親友に等しい関係といえば二人の関係は相当深いと思われるだろう、しかしながらホランギは全くもってその状況をよく思えなかったのは相手に対して好意があるからだ。
コルタックに所属する同じアジア人の彼女からしてみればコミュニケーション能力も高く陽気で話しやすいホランギは素顔を知らずとも信頼のおける相手だとされた、正確にいえば彼女はアジア人となれば誰彼構わず直ぐに懐くタイプだ、それ故に初めて見た時から(まぁ好みだな)と感じていた彼にとっては仲良くなるのは容易かった

「(とはいえだ)」
「ねぇホランギこの漫画の続きは」
「別の奴に貸してる、おいベッドでスナック菓子食うなよ」
「いいじゃんどうせこのベッド、タバコの灰とかちょっと落ちてるでしょ」
「一応は掃除してるんだよ」

全く・・・とホランギが呆れてしまう程彼女は今ホランギの自室でまるで自分の部屋のように寛いでいた、ベッドに寝そべり漫画を読んでスナック菓子を貪る、その姿も薄手のルームウェアであり支給品の色気のないショートパンツだとしても男とは違う柔らかみのある筋肉のついた健康的な足はそこいらを歩いている女よりもずっと魅力的にはみえる。

「そろそろ帰ったらどうなんだよシャワー浴びなきゃならないだろ」
「今日はこっちの部屋くる予定だったから先に浴びてきたし平気」

明日休みだし朝までゲームしたい。という彼女に俺の都合を考える気は無いのかとホランギはサングラスの下で睨むのはその自由気ままさや意識されないもののせいだった
そもそも男の部屋にシャワーを浴びてから来るなど有り得ないだろう。と伝えたところでこの脳天気な銃を扱うことや戦場でのこと以外は何も分からない女にとって「だって汚いの嫌でしょ?」といわれるしまつなのだ、それはもう一年ほど過ごしてきた中で理解している。

「(とはいえこいつも恋愛とかは分からないわけじゃないし完全に意識されてないだけ・・・か)」

実際彼女が他の女性職員や女性オペレーターと恋バナをしては黄色い悲鳴をあげていることは知っていた、自身のことはそっちのけに他人の話は聞きたがるあたり自身の恋愛に興味が無いと言う可能性も捨てきれなかったが時折他の異性にそうしたからかいをされた時には意識したような態度をとるのだから完全に自分への事柄がないというわけでないのだろうとも推測している、となればやはりホランギは自分が彼女にとって意識されていないだけなのだと痛感してしまう

「ホランギ・・・ホランギってば」
「あぁ悪いなんだ?その続きはないぞ」
「そうじゃなくて、遅いし寝なくていいの?」
「寝なくてって人の部屋でベッドを使ってるやつが言うか?」

就寝時刻ではあるが関係なしに部屋に居座るのは彼女であるのだから寝るにしてもまさか家主が床に?と疑問を抱いたようにみれば彼女は壁側に身体を寄せては上に被っていたシーツを捲っては「どうぞ」といわんばかりの表情をみせる

よくホランギは仲間内で話をする時、彼女のことを「妹みたいなもんだ」とはいっていたものだ、実際歳は下であったし一人っ子だが妹がいたらこんなもんだろうと感じる時も多々ある、人懐っこく明るくて気遣いもできる彼女は大家族の長女である為に兄弟への憧れやホランギの気さくで少し意地悪な兄貴肌を感じては「確かにホランギってお兄ちゃんかもね」というのだから彼自身原因は自分に多少あることは理解している。

とはいえあまりにも意識されていないその態度には流石の彼も言いたい言葉が胸に溜まっていくもその言葉は胸の内に溜まりに溜まっていた為、もうこれは少しくらい脅しの意味、そして少しばかり意識して貰える様にという考えの元でベッドの中に上がり、そして寝そべる彼女を見下ろした

「ホランギ?」

壁とベッドとホランギに挟まれた彼女はまさに絶体絶命断崖絶壁という状態であるが何もわからない。というように目を丸くして手に持っていた漫画を下ろして彼のサングラス越しの瞳を見つめた。
長いまつ毛に大きな瞳、男と女という違いを感じさせられる骨格、ほのかに色付いた頬、それらを眺めてはホランギは彼女の頬を撫でながら呟いた

「男だって意識できないか?」

俺は今すぐお前を女としてキスできる。
きっと彼女はキョトンとした呆気食らった表情でこちらを見つめて笑うだろうと思った「なぁにホランギ、悪い冗談やめてよ」と笑うと、そう彼は信じていたのだ
しかし違った、彼女は目を閉じるのだ、まるで好きにしろと言わんばかりの表情で、そして二人には長い時間のように感じられた沈黙の末に彼女は薄らと目を開けてそしてサングラス越しのホランギの目を見たあと顔をこれでもかと赤くさせるのを隠すように持っていた漫画を自身の顔の前にやった

「じょ、冗談だよ」

そう言って笑う彼女の声は震えていた、肩が震えて鼻をすする音が聞こえた時彼女が泣いているのだと気付いてホランギは慌てて彼女の顔を見ようと手を退けようとするのに強い力で顔を隠していた

「なぁ顔を見せろよ」
「今はダメ、ちょっと見せたくない」
「なんでだよ」
「だって私、ホランギのこと男の人にしか見たことないから」

だからそんなの冗談だとしても期待して嬉しくなっちゃったから見ないで。という彼女にホランギはただ静かに見下ろした
つまり彼女はずっと自分をそうした目で見ていたのだと白状した、しかしホランギは普段から彼女を妹のようだと比喩していたし彼女もまた自分を兄のようだと思っていたじゃないかと疑問を抱いていたものが口に出ていたが彼女はそれに対して「一度もお兄ちゃんって思ったことは無いし、言ってない」といわれてしまうとホランギは必死に頭の中で記憶を手繰り寄せては確かに彼女は彼のようにはっきりと断言したような発言はしていなかった。

「良い友達なんだと、妹みたいな感じだからこんな風なんだってわかってる」

ホランギの胸を押して起き上がった彼女は漫画を適当に置いて顔を伏せるその姿は気まずく、そして悲しそうであり彼は自分が酷いからかい方をしたと感じてしまうと俯いた彼女の濡れた頬を撫でた

「妹だって思ってる奴に手を出す男ってクズか?」
「軽くて釣れるから手を出せそうって思うの?」
「おまっ、お前それは酷いセリフだろ、流石にそこまでクズじゃねぇよ」

そんな面倒なことはしないしそんな風に思う女なんて普通いないだろう。と声を荒らげていうホランギに彼女はクスクスと楽しそうに笑った
確かに彼女と比べては彼はそれなりに闇社会にも足を踏み込んだことはあった、女に酷い仕打ちをする連中も見てきたが自分がするなど有り得るものかと嫌悪感を含めていえばそりゃあそうだと納得したようである

「それで?意識してもらえてるってことでいいんだよな」

もう一度確認するように彼がいえば彼女は照れくさそうに赤くなった鼻先と目元で笑っては「だから反対でしょ」と聞かれてしまう
あぁそうだ予防線を張っていたのは自分だから本来は自分がちゃんと口にすべきなのだとホランギは難しい表情をして頭を照れ隠しにかいた、いい大人がなんでこんなことを今更口にするのだかと思いつつも彼女がそう望むなら仕方がなかった

「俺はお前のことを素敵な女だと思ってる、妹じゃできないことをしたいって思う」
「そんな下心丸出しのセリフでいいの?」
「じゃあなんだよキスしてセックスしたいとでもいえばいいのか」
「最低!女心を分かってない!バカ!」

そもそもそんなのガキじみてると声を荒げれば漫画が飛んできたことにホランギは近くのクッションを投げつけて二人はギャイギャイと騒いでいたところ隣の部屋から壁を叩かれてしまい時計を見ては二人はめちゃくちゃになったベッドの上で向かい合って座って笑った

「ねぇ私ホランギのことずっと意識してたの気付いてなかった?」
「全く気付いてない、お前こそだろ」
「ショートパンツ履いてくるのここだけだよ」
「…楽だと思ってた」

狭いシングルベッドの中で抱きしめ合った二人はまるでお泊まり会のように小さな声で話をした、まるでティーンの恋愛だと呆れるホランギの腕の中で彼女はとても嬉しそうに話をしていたが次第に互いの熱と香りに釣られて眠気に誘われる。
ゆっくりと閉じられた瞼を眺めて「おやすみ」と呟けば「おやすみホンジン」と言葉が返された、彼女の寝息が聞こえる頃ホランギは寝る前のキスくらいは許されたのでは無いのかと思いながらも今日はいいかと諦めて目を閉じた。
・・・それが後に仇となり、二人の一歩が進まないことに頭を抱えることになるとはまだ知らずに

2025.04.2