蒙古の捕虜の女達が下女のように扱われる事は当然の事であり、仁は民を救う中一部の女子がさらに最低な結果となる蒙古による乱暴を受けた姿を度々目撃した。
あれらは獣であるのだと彼が胸に怒りを抱くと同時に、自身の妻は・・・と考えてしまうのは無理ないことであり、唯一生き残った武士であり、名を馳せてしまっている自身の妻となれば生きていることさえ難しいだろうと予見していた。

生きていれば御の字であると仁は言い聞かせ對馬を取り戻すべく日々暗躍する中、自身の家に向かう道中、妻であるナマエが身代わりとなり連れられたのだと知った仁の心中は穏やかでは当然なかった。
気高い彼女が仁の誉を大切にするように、彼女は真っ当に武士の娘として武士の妻として戦ったのだ、だからこそ、その仕打ちは当然有り得たことだと思いながらも仁は受け入れ難く唇を噛み締めた。

床に伏していた女は猿轡を嵌められ両手首の色が変わる程に縛られてはその身の着を乱されていた、仁を見つめた女は今にも死んでしまいたいと言いたげな表情であり、仁はそれが自分の妻であるのだと理解し彼女の拘束を解いてやっては優しく抱擁した。

「待たせてすまなかった」
「・・・じんさま」

こんなにもか細い声を出す女子だったのだろうかと感じるほど弱々しい声であり、彼女は仁の背中に腕を回しては何度も彼の名を呼んだ、噂で聞いていた生き残りの唯一の男、彼女の世界であり最愛の夫、その温もりと香りを感じては彼女は幼子のように彼の腕の中で涙した。
仁にとって初めて見た姿であり、彼女は何処までも気丈な女であったのだと自身の誇りに感じられた。

蒙古に抗う為にと直ぐに旅立とうとする仁に今日はゆっくりと過ごそうと告げた、丁度この近辺には蒙古の小さな野営が数カ所存在することもありそれらを討たねばこの近辺の平和は守れぬこともあった。
久方振りの妻との夕餉を共にし、一時的に貸してもらった宿で二人、布団を並べ眠る中、仁はどうしようもなく彼女に触れたかった、安心感が欲しかったのだ。

冥人と噂が流れ続ける仁の心は疲労困憊であった、人々を守る為には彼は全てを捨てねばならぬのだと理解していても彼の中の武士魂は変わることは無い、寂しさや愛おしさに恋しさが相まって隣に眠る彼女に手を伸ばした時、薄く彼女は目を開いた。

「すまん」

触れるべきではないと仁は理解して、自分本位過ぎたと思わず自分の中で自分を叱咤した、彼女は静かに仁をみつめて告げる。

「わたくしは、もう貴方様以外を知っている穢らわしい身でございますよ」

それは彼女にとっての誇りであったのだ、夫以外の男に無理矢理されること、舌を噛んで死にたくても許されず何日も縛り付けられ弄ばれ傷付いた、その傷跡が癒えることなど死してなお有り得はしない。
仁はその言葉に「穢らわしくはない、お前は立派だった」と告げる、実際捕虜となった民や他の女に手をつけられなかったのは彼女一人が犠牲となっていたからであり、詳細を聞かずとも彼女が捕まった数日は永遠とも感じられる地獄を味わったのだと理解する。

「お前は永遠に美しい」

それは心からの言葉であった、仁以外の男に例え何をされようと変わらぬ魂が穢れるわけが無いのだと、彼は瞳を見つめた、外の月明かりのみの部屋の中は暗かったが互いの眼だけはハッキリと見て取れた。

「でしたら、昼に抱いてくださいませ、夜は怖くて堪らないのです」

あいわかった。と仁が告げて天井に向き直り瞼を閉じようとした時、隣の布団から手が伸びて彼の手を取った、まるで迷子の幼子のように繋がれた手に彼は応えて握った、震えた指先に彼はどうしても自分の気持ちを伝えたかった。

しかしながら仁は日夜忙しなく駆け回った、少数とはいえ蒙古達の野営は確かに近辺には多く存在し、それらを壊滅させ時には村人から聞いた話から人を助け情報を得る、しかしながら武芸に優れた妻が行動を共にしていることから一人で行動する以上にずっと楽なものであり、彼は対馬の為に二人で翔けていた。

「ここは随分と穏やかに感じるな」
「左様ですね」

そうした日々の中、仁はふと見掛けた黄金色の鶯に導かれ見つけた神社に参拝をしたいと告げた二人は絶壁に近い高い岩山を登り、そこから見える景色に小さな溜め息をこぼした。
あれから数日が経過した中、二人は特段変わった様子のない振りをしていた、社のすぐ傍にある切り株に腰掛ける仁は敷布を地面に広げて座る妻の顔から薄くなった痣をみつめ優しく撫でた、彼女はそれを拒絶すること無く彼の手を受け入れて頬を擦り寄せる。

『昼に抱いてくださいませ』

その言葉をふと思い出した仁はふと手を止めて彼女を見つめた、静かな漆黒のような瞳が見つめ返したことに彼は陽は二人の上にあり、大きな木の影からは微かな陽の光が差し込む、心地良い昼だった。
仁は信心深くはなかった、坊主の説法など幼い頃からつまらないと思うタチであった、しかしながら時と場所を選ぶことを理解していた彼は女にこれ以上はと手を引こうとした時、彼女の冷たく細い指先が頬に触れた手に重ねられる。

「お天道様がみているからこそ、その気であれば私を抱いてくださいませんか」

切なく呟いた彼女に仁は何も言わずに髪に手を回して後頭部を引き寄せて口吸いをした、久方振りの感触に身を寄せると彼女は仁に身を委ねた、彼女の胸当てを外し、弓を引く為の着物の帯や紐を緩めて現れた白い肌に久方振りに眺めるものだと仁は唾を飲んだ。

「お辞めになりたい時はいつでも構いません」
「生殺しにしたいと?」
「仁さま、お分かりでしょうが私は穢れの身であります」

蒙古の子を宿している可能性もあるのですよ。と告げる彼女に仁はどうしようも無い気持ちを感じた、望まぬことを行われた彼女の心の傷を癒す為の憐れむ為の行為であれば今すぐやめるべきだと互いに知っていたが仁はそれ以上にこの女を深く愛していた。
似た境遇にいた彼女と結婚し、互いに不器用ながらも日々を過ごし理解し合った、その中で仁はこの女を心から大切にしたいと願い生きてきた最中で行われた地獄を、塗り替えるとまでは言わないものの、少しでも自分を思い出して欲しいと愛してやりたいと願った。

「お前が自分を穢れと思うことは無理もない、しかし俺はどんな姿形になろうともお前だけを知り求めたいのだ」
「もうこれ以上の言葉を云うことはありません、ですが約束ですよ」

どうか貴方を教えてください。
そう願う彼女に仁は応えた、衣類を全て脱がす事は流石に出来ず二人は敷布の上で何度も口吸いをして、互いを確認した、仁がゆっくりと彼女を押し倒してイチョウの葉を背景に彼女を見下ろした時、相も変わらず彼女は美しく気高き華のようであると感じつつ、その白い肌に口唇に添えた、少しだけ吸っては赤い花をわざと散らす仁に気恥しい彼女は身を捩り逃げようとするも彼はそれを許さなかった。

「俺の物だと、お前にちゃんと教えてやらねばならんだろう」
「仁さま、それは」
「クサかったか?」
「多少」

案外余裕があるものだと思わず苦笑し僅かばかりに気恥しさを感じた仁は彼女の首筋に口唇を添えて強く吸い上げる、薄い赤を彩ったその場所を舌で撫でて、歯で優しく噛み付いて歯型を残し眺めれば心地良いほどの支配欲が湧き上がる。

「あっ」

漏れ出た彼女のか細い声に仁はもう何度も吸い付いて噛み付いて、自分が今彼女を抱いているのだと伝えるように触れる。
浮き出た鎖骨を撫で、双丘の谷間に彼の舌が這い乳房を優しく触れて吸いつかれてしまえば、それだけで幾度かされてきた行為だと感じ安心感を抱く彼女は仁の頭を優しく抱きしめた、恋しい程の彼の髪を手のひらに感じていれば吸われ噛まれ嬲られる、くすぐったく赤子のような姿に微笑ましささえ感じて彼の髪に鼻を埋める。

「あぁ・・・仁さま・・・」

髪は人の香りの中でも特段強く感じる部位だろう、煙と血が混じったはずの彼のこれまでの道の中でも変わらぬ安心感のある柔らかな香り、汗が混じった髪の香りに堪らず顔を深く埋めては彼女は何度も彼の名を呼ぶと仁は顔を上げてはなんとも言えぬ表情でみつめた。

「如何されましたか?」
「そんなにも名を呼ばれると気恥しいと感じてな」
「呼びたかったのです、貴方様のことを」

抱擁し口吸いをして言の葉も指の先も全て授けたかったと彼女は呟く、舌を噛み切ることも出来た、しかし亡き父の遺言はどんな事があれど生きろという地獄よりも険しい道に進めという意味だった。
どれだけ獣らに蹂躙されようと彼女は仁だけを想った、死にたいと願う度に夫である目の前の男を思い出し、彼を遺したくはないと想った。
弱い男では無いが、彼をそれ以上一人になど出来るものかと、彼女は婚姻の儀の際に彼の横顔を盗み見て誓った。

「貴方のためなら私はどんな目に逢おうと、どんな姿になろうとも良いのです」

其れを耳にして仁は胸の底から彼女が強く気高く美しいと感じた。
しかしながら彼女がそうして強く想えるのは仁という漢が彼女を決して棄てるような存在でないからだ、彼の心は美しく広くそして他者への痛みと苦しみを理解している。
その優しさがどれだけ彼女を支え、強くしてきたかなど気付きはしないのだろうが、それでもよかった。
乳房から顔を上げる仁はじゃれつくように、彼女に甘えるように頬を擦り寄せては彼女の素肌を撫でる、まるで川の流れを指で確認するように滑る彼の指を感じつつ、薄く脚を開いた、彼女の艶黒の下生えを撫でて狭間をなぞるとそこは熱く微かな潤いを帯びていたが仁の肩を彼女が掴んだ。

「どうした」
「触れずと良いですから」
「そうはいかん」
「ですが、お手を煩わせますし」

行為を中断させる彼女に今更のことだろうと仁は眉間に皺を寄せる、この行為がただの性を発散する為のものであったり、子を成す為であるのならば彼女の躰を気にせずに熱を沈めていただろう。
だが彼はどんな時であれど愛したいと願い、彼女をどんな男よりもずっと優しく丁寧に抱いていた、それが今更否定されるなどとはと自分の娯楽を奪われたような気分にさえなってしまうのだと、彼は思考する。

「今更のことであろう」
「申し上げ辛いのですが、羞恥と申し訳なさが重なって」
「何をおもうかと思えばそんなことか」

大丈夫だから脚を広げてくれ。と言いたげに彼女の白い内腿に彼の無骨な手が置かれれば恐る恐る広げられ、仁は艶黒の下生えを撫でて薄い蜜を拾って彼女の膣口に中指を沈めた時。

「っ…」

彼女の身が縮まりぐっと堪えたような表情を浮かべた、仁はそれを眺めても指をさらに奥にと思えばふと違和感を感じ慌てて指を引き抜く。
そして彼女を見下ろして、酷く驚いた顔をした。

「ナマエ痛むのであろう」
「…平気です」
「嘘をいうな、切れているな、よくそんな状態で情事に乗ろうなど」

指を入れて感じた違和感は彼女のソコが酷く傷ついている状態だということだった、そうなれば当然彼女が身を構えることは仕方ないことであり、仁は即座に彼女の乱した衣類を掛けてやり、行為を中断した。
どれだけ求められたとしても、負傷した女を抱くほどの獣ではない、あくまで慰めでもなく愛し合いたいのだから。
行為を終えて身を整えようとする仁に彼女は慌てて彼の腕を掴んでは彼の躰に顔を埋めた。

「今生の願いでございますが今が良いのです、この痛みを貴方の痛みに変えて欲しいのです」

仁は初めて彼女を抱いた時、彼女の痛みを知らなかった、しかしながら自身の躰に他者の異物を埋め込むという行為、内蔵を内側から抉られ掻き回されるような真似をされることを心地よいのかどうか彼には分からなかった、男である彼からしてみれば行為が極上のものであることを理解していても、女は違うとよく言うものだ。
痛みなど誰も欲しくはない、特に彼女の痛みは心にもあるだろう、触れられることさえきっと・・・と仁が思う中でその手が仁の甲冑を外した袴に堕ちる。
きっと他の女子ならば彼はその身を振り払った、売女と罵る事もあったかもしれない、けれど目の前の女はなんと憐れで淋しく、そしてどこまで美しい事か。

「ならばしかと受け止めよ、俺がすること総てから逃げるな」

きっと彼女のことであれば嫌だと口にするだろう、嫌よ嫌よも好きのうち。ではなく心から羞恥に負けた心でそう告げるはずだが仁はそれは赦さないというのだ。
寄り掛かる彼女がこくりと首を縦に振れば仁は彼女をまたその陽の昇る、眩い正午に暴いていく、剥き出しの足に唇を乗せて滑らせる、内腿を掴めば少しだけ冷たく心地よい温度と肌触り、そして中心部を覗く仁はそこにある擦り傷や切り傷の数に唇を噛み締めて優しく食んだ。
茂みが擽ったく、普段彼女と口吸いをする時、僅かに身動ぎする姿を思い出してしまう感覚で、仁は薄く濡れた蜜壷に、ゆるりと口唇を添えた、芳醇な女の香りが鼻腔に触れる。

「・・・っ、!」

声を押し殺した、愛すべき人に見られる事がここまで苦しいものだと思わなんだ彼女にとって、その優しさがどうしようもなく心地よくも辛く愛おしい気持ちに溢れてしまう。
仁が脚を掴む手に力を込めてより一層拡げる、お天道様の下で晒された醜い躰がまるでその陽に焼かれるような気さえしてしまう、自然と溢れる分泌液と唾液が混じり合い、じゅるりと音を立てる。

「はあ・・・ぁあ」

花芽を吸われると躰の芯まで震えた、電流のような甘い感覚が駆け巡り思わず腰が引けると仁は逃さぬ様に彼女の脚を肩に乗せて食らいつくように嬲った。
思わず涙が滲んで痛みとは違うものを感じれば彼はそれを受け取ったように自身の右手の人差し指と中指に唾液を垂らしては、彼女の秘部を撫でる。
上から下へ下から上へ、数度撫でて弄べば花弁を開き指を沈める、痛みもなさそうに受け入れる彼女は思わず顔を手の甲で隠してしまうも仁は止めずにその場所を撫でるように指を躍らせる。

「ッん、ぅ…あ」

微かな声が聞こえる度に彼の気は善くなる、女を悦ばせることを喜ばぬ男がいるものかとさえ思えた、人が来ることの無い場所で聴こえるのは風の音と揺れる草木の音だけであり、その中に交じる女の声は神秘的だった。
震える花襞の中を暴くように揺らして、より一層彼女が唱う場所を彼のささくれだった指先が刺激すると腕が伸びて仁に触れる。

「ダメ、これ以上はっ…おやめ、ください」

ほろほろと呟く彼女に仁はもう少しだけと気を良くするが「仁やめて」と呟かれてしまい、彼はまるで手綱を引かれたように指を抜いては動きを止めて見下ろした、乱れた彼女が仁を見つめており、その面は紅く染まっていた。

「すまなかった、痛むのか」
「違います」
「嘘はいい、夢中になってしまっていたのだ、お前のことに気をやれなんだ」
「違うのです・・・」

気持ちが善くて気をやりそうだったから。とか細く告げた彼女に仁は思わず頬が緩みそうになる、男冥利に尽きるとはまさにこの事であるのだから仕方あるまい。
仁の肩から脚を下ろした彼女は躰を起こして仁の彷徨う濡れた手を取り愛舌した、生ぬるい濡れた舌先が仁の指を這い回る、まるで童の時に触れた蛞蝓に似た感覚だというのに、それは妙に艶っぽく伏せられた瞳が挑発的に彼を見つめると、まるで羽衣を取られた天女のような成りをした妻である女が膝の上に乗り上げた。
はしたないと、浅ましいと、普段ならば互いに昂りつつも理性がそう告げていたが今の二人にはもう出来なかった、彼女は仁の袴を外して現れた褌に手を添えていきり立つ男根をさらけ出した。

「ご立派でございますね」
「揶揄うな、当たり前のことだ」
「嬉しゅうございます」

くすくすと笑う彼女に仁はようやく見えた笑顔だが、揶揄われることは気恥ずかしくてたまらなかった、互いに陽のあたる木洩れ日の中互いに素肌をさらけ出し、産まれた姿のまま見つめあう。
仁は彼女を寝かせようとしたが彼女は仁の肩に首に腕を回して、このまま見つめ合いたいと願うため、仁は優しく抱き締めて自分の上に彼女を招いては跨る彼女を見上げる。

澄んだ互いの黒鴉の様な瞳が混じり合う。
彼の手が妻を撫でると、彼は静かに顔を寄せた。

「ナマエ」

首筋に口唇を置いて。

「ナマエ」

頬に口唇を添えて。

「ナマエ」

優しくその手で撫でて。
額を慰めるよう口唇を触れさせた。

互いに静かに見つめあって口吸いをして、互いの唇を夢中で貪って食んで薄い隙間から舌を差し込んで絡め合い二つが一つであることが正しいものであるように確かめ合う。
互いの口端から唾液が伝う程重ね合わせて、刻を重ねて、眼を見つめ合うと共にナマエは仁のものを自ら迎えるように腰を沈めようとすることに仁もその柔腰を抱き寄せて、二人はゆっりと、まるで川の水が流れるように自然と躰を互いに交じり合わせる。

「くっ…う…ッ」
「ナマエ」

優しく宥めるような仁の声が頭の中に響いた彼女は、痛みを伴いながらもその痛みが幸福であると感じた、触れて抱き寄せれば仁の匂いを強く感じる、耳元で聴こえる声は何度も自分を呼ぶ、知らない獣では無い、愛してくれる唯一の夫だ。

頬を張られることも無い、知らない言葉で嘲笑されることも無い、乱暴に肉袋のように扱われることも無い。

仁の熱が全て沈み込めば互いに静かに顔を見合わせる、膝の上にいることで彼を見下ろす形となる彼女は泪が溢れた、ジクジクと傷跡が広がるような痛みはあれどそれは全て熱でかき消す様で、何も言わぬ仁の瞳が心地よい。
彼は泪する彼女を見つめて、優しく親指で拭っては静かに告げる。

「お前を心から慕っている、愛しているぞナマエ」

その言葉に彼女は仁の首に腕を回して強く離れぬように抱き締めては「わたくしこそ」と返事をした。
その言葉を聞いて仁は躰の様子を伺い問題がないと聞けば緩急の腰を揺らした、普段よりもずっとゆっくりとした行為は陽の光と風と花の香りを感じるとき、彼女は自分が清められるように感じられた、醜いと二度と愛せぬ躰だと思った世界で愛される喜びを知る躰は次第に熱を帯びる。

「あっ、あっ、仁っ…さま」
「善いようだな、もう少し激しく突くぞ」
「はぁっあぁっは、い」

溶けてしまいそうだった、仁の純なる愛情と行動と昂ったその熱にいっその事消えてしまいそうだと、幾度となく地獄の中で彼を思い浮かべた、良き事も悪い事も、全てに仁が映されていた。
愛おしくて堪らないのだと彼女は仁の耳元で何度も彼を呼んで愛を告げる、その度に仁は自分のモノを締め付けるソコに気をやられてしまいそうだと感じる。
彼女は静かで少し不器用な女であるが、けれど真っ直ぐとして仁だけを想っていたことを彼は想像以上に理解していた。

「仁っ、仁さま」
「ナマエ、俺のナマエ」
「ナカに、出してください、子種を…腹いっぱいに」

子が成さなくても、貴方に埋まりたいと願う妻に昂る仁は彼女の腰を抱き締めてより一層打ち付ける、互いの吐息が耳に張り付き陽の光が躰の芯まで届いては汗が滲んだ、彼女の指が背中を強く握り、恋しいと求めるように仁の茎を花が掴んで離さなかった。
欲望が積み重なり溢れ出ようとする直前、仁は彼女の頬を優しく指の背で撫でてその宵闇の様な瞳を覗く。

「愛しているナマエ」

胸の内が救われるようである。
彼女は何も言い返さず、静かに微笑んで彼の肩口に顔を埋めて腕を回して強く抱き締めた、鼻腔をくすぐる香りは恋しくて堪らない人で、根に埋め込まれた茎は他の何より躰を喜ばせる、汗ばんだしっとりとした肉体は女と違う筋肉が程よく付けられて心地よい抱き心地で、触れる髪は柔らかくも野宿の日々に痛めているようで、覗き見える彼の傷跡や黒子にシミに毛穴のひとつ、彼を創りたもうた細部全てが愛おしくて堪らなかった。

滑りの良い場所を何度も繰り返し嬲る頃。
ナマエは「噛んでくださいませ」と呟いた、躊躇いを感じながらも仁は花に水をやるように欲望を蒔くと同時に彼女の細い首元に獣のように噛み付いた、甘く噛めば「もっと」といわれ、歯を立てれば「痕を」と強請られ肉を噛んだ、ぷつりと皮膚が裂けて血が出てしまうのでは無いのかと感じながらも仁はどうしようもなく心地よい彼女の喉に歯を立てて、自分の欲望を放出しきれば喉元から歯を離して、犬が舐めるように舌先で撫でる。
互いに呼吸が乱れていたが彼女は仁を見下ろして首筋に甘く吸い付いた。

「私は貴方様のもので御座います故」
「俺もまたお前のものだろう」
「はい、さようでございます」

薄く微笑む汗ばんだ彼女を見つめて仁も緩く微笑んだ、ここを下りて湯汲でも行こうと告げて。

いつぶりに二人で湯汲しているのかと、神社から見えた温泉に浸かる仁は想った、躊躇うこと無く裸体を晒す彼女に今日二度目でありながらも、その美しい肌を眺めてしまう。

「そのように見られては恥ずかしゅうございますよ」
「綺麗なものを眺めるのは当たり前のことであろう」
「今日の仁さまはとても言葉が多いようですね」
「気に触るか?」

一人分の距離を開けて湯船に浸かった彼女に恐る恐ると告げれば彼女は気付いたように仁に寄り添い、彼の肩に頭を置いた、互いの心臓の音が聞こえてきそうな程であるが自然の音にかき消されいると信じていたかった。

「惚れた殿方のお言葉に気分を良くせぬ訳はないでしょう」
「お前も今日は言葉が多い」
「幸福を感じておりますゆえ」

腕を絡ませられ柔い女の躰が押し付けられれば仁は心頭滅却だと自身に言い聞かせた、先程の神社でのことがある中、今はもう終わりだと、まだ旅は続いており忙しないのだぞと言い聞かせる頃、ふと彼女の指が仁の首元を撫でる。

「な、なんだ」
「私が残した痕だと、そして私にも貴方様が残した痕があるのだと」
「そうだな」
「・・・もう一度だけ残して下さりませんか?」

ここなら汗ばんでもすぐに身を清められますでしょう。と告げる彼女に仁は唇を噛み締めた、ダメだと告げねばならないのだと言い聞かせるものの、彼女は意地悪に微笑む。

「昼に抱いてくださいませ。と告げたでしょう」

もう夕刻に差し掛かりますから。と告げる彼女に仁は彼女の手を取って、眉間に皺を寄せて告げる。

「いつかまた夜に抱いてやるからな」

そう告げる彼に妻は笑った、とても嬉しそうに心地良さそうに、もう獣の夢をみることは無いと感じながら彼の背中に腕を伸ばす。
陽の光は燦燦と二人に降り注ぎ、川辺の水が音を立て、草花が揺れ、風が二人の躰を撫でる。
もう二度と苦しめることはないようにと互いの痕を指先で撫でながら互いを思い繋がり合う、愛おしいと告げながら互いの言葉を噛み締めて。