとニクトに」
「殺られたのか?」
「いや、殺った」

けどアイツらは生命力が違うから逃げてるところ。と言って廊下から走ってやってきた彼女の言葉に悪友であるホランギはだからこうなるんだと彼女と共に走りつつ話をした、こうなる未来しか無かったからこそホランギはこの女と寝たことは一度もない、酒に酔うと誰とでも寝るしそうじゃなくても寝ようとするこの女のトラブルは笑い事じゃない。
キャリーかと言わんばかりに頭から血を被った彼女に本気であの二人は生きてるのかと心配する頃、T字の曲がり角には血濡れのケーニヒがいた、そしてその反対には同じく血濡れのニクトで、ホラー映画ばりに二人が抱き合って叫べばまた着信音がして、ホランギは自身のスマホだと応答して直ぐに彼女に嫌な顔をして渡した

「はい?」
『大変そうだなハニー、ところで本命は俺だよな?』
「…非通知だからあなたが誰かわからないんだけど」

聞き覚えしかない声に彼女が冷や汗をかけばいつの間にか音声はスピーカーに切り替わって電話先の男は告げた「お前の恋人のゴーストだ」と
全員の視線が彼女に注がれた、電話先の男も無言だった

「あっあはは…日替わり定食ばりに彼氏候補がいて困るね」

そういって背中を向けた彼女は走り出す頃、何故か首元を掴まれて連れていかれたホランギは背後に見えたハンマーとナイフを持った覆面の男達に泣いてしまいそうだった、かつて自分を追いかけてきた借金取りの方がずっとかわいいからだ。
そうしてホランギは結果として泣き叫ぶように虚しく声を張り上げた

「だからメンヘラとか童貞はやめろっていったんだよ!!」