若い頃はなんだって情熱的だった、愛おしいと思った相手に対して積極的に声を掛けたし笑われてしまうが薔薇のブーケを手にデートを誘った
少しだけ背伸びをしたレストランで分からないメニュー表を睨みつけてチラリとみえた視線の先の彼女もまたメニュー表を気難しく眺めては視線を交わらせて「なんにも分からない」と笑った
子宝には残念ながら恵まれずともいい妻でいてくれた、どんな時に帰っても彼女は「おかえりなさい」といって食事や風呂を用意してくれる、やはりそこもちょっとばかり古臭い女であり、互いに口下手なところもあったが心地よいと、そうプライスは感じていた
結婚十数年というのは短くには無いがその分若い頃の二人のような情熱もとっくに消えていた。

「お疲れ様キャプテン、帰らないんですか」
「ギャズか…まぁ報告書を出せば帰るさ、お前こそ急いでるみたいだな」
「この任務が長引いたお陰で結婚記念日のケーキが台無しですからね、機嫌を取らなきゃ」

更衣室の中でシャワーを終えてシャツに袖を通すギャズにそういえば彼はまだ新婚だったと思い出す、141にスカウトされたタイミングは彼からしてみれば少しばかり最悪なものだろうがそれでも彼は受け入れてくれたことに感謝さえ覚える

「キャプテンも帰って奥さんの機嫌を?」
「今更そんなもん要らねぇさ、俺の家内からしてみれば俺はたまに帰ってくるだけの邪魔者だろうよ」
「つれない言い方だ、愛してないんですか?」

その言葉にプライスは着替え終えてベンチに座った状態でギャズをみつめて目を丸くした、彼は楽しそうに含み笑いをしており「そんなわけないだろ」といえば「なら早く帰った方がいいですよ」と言ってその場を後にした
全く新婚の男は浮かれてるなと内心ボヤきつつプライスは事務作業を基地内の自身の部屋で行い、ふと自分のポケットに入れていた財布の中にある結婚式の写真を見つめる、そこには幸せそうに笑う女を抱く自分がいた、そういえば彼女のこの笑顔を見たのはいつだったか思い出せないと思えば少しだけ罪悪感に似た何かを感じポケットに直して禁煙と書かれたポスターも無視して葉巻に火をつけた、若い頃はなんだって活力があったものだ

「ただいま」
「おかえりなさい、夕飯は?」
「食べてきた、お前こそ何か食べたのか」
「冷凍のパスタスープを食べたわ。あなたが帰ってくるならチキンでも焼いて待ってたのに」
「クリスマスのが残っていたか?」
「ふふっ誕生日よ」

仕事を完全に終えてしばらくの激務の関係から三日の休みを得た、暫くは緊急の任務も少ないためそこまで忙しなくないことを告げてアルコールとタバコの匂いが染み込んだようなジャケットを手渡せば彼女は何も言わずにハンガーに掛けた
誕生日…という単語にそういえば先月彼女は誕生日だったがなにもしてやれていなかったと思い出す、誕生日おめでとう。の一言もだ

「なぁナマエ、何か欲しいものでもあるか?誕生日プレゼントまだだろう?」
「そうねぇ、薔薇の花束なんてどうかしら」
「冗談だろ?ったく俺の嫁さんは面白いもんだよ」

ソファに腰かけてテレビをつけた、そのとき彼女の顔を見るべきだった、少しだけ寂しそうな顔をした彼女を…
二ヶ月ぶりの我が家だというのにまるで他人の家に来た気分になるのは彼女と上手く過ごせてなかったからだろうか、真っ直ぐ帰る予定も変えて適当なパブに寄って軽く飲んで帰ってきた程度にはプライスは彼女との時間の過ごし方が分からなかった。

「まだ起きてるの?」
「あぁもう少ししたら寝るから先に寝ててくれ」
「そう…それじゃあおやすみなさいあなた」

昔なら頬にキスをしていた、昔なら同じ時間にベッドに入っていたと思いつつ時計を見れば日付はとっくに変わっていた
彼女が待っていたのか、はたまた帰らぬ夫のせいで夜更かしが趣味になったのか、その真意を聞くことは出来ずにプライスはリビングのソファに横になる、彼女の横ではもう寝れていない。

「おはよう、ソファでまた寝落ちしていたわよ、身体が痛くなるからベッドに行けばいいのに」
「おはよう、思ったより疲れてたらしい」

コーヒーの香りと共に起こされて瞼を開ければ彼女がマグカップを丁度ソファのそばのテーブルに置いた、顔を見ることも無くまたキッチンに戻る彼女が「朝食は?」というもので空腹感を感じた彼は好意的な返事をした
パンにベーコンエッグとウインナーにヨーグルトとフルーツが並んだ朝食は豪華だが目の前の彼女はグラノーラにヨーグルトだけで直ぐに食べ終えては買い物に行くけどどうする?と問いかけたがそれを断る

夫婦間は冷めてはいない、在り来りな夫婦の生活だとプライスは感じていた、軍人の妻であるというのは孤独が付き物で、もう中年なんて言葉が染み込んだあとの夫婦はギャズのような若い夫婦とは違い互いの空気感で生きるだけ
それがどんな空気感であれど互いが何も言わなければそれで進むはずだとプライスは感じていたが違った。

「それじゃあ行ってきます」
「気をつけて」

短い返事をして送り出せばようやく家の空気は軽く感じる、決して彼女が嫌いな訳では無いが結婚をしても所詮は他人との生活、そこには僅かな気遣いが現れるのは今も昔もだった
昔は彼女の機嫌を気にしていた、何日も帰らない日はいい酒を買ってハグをして「愛している」と伝えていたが今は違う、寄り道を増やしてフラフラと歩き薄暗い家に帰っては彼女が起きていないか少しだけ考える

そんな時、ふとリビングテーブルの上でスマートフォンが音を立てた、自分のものでは無いそれに彼女が忘れたのかと思いちょうど冷蔵庫に向かおうとしていたプライスはそのスマートフォンの画面を見ては時が止まったようだった

"今度いつ会える"

男の名前にそのメッセージ、見慣れないアプリのアイコンに息が詰まる
妻はもう若くは無い、それはプライスもだった
それでも人というものはいつだって分からないもので、あの静かな仮面の裏はどうなっているのかと考えもせず、プライスは鈍器で頭を殴られた気分になり思わずスマートフォンに手を伸ばそうとした時だった

「ただいま、スマホ忘れてたみたい……あら?どうかした?」
「いやなんでもない、忘れてるから届けるかと思ってたところだ」
「ありがとう、ついでに一緒に行く?あなたが居ない間に新しいスーパーが出来たのよ」
「やめておく…というか少し出てくる」
「そう?夕飯は?」

要らない。

プライスの頭の中は様々な考えが行き来していた
浮気・不倫・離婚
どれもこれもいい単語ではなかったが彼女に送られてきたあのメッセージはあまりにも強烈で、それはプライスが知る妻は昔からずっと誠実な女性であるからだ、浮気のひとつもしないようなそんな女だと思っていたが違うのかと
何処までした?どんな相手?いつから?様々な質問が頭の中で聞こえたがプライスは残念ながら答えは出てこない、その原因に自分がいることを知っていたからだ

「それで私を呼んだの?」
「休みなんだ別にいいだろ、俺の奢りだ」
「当然よ、じゃなきゃ来ない」

騒がしい土曜日のパブはサッカーの観戦で盛り上がっていた、隣に腰かけたラズウェルはプライスの顔を見るなり思わず「わお」と笑った程には彼は落ち込んでいるようだった。

「今から離婚を切り出されても怖くは無いと思ったが俺からいうのは悩ましい」
「何故?別にどっちだっていいじゃない、裁判は面倒かもだけど」
「俺は彼女に何もしてこなかった、されて当然だと思ってる」
「そんなことは無いわ、愛する人がいるのなら誠実でいることも大事よ」

生憎とその部分だけは神に言われても無理だと苦笑いをする、それほどプライスは彼女への態度が自分には良くないことはわかっていた
しかしラズウェルは彼の妻を知っていた、穏やかな優しい笑みを浮かべる女性であり、そして自分の妻のように立場を理解している女だと、だからこそ浮気のような行為を信じられないのも現実である

「本当にナマエが浮気を?」
「確証じゃないがシーザーって名前の男から"今度いつ会える"ってな」
「黒に近いグレーね」

気になるならスマホを調べたらどうなの?というラズウェルの提案にプライスは目を丸くするもそれは…と難しい顔を浮かべる為、傷つきたくないのだと弱気な彼に苦笑いをした

「最後にセックスをしたのは」
「分からない、最低でも五年は…って普通だろ」
「私は今も妻と熱いわよ」

仲間のそんな話は聞きたくないと肘をついて顰め面を浮かべてしまうがラズウェルは情熱的な女である、目の前の情けないジョン・プライスに対して呆れたような目を向けると問いかける

愛してると言ったのは?
キスをしたのは?

プライスは顔を俯かせた、そんなものは結婚式の時以外鮮明に覚えてはないと呟いて

「そりゃあ浮気もされる」
「だから俺は何もいう権利はない」
「その癖に嫉妬心はバリバリ、面倒くさい男ね」
「当然だ俺はあいつの夫だ」
「その割には愛してると言わない、セックスもしない、なによジョンあなた不能なの?朝勃ちしてる?」

ラズウェルの辛辣な言葉に思わず顔を上げてみつめた、怒りとも戸惑いともなんともいえぬ表情であるがラズウェルは「心から愛してる相手にそんなことも言えないなら別れなさい」と残酷に告げた
まるで胸に十字架で刺された気分だ、正論でしかないが怖くて堪らなかった、今更そんなことをいって彼女が困れば?本当に別に男がいたら?と不安がるプライスにラズウェルはその時はその時よ。といって彼を店から追い出した。

時刻はすっかりまた遅くなっていた、買い物を行った彼女はとっくに帰宅をして今日もまた冷凍食品なのだろうかと思いつつ見えてきた家の玄関はライトがついていた
それでも彼女が起きているかは分からずに彼は両手で開けづらそうにドアを開けた、静まり返った部屋に彼女は寝ているのだろうかと思いつつリビングテーブルの上に荷物を置いては冷蔵庫からビールを取り出そうとした時、背後から音がした

「おかえりなさいあなた…凄い荷物ね、明日はパーティでもするの?」
「ただいま、まだ起きてたのか」
「シャワーを浴びてたの、ケーキ?花束もね、片付けましょうか」
「これは全部お前にだ」

髪をタオルで拭きながら話をするシャワー終わりの彼女にそういえば目を丸くしたあと「あら…あらあらまぁ」と嬉しそうに手を取り花束を抱きしめた

「何年ぶりかしら、あなたに花束を貰うのは」
「たまには悪くないだろ」
「ケーキに、ウイスキーもあるのね、丁度チキンもあるし明日は小さなパーティになるわ…それで?」

なにか話があるのね?と彼女はいうため察しのいい女だとプライスは内心関心を覚える、どう切り出すべきなのかと荷物を片付ける彼女の背中に悩んでいた
静かな部屋の中では彼女がボトルを片す音や花を取り出して花瓶に飾る所で背中しか見えていなかった、言葉を考える間に痺れを切らしたように彼女は呟いた

「夫婦生活二十年が過ぎたから離婚には丁度いいと思った?」
「…そう思うのか」
「いいえ?でも今のタイミングなら私たちの人生はまだ変えられる」

私達ではなく私だけど。と付け足す彼女は結婚後専業主婦となった、それまではしがないOLであり、知り合いの紹介でなければ出会うことのなかった相手だ
妻に来るとなれば孤独と面倒を掛けてしまうと告げていたが彼女は構わないと言っていた、今からならまだ彼女の人生は変えられるとプライスも理解していたが自分のエゴを捨てきれなかった

「何も言わないのね、大丈夫分かってる…あなたの人生に私なんて要らないって」

一人の方がずっと気が楽だと知っていると言わんばかりの彼女に手を取られた時プライスは彼女の顔を見つめた、瞳は潤んで今にも泣き出してしまいそうだった、しかし彼女は堪えていた
そこには目の前の夫を愛していると言わんばかりの表情であり、彼は言葉を失っている

「家を出ていけって言うなら帰ってくるまでには出ていくわ、暫くは友達の家に泊めてもらうし…ええっとそうね、必要なことを考え「愛しているナマエ」……て」

「愛しているんだ、俺はお前を心から」

別れたくは無い。と呟いた声はあまりにも弱々しく自分が普段声を張り上げろと若い兵士に言っていたことを思い出してはますます情けなさを感じた
彼女の手を握った、少しだけ冷たい手は昔より少しだけシワを重ねている、けれども変わらずある結婚指輪に心から安堵する

「お前が俺を愛していなくてもいい、この家に居てくれるなら俺はそれで「ねぇジョン、愛してると言って」…愛してるナマエ」

私も。と彼女はプライスの言葉を聞いては唇を重ねた
答えを聞いてはなかったが導かれるがまま彼女に手を引かれ久方振りに寝室に入った、二人で寝られるようにと買ったダブルのベッドは喧嘩をした時に「ベッドを別々にすべきだった」と言ったことを思い出す

「シャワーがまだだ」
「うるさい黙って」

肩を押されてベッドに腰掛ければ彼女はパジャマのボタンを外しつつプライスに何度もキスをした「愛している」とつぶやいてキスをされる度に彼は恥ずかしさと心地良さに埋もれていた
頬や耳に首筋を撫でられて膝の上に乗せられた足に手を添えて触れる唇を目を閉じて感じた
薄暗い部屋に思わずライトを求めて手をさ迷わせれば軽く叩かれて睨みつければ彼女は「もうそんなに見てもらう体じゃない」という為、プライスは彼女を抱き抱えベッドに押し倒し、ベッドサイドの照明をつけた
パジャマのボタンに手をかけて見下ろす彼女の肉体は確かに変わっていたがそれでもプライスは興奮していた、いつまでも彼女が綺麗だから

「そんなに見られると恥ずかしいわ」
「何故だ」
「結婚から五キロ太ってる」
「安心しろ」

俺は七キロだといって首筋にキスをする。昔とは変わった彼女の体型に今の方がずっといいと思うほどプライスは彼女を愛していた、離れていた分心の距離が開いてしまっていたと思うがそれは自分がそうしていただけなのかと考える
首筋から鎖骨に鎖骨から乳房に唇を這わせたプライスは妻の身体の隅々まで手のひら、指先、唇で感じていた

「ジョンそんなところまで」
「いいだろ、シャワーを終えたんだ」

足を持ち上げて太ももの裏や膝先に足と指まで彼のカサついた唇がなぞれば全身の毛が栗立つようだ、ゾクゾクとした感覚に身震いするが躰は熱を帯びていた
互いの吐息が部屋の中に溶け込んで次第にプライスはわざと大袈裟にリップ音を立てる

「恥ずかしいから」

まるで映画の中の恋人みたいにわざとらしい演技だと彼女は苦い表情をするがプライスは彼女の細い手を取り指を絡めて手の甲にキスをする
今はただこの気持ちのまま愛していたいと思うのだ、愛しているという言葉を受けたまま。

「あっ…」

彼女の胸に顔を埋めて赤子のように吸えばプライスの髪を彼女が撫でる、頭を優しく包まれて甘やかされることに心地よくなりもう片方の乳房を掴み人差し指で乳頭を捏ねれば彼女は腰を揺らす
いつの間にか互いに下着一枚で時折下半身を当てた、昔のように自分でスることも減ったが彼女の声や香りにはしっかりと興奮していることがわかる、ふと彼女の顔を見れば視線が混じり合いプライスは顔を上げて彼女の唇を奪う、柔らかく歯を磨き終えた彼女はミントの味がしていた、プライスの苦い葉巻の味が混じり合えば彼女の手が背中に周り肩甲骨を撫でる、合図だ

「あぁ…ッ、はぁ…いい」

少しだけ気恥しさを感じたのは彼女はプライスの下着をおろした時に挑発的に笑ったからと、彼のペニスは先端を濡らしていたからだった、まじまじと初めて見るようにみつめる彼女に「何か言いたいことが?」と問いかければ楽しそうに微笑んで「若いのね」といわれたからだ
女と男は不平等で、どうしてこんなにも分かりやすいモノを与えられたのかと自分のペニスを憎らしく感じる

「気持ちいい?」
「…聞くな」
「あら余裕が無いのね」

かわいい人だという彼女にスイッチが入ったように見えた、プライスの毛深い股座から顔を上げてはその唇は濡れている、彼女はこんなにテクニシャンだっただろうかと考える間に枕をクッションに腰掛けていたプライスに顔を寄せてキスをする彼女はペニスをその手で撫でる
唾液とカウパーで濡れたモノは卑らしい音を奏でて上下に擦られる、自分でする時とは違う感覚は彼女の手の細さ、体温、上下するリズムだった
瞼を閉じた彼女は昔抱いていた頃よりも目尻に皺が増えていたがそれは自分も同じでだからこそ愛おしいと思う、同じ時間を同じ戸籍で過ごしていたはずがその間の二人の思い出は特に何もない

「ナマエそろそろダメだ」
「いやよ」
「ッ…あぁクソ、もう若くないんだ」

そう何発も出せるものかと彼女に懇願すれば耳元で「じゃあ私の腟内でイキたい?」といわれてはまるでマゾの男のようにプライスは首を縦に振るが彼女は「だめ」と笑う
それがただのじゃれ付きだと知っていたプライスは彼女がペニスを握る手を捕まえてはそのまま自分の口元に持っていき舐めていく、塩っぱい独特の味に彼女の手の香りが微かにしているのが奇妙だ
腰を撫でる手を下ろしては臀部を撫でた、相変わらず好みの肉付きのいい部位に噛みつきたいと思っては彼女の唇を奪えば首に手を回されるのをいい事にゆっくりとまた上と下を交代する

「濡れてるな」
「言わないで」
「余裕が無いか?」

さっきの彼女のようにいえば本当に恥ずかしそうに視線を逸らされることに男心が擽られる

「あなたに触れられてるって考えるだけで無くなっちゃう」

暗に抱かれたいと言ってみせる彼女にプライスは目を丸くした、素直に言われてしまうと困ってしまうのだ
あまり情熱的な言葉は伝えられないプライスからしてみれば彼女の言葉は強烈である、自分がマッチの火なら彼女はまるでキャンプファイヤーの火のように大きく包み込んでくれる

「やっ…ぁ、ダメッ…はぁ、あ」

彼女の足を肩に抱いてその中心部に顔を埋める、よく浮気をする女はアソコで分かるとはいうがプライスは何も分からなかった、本当に彼女がマッチングアプリらしきもので男と遊んでいるのか今この愛に溢れた行為では

「ひぁ、ぁっ…ンンッ、だめっジョンっおねがいっ」

肉厚な舌で撫でて陰核を吸い上げる度に彼女の太ももが震える、左足の付け根にある小さな黒子を他の男は見たのかと考える度に憎らしささえ感じて絶頂に身を震わせるその足に歯を立てて若い男のように所有権を表した

「まって、まだ…イッたばっかり」
「ナカを解してないからな」
「あっ、あっ…はぁ…ンッ」

本当は慣らさずとも大丈夫だとは分かっていたが触れたいと願うのがセックスだ、プライスは彼女の足に手を差し込んではその震える腟内を刺激する
ヒクヒクと雄を求めるヴァギナに他の雄を求めたのかと直接聞きたい気持ちがあった

「ジョン…ジョン…好きっ」

それでも自分の名を呼び愛を語る彼女を見ては心が満たされて指を動かした、何年経っても気持ちいい場所というものは変わらないのだと感じつつ弱い場所ばかりを撫でる
顔を寄せる彼女に敢えて唇を避けて顔中にキスすれば「やだ」と甘い声を吐かれて上に乗られ唇を奪われる、昔よりもずっと甘いセックスだと思うと同時に寂しかったのかと考える
自分の上に乗った彼女が指で甘く責められて腰をひねり、もうダメだと嘆くのを見て後頭部を抱きしめてちゅこちゅこと指を動かせば彼女はいよいよ身体を震わせると同時に奥からは熱いものが溢れた

呼吸を整える彼女を寝かせてベッドサイドのチェストを開けば新品のコンドームが鎮座していた
何故新品なのかと思わず彼女を見れば意図を理解したのか視線を逸らす

「準備万端だったのか」
「帰ってくる日はいつもある」

そう言われてしまうとプライスは苦い表情をして起き上がってベッドの上で座った為彼女も同じように起き上がり彼を見つめる
何故今日に限って抱いてるのかときっと彼女は不思議でたまらないと思った、今までも不定期に抱いていたならまだしも二人はセックスレスだ、彼女はすんなりと受け入れたがそれが原因で離婚する場合もある
互いに誘い事しなかったもののそれは夫婦間の重大なトラブルであるはずだと認識していてもどうしようも無かったとプライスは考える間に名前を呼ばれる

「気分じゃないならやめましょ」
「そういうわけじゃ」
「紅茶をいれるわ、ブランデーの入ったものを、それを飲んでもう寝ましょう」

無理をしたって仕方ないし私たちはもうそういうのじゃないのかもしれない。と諦めたような彼女の言葉にプライスは思わず手首を掴んでみつめる
もう一度彼女の声が「ジョン」と呼ぶ前に彼はいう

「シーザーって誰だ」

膝の上に拳を作った彼は苦し紛れに聞いた、全裸の中年男女が二人、なんとも奇妙な姿であると思いつつもナマエは夫であるプライスの表情を初めて見るものだと思っていた
シーザー…という名前には覚えがあり、少し考えた末に彼女は「それを気にしていたの?」と声に出せばプライスは彼女のあっさりした態度に思わずからかってるわけじゃないんだぞ。と睨みつけてしまう

「シーザーは私の女友達よ」
「女…って、あの連絡をとっていたアプリはマッチングだろう」

嘘が下手くそだと思わず背を向けるプライスにまるで拗ねた少年だと彼女は思いつつ仕方がないとスマホを操作して背を向ける彼にみせつけた
そこには確かに彼の信頼には値しないマッチングアプリ内のシーザーという人物のプロフィールであり、嫌々ながら目を向ければそこにはトランスジェンダーのレズビアンと載せられていた

「見た目はどうあれレズビアンだ」

写真の中の人物は男性にみえるが女性なのだという、頑固なプライスに彼女は写真アプリの中から件の人物やもう一人の女性の三人で写った写真を見せた

「恋人がいる相手だし、マッチングアプリっていってもお茶友達目当てよ、そんなに不安?私に信頼がない?」
「ナマエに信頼がないわけじゃない、俺が不安なだけだ、そのうち…」
「そのうち?」
「…捨てられるのかと」

熟年離婚は今どき普通で、この行為が始まる前の彼女との会話は離婚間際だったのだから余計に不安になるのは当然だった、しかし長年時間を共にしたはずの彼の気弱な態度に妻である彼女は驚きを感じつつも頬を緩めた

「私ずっとあなたが好きよ、そりゃあここ数年は気難しいけどそれでもあなたなりに大切にしてくれてるのは分かってたし」
「どんなところに感じる、俺は花のひとつもやってなかった」
「私の写真を持ち歩いてるところ」

自信満々にそういわれて肩に顎を置かれ抱き締められてはプライスは勝てないと顔を手で覆って、その隙間から彼女を見つめれば優しい手が伸びて唇を重ねた

「愛してると言って」

それだけが一番の幸せだから。といわれて答えない男はいない
愛していると呟いて彼女を押し倒そうとすれば首を横に振られそっと押し倒される、彼女はこんなに積極的な女性だっただろうかとプライスはみつめれば彼女は色々友達に相談に乗ってもらっていたという、互いに気持ちが落ち着いていたが触れ合えば躰は熱を帯びる

「下手でも文句はなしね」
「大丈夫だ」

今だけで充分に満たされているとプライスは心の中で呟いて彼の鍛えられた腹の上に手を置いた彼女がゆっくりと腰を沈める感覚に一体何年ぶりの事だろうかと感じた、狭く熱く苦しく心地よいその快楽に思わず「あぁ」と漏れだした声はどちらのものか
腰をさらに落として奥まで繋がれば彼女の手がプライスの手を繋ぎ指を絡めて見下ろした、薄暗い部屋の中でみえる彼女は妖艶で美しく若い頃とは違う魅力を感じた

「ハァ…アァッ…ッあ、ジョン」
「ナマエ、いいな…綺麗だ、凄く気持ちいい」
「よかった…あっ、ん」

彼女のペースに任せている為か少しばかり物足りないと思いつつ揺れる乳房に乱れた髪、艶めかしく細められた瞳を眺めては空いた手を腰に添える、友人に教えられたというのは件の二人のレズビアンなのかと聞きたくなるがそれさえ今じゃ少しだけ嫉妬の原因となる

「あっ!やっ、まっ…ぁ!ジョンッ」
「手伝ってやろうと思ってな」
「だめっぇ、今日っは…わたしが」
「今度また頼むから今晩は俺に抱かせてくれ」

愛したいんだよ。と懇願して下から突き上げれば彼女の眉がへにゃりと下がりゆっくりと胸に持たれるように寝そべってプライスを見つめてその顎の心地よい髭にキスをする

「…ずるい人」

そう…ずっと彼はずるいのだとナマエは内心文句を吐いた、口下手な部類で少し古めかしい考えもある、けれど真っ直ぐで正義感が強くプロポーズには百本のバラを用意するようなロマンチストでもあった
しかし真っ直ぐ過ぎて一本の道しか見えない男であるゆえに冷めた日々を過ごしてしまった

「あッ!ああっ、ダメッやっあ!」
「あぁいいな、やっぱり俺の手で抱く方がずっと最高だ」
「ジョンッ…ンッ、はァっあ!」

何度も何度も何時間もゆっくりと愛を感じた、上に乗ったり下に下ろされたり、時に壁に手をついて後ろから若いカップルのように激しくした

「ちょ!ちょっとジョンこれっ、あぁッん!ふかっ…こわっい」
「普段お前より重いものを持ち歩いてるから大丈夫だ、それより締まったな、好きか?」
「〜〜ッノーコメント!」

抱き上げられて立ったまま繋がりあった時、二人は互いに案外若いセックスも出来るものだと笑ってしまった、繋がり合いキスをした互いに汗をかいても絶頂まで遠いのはまだまだ愛し合いたいと願うからで名残惜しかった
音を立ててベッドに倒れ込んで寝かし付けられたナマエは足を開かされて太ももにキスをされてはいつも彼はそれをするのが好きだと思い、そしてそれが愛されていると感じられた、プライスは指輪をつけない、仕事中の邪魔になるからだと言うがその代わりドッグタグと一緒にしていることをナマエは知っていた

「ナマエ?」

深く彼のものを受けいれたナマエは静かにプライスを見つめて考えていれば不安がった彼が名前を呼んだ、どうしたのかと問われる声色の優しさに涙さえ溢れてしまいそうになり強く彼を抱きしめた

「愛してるナマエ」
「私もよジョン」

セックスは重要ではなかった、実際二人のあの日の夜は互いにイけなかった、緊張からかはたまた雰囲気かそれとも心と体はその気でもお互いの弾はもう切れていたからか、そこは分からないがそれでも二人に不満はなかった

「ご機嫌ですねキャプテン」
「明日は休暇だからな、家に帰れる、どうしたギャズ随分不貞腐れた顔してる」
「妻と喧嘩したんですよ」
「どんなことで」

更衣室で着替えを終えたプライスはギャズの不満そうな顔に問いかければ彼はスマホを見せた、そこには本当に些細なことで揉めてる二人の会話文があったことにプライスは頬を緩めるものだからギャズは「俺たち本気で喧嘩してる」と呟いた

「喧嘩する程なんとやらだ、まぁ男が折れるほうがいいな」
「それはあなたの考えですか?」
「いいや、妻と友人達の意見だ」

そういえばギャズはとても参考になりますね。と呆れて笑う
そんな彼を置いて早々に荷物をまとめたプライスが葉巻も吸わずに出ていこうとするものだから結婚記念日か何かか?と思わず聞けば「なんでもないから早く帰るんだ」と返事をして出ていった。

「ただいま」
「おかえりあなた…あらまた花?」
「今どき花を送る男は古臭いか?」
「古臭いタイプが好きだからうれしい」

ドアを開けてキッチンにいる彼女に一輪の花を渡せば彼女は嬉しそうに花瓶に花を挿した、その細い腰を抱きしめて今週末は休みだからどこかに行こうと言えば彼女は「近くを散歩したい」といった、休みなのだから車を出すというのにとプライスが思うが彼女は定年まではゆっくり出来ないと思っていたから出来るなら今二人でそうしたい。という
その言葉に目を丸くした後に彼はくしゃくしゃの顔で笑って弁当を持ってピクニックにしようと言えば彼女は嬉しそうに笑った、指を絡めてフレンチキスをして昔のようにお互いのおでこをぶつけては声を出して笑った、まるで昔のようだと感じつつもその幸せはあの頃よりも感じられたから。