恋人のジモことウォン・ズーチャンは絵に書いたような真面目な人間だ。
現役軍人時代からの知り合いであり、恋人となった今もその真面目さは変わらない。正義感からPMCへ行くようなタイプなのだから相当なものだろう。
その真面目さは互いに退役した後も続くものであり、ベッドの中でも模範的な行動をする人だと、恋人である彼女は個人的に感じていた。
ジモは淡白な方だった。
恋人であるナマエもそれなりに淡白である。
しかしジモと比べれば多少欲が強い。
そして二人は健全な成人済みの大人であり、生理現象や、それこそ一時の感情というものは溢れてしまう。
ジモは仕事の兼ね合いで数ヶ月単位で帰ってこないことは珍しくはない。短期任務ももちろん多いが、PMCとしての施設警備の任務であったり、それこそ地球の裏側まで表向きいえないようなことをしていたり。
心配ではないかと思う時もあるが彼女も大人で元軍人。
士官候補生であり、特殊作戦群に所属していたジモのこともよく知っている。どころか彼の上官でもあったため、その性質ごとよく理解していた。
話は逸れてしまったが二人は離れた時間を過ごすことが多いのは現実であり、その中で互いに自然と欲が膨らむことも勿論ある。
二人ともそれは自然なことであると理解しており、そこから他人に欲をぶつけるような最低な真似はしない。つまりは自分で自分を慰めるということなのだ。
ベッドの中のナマエは自分の欲を一人で慰めていた。明日には彼が帰ってくるとわかっていたが昂った欲が抑えられなかったのだ。
「……ッ、はぁ」
重たい吐息が漏れる。
倦怠感が身体を支配してズッシリと身も心も二倍くらいに重たく感じられる。
少しすると、狭いトイレの中で自分を慰めた彼女はトイレットペーパーで排泄したときと異なる汚れを拭いて、汚れていない手で流すと洗面所で入念に手を洗った。
──明日には帰ってくる、三ヶ月くらいか。
そう考えると長いと思うが感覚が少し麻痺していて分からなくなる。半民間企業に務めるナマエとPMCのオペレーターであるジモはそこでも密かな繋がりがある。
半民間企業というのはつまりは政府との繋がりが強いというもので、退役軍人ばかりが多いその企業は軍とは違う兵器の開発や研究などを行っており、国内PMCとして名を馳せるジモの所属するPMCとは企業間で仲良くしていた。
そうした繋がりがあり、恋人である。
だとしても二人は共にいることは昔から少ない。
物寂しいと思う気持ちはあまりない。それが二人の当たり前であるからだ。しかしそれとは反対に欲望というものは存在するのだ。
──抱かれたい。
──帰ってきたらまずはそうしてほしい。
口にはあまりできなくとも素直にそう思いながら時刻はもう就寝時間となっており、オーガズムを感じて丁度よい疲労感を味わった彼女はベッドに横になり瞼を閉じた、愛する人に触れられたい、触れたいと思いながら。
目覚めたのはそれから数時間後だった。
小さな物音が聞こえた、それは玄関が開く音だった。
彼女が住んでいた家はそこまで甘いセキュリティではない、マンションの入口からオートロック式で暗証番号かICカードが必要で、さらにエレベーターも同様、またはチャイムを鳴らして先方に全ての許可を貰うかのどちらかである。
つまり、そこまでをクリアする相手というのは限られており、彼女は寝惚けつつも起きる気もなくいれば、足音とものの擦れる音が聞こえる。
「ただいまナマエさん」
小さい声はジモの声で、予定より早い帰宅らしく、これもよくある事だった。
ナマエはまだ寝ぼけたままでいると、ベッドの傍にやってきたジモは彼女の顔を覗き込んでは「寝てる」と嬉しそうに声を出すため、ナマエは思わず振り向いた。いつも通り軍の頃から染み付いた帽子をかぶる癖のせいで、こんな夜更けでもシンプルな無地のキャップを被っていた彼は寝室と隣接するリビングからの小さな光を受けているのが見える
「おかえりなさいズーチャン」
「ただいま、起こしちゃった?」
「音が聞こえたから、寒いでしょ、入って」
「まだ着替えてないんだ」
帰ってきたばかりだ、というジモに取り敢えずいいからと布団を捲ると、少し困った様子である。気持ちはわかる。帰宅したままの服でソファやベッドに上がるのは互いに引けるタイプである。
それでもナマエはジモの温もりを感じたいからと、まるでペットを招くように布団を広げて待ち続けると数秒考えたあとジモはベッドに入りナマエを抱き締めた。広い胸板と外の気温で冷えた彼の服を感じる。トクトクと小さな心音がして心地良さに目を細める。
「困ったな、寝そうだ」
「私もよ、本当はセックスしたかったのに」
「…俺も」
ただの欲を吐き捨てるためというわけではない。
愛し合いたいだけという意味であると理解し合っている二人は恥じらいなどはなく目を閉じた。ナマエが瞼を閉じるとジモの「おやすみ」という声が聞こえた。
その翌日──まさかそんな羽目になるとはジモは思いもよらなかっただろう。
「ナマエさ…んっ♡」
「フフッ、いい声ね…気持ちいい?」
「は、い……でも、これ♡♡」
ジモは今現在の状況について理解出来ずにいた。
正しければ時刻はまだ朝の六時、彼はそれほど広くないトイレの中でいま──ナマエにペニスを扱かれていた。
昨晩、抱きしめあって眠ったナマエをみたあと、ジモは起こさないようにベッドを抜けてシャワーを浴びて着替えた。夕食は質素で味気もないようなものだったが一応は食べて帰ってきていた。冷蔵庫の中を開けて使ってもいいのだが寝ている相手を起こすのも悪かった。
互いに軍生活が長かった為、起きやすいもので、ジモも細心の注意を払ってシャワーなどを終えると、荷物は明日の朝に片付けようと自分の部屋に置いておいて、ナマエのベッドに入った。
素直に求められると嬉しい。自分だけじゃないんだという気持ちになる。ナマエはジモの元上官であり、いつだって冷静沈着な指揮官でもあった。恋人になり、特別な顔を見るようになったが、やはり過去の経験もあって、恋人としての特別な姿を見せられると嬉しい。
普段は堅物だと言われるジモも好きな相手を前にすれば普通の男だ。
本当は自分も触れたい。素肌を重ね合わせたい。
そう思いながらも気持ちよさそうに眠る恋人を前にすると心穏やかな気持ちに変わり、反対に自分も眠気に誘われる。無理もない、ここ数ヶ月は硬いベッドや車や輸送機の中だった。まともに眠れることはありがたく、心地よい温もりに包まれては眠りについてしまったのだ。
そうして数時間後に起きたジモはまだ眠っているナマエをみて微笑んだ。
朝は基本ジモが早い。朝食を用意するのもジモの役目。というよりもやりたくなってしまう。
軍で染み付いた威圧的でクールな顔をしがちな恋人も、寝ている時は年相応か、少し幼いかわいい顔立ちになる。
「(キスしたい、でも起こすよな?)」
小さく開いた唇に昨日触れてなかったと思い出してしまう。
起きたらたっぷり触れられるのだからいいじゃないかと思いつつジモはベッドを抜け出して、寝起きで乾燥した喉を潤そうとキッチンで水を飲み、そのままトイレへと行った。
そして立ったままスウェットのズボンを下ろしたジモは自分の自然現象をみてしまう。時間が経てば収まるもので、血流の関係からだと分かっていた。ジモは今日が平日であることを思い出すと、ナマエは仕事で自分は休み。となれば夜遅くまでは帰ってこないのかと思うと、それまではお預けかと感じた。
「……まぁ、サクッとな」
長期任務などで仲間たちと暮らしていても全員が全員ではないが、ほとんどの人間は欲望を溢れさせる。男同士が多いため、下手なことは起きないし、ジモはストレートで恋人もいるため、いくら任務中に休みを与えられても他の仲間同様に浮気のような真似はしない。もっぱら印刷してあるナマエの写真や頭の中の映像で彼女を抱いた。
「はぁっ…」
硬くなった己のペニスに手を添えて、ジモはいつもの様に瞼を閉じてゆっくりと刺激していく。自然現象とはいえ素直な欲を孕んだ彼のモノは喜んでしまう。
瞼の裏にはナマエがいる。ベッドの上の彼女、何度も見てきた愛する人の姿に声。
「ナマエ……さん」
自然と声が漏れてしまう。抑えたいと思うのに名前を呼ぶとベッドにいる時のように感じて心地よい。
「ズーチャン」
そうだ、こんな感じの声だ。
「ズーチャン」
少し低くて背筋が伸びてしまいそうになる声。
「ウォン候補生」
つい過去の呼び方を思い出してしまう、あの呼び方は好きだ。
「ジモ隊長!!」
「はい!!」
思わず背筋が伸びてしまう。
夢だと思った声はどうやら夢では無いらしい。
まるで錆び付いた機械がゆっくりと動くようにジモは頭を後ろにギギギ…と向けた。残念ながら現実のようで、トイレのドアは開いており、その先には腕を組んだ恋人、ナマエがいる。
「なにをしているのかしら」
眉間に皺を寄せて、あからさまに不快感や苛立ちに似たような表情をしている恋人を見て、ジモは悪いことをしているわけでは──多分ないと思うが、そんな気持ちにさせられる。いや、これは悪いことなのかもしれない。恋人がいて、寝ている間に恋人の名前を呼びながら慰める。
行為を誘ったわけでも断られた訳でもないハズなのに、ジモは自分を慰めていたことについて、これは小さな裏切りかもしれないと考えた。
「これは、その……」
「起きたらあなたはいないし、私の名前を呼んでると思ったらトイレでマスターベーションを?」
「それは、ですね…」
振り返ったジモはどうするべきかをよく知っている。
軍時代に散々教え込まれたのだ。
ぺニスを持っていた手を下ろして、一度ズボンを上げてナマエに向き直る。
十五センチほど小さな恋人を見下ろして、ジモは冷や汗と羞恥心と罪悪感を混ぜ込みながら、真実のみを口にする。
「自然現象を解消しようと思って」
「私がいたのに?」
「寝ていたし、今日は平日でお仕事なので、無茶をさせたくなくて」
「私は昨日なんてあなたにいった?」
終わったな。
ジモの頭の中でそんな言葉が聞こえた。
彼女は明確に昨日告げていた。同じ気持ちだとジモも思った。
そう言われると何も反論できず「セックスをしたいと仰っていました」と思わず敬語になってしまう。そもそもジモはナマエに対してタメ口を聞くのはようやく慣れてきた頃だった。
元軍人、上下関係を重んじるジモには相当な努力が必要だった。
「そうね、にも関わらずあなたは一人で慰めようとしていた、私がいるこの家の中で」
「そうです」
「私が同じことをしていた場合、あなたは不満を感じないの?」
「感じます」
それはもうとんでもなく感じるだろう。
自分がいるのだから声を掛けてくれたらいい、思いやる気持ちがあるなら少し待っていたらいい、絶対に断るものか。
その気持ちはきっとナマエも同じで、相当な理由がない限り、相手の希望を断ることは互いにないはずだと理解している。……にも関わらず、ジモは自分を制御できていなかった。なんたる愚かな行為だと彼は叱られた大型犬のような顔をした。
「分かればいい、じゃあズボンと下着を足首まで下ろして立ったまま後ろを向きなさい」
「え」
「二度言わせるつもり?」
一度で必ず理解しろ。そういわれて来た彼が理解できない訳もなく、また逆らえる訳もなく、ナマエに言われるがままズボンと下着を足首まで下ろした、後ろを向いた。
先程と同じ体制になるとナマエの手が前に回り、ジモのぺニスに触れる。すっかりと叱られたそれは先程の硬さを宿してはいない。普段は冷え性のナマエも寝起きで上がった体温のお陰か手のひらは心地よいか、少し熱いくらいだった。
「ナマエさん」
「私が手伝ってあげる、力加減はあなたが命じなさい」
「いや、でも……っ」
「一人の方がいいと言うなら、それでもいいわ」
ちゃんと教えなさい、と命じるナマエにジモが逆らえるわけはない。
彼は自分の罪悪感、そして今の現状をすっかり喜んでいるのを理解している。申し訳ないと思っているのは事実だが、それ以上にナマエが自分のモノを慰めてくれる行為。罪悪感・快楽・羞恥・喜び。様々な感情が混ざったジモは「…もう少し、強く」というと、ナマエの手が少しだけ強く彼を握る。
「痛くない?」
黙ってしまう。シテもらっていることに文句を言いたくは無いが、潤滑油もない状態では無理もなかった。
それを察する彼女は握っていた右手に自分の唾液を垂らすと、それを広げるように塗った。
クチュ…と粘着質な音が小さくトイレの中に聞こえるとジモの足に力が入る。恋人に朝からマスターベーションの手伝いをされている。それはとても非現実なことであるのに、彼をすっかり興奮させていた。
次第にジモのぺニスの先端からはカウパー液が溢れていくと人差し指と中指がそれを広げて全体を先端から根元までしっかりまとわりつかせる。
「はぁっ……♡はぁ……ッ♡」
ジモの吐息が漏れ始めるとナマエも興奮してしまう。
確かに怒っていたところはあるが、それ以上に自分の恋人が自分の名前を呼んで慰めている姿は色気を感じた。
現役時代よりもさらに鍛えられた広い背中を丸めて名前を呟かれていることに素直に興奮し、彼の背中にピッタリと体を寄せて、手のひらでぺニスを扱くと震えたり、心臓が大きく音を立てるのを聞くとナマエの欲望が膨らんでいく。
「気持ちいい?」
「は……い♡」
よかったと安心する。こんなことをするのは初めてであり、想像するよりも強い力で握ってるが問題ないらしい。左手で彼の内腿や陰嚢を愛撫したり、少しだけ爪を立ててやると肩が大きく震えた。
華奢なナマエと並ぶと巨漢に見えるジモが女のように震えるのは愛らしい。
加虐心というものが湧き上がるようで、ナマエは左手で根元を強く握りながら鈴口を指先でクルクルと撫でると腰が震えた。
「ナマエ……ッさ、ん♡♡」
「いいのよ、気持ちよくなって」
「あッ……そこ、ダメだ」
「痛い?気持ちいい?」
「気持ちい、い♡」
自分ではすることのない愛撫。焦らすように甘やかす様に弄ぶようなものは欲望を吐くための慰めではない。鈴口を撫でられると根元が余計に刺激されてしまう。
次第にナマエの手は激しくなっていき、ジモは壁に手をついていくと、ナマエはますます彼の腰に抱きついてぺニスを撫でながら耳元を甘く噛み付いたり舐めた。
「こうして慰めていたの?」
昔から……。
蠱惑な声で問いかける。
「そ、うです♡♡ナマエさんの…ことを、考えて♡」
「光栄ね、私が教官の頃から?」
「はいっ♡そ、ぅ…です、ナマエさん、だけ♡」
「こういうのを、想像した?」
「……は、ぃ♡♡」
抱かれたいという気持ちはなかった。
だが軍にいる以上みんなどこかで欲を吐き捨てる。
個室を与えられることはなかった為、みんな大抵ベッドやトイレなどで慰める。健康的な成人男性の彼も例外なわけがない。反対にそれをしていない方がおかしいとさえ思われる場合もあるだろう。
それはナマエも知っている。
だがしかし、実際にそう言われてしまうと一途に自分を想うジモがかわいいと思った。耳まで赤くする彼に自分の下着が濡れるのはよくわかる。けれど、今は彼を徹底的にかわいがりたいという気持ちの方が大きい。
「ナマエさっ、ん♡その…、ぁ♡」
「なに?イキそう?」
「そ、そうじゃ、なくっ、て♡」
「痛いの?やめましょうか?」
「いや、あの…ぁ♡手を、止めて♡♡」
痛くはなさそうだ。
ナマエはさすがに男では無いのでぺニスの感覚は分からない。
それでも息を乱しているジモが痛みではなく、何かを耐えるような顔をしているのをみて、これはもうすぐイクのではないかと思った。
彼は否定しているが恥じらいを持つのは仕方ない。反対にベッドの中ではナマエがそれをされている側だ。これはもうチャンスと思った。
思わず口元を緩ませて、身を丸くして逃げようとするジモを抑え込むようにして、右手でぺニスを刺激しながら左手で太ももを撫でる。まるで少し変態じみたスケベオヤジかもしれない。これがいま恋人でなければ完全に訴えられるだろう。
「ほ、んと、だめっだから、ナマエッ♡」
懇願するジモは敬語も使えずにナマエを呼び捨てる。相当限界が近いのだと思うとナマエは「いいのよ♡」と甘い声を出してしまう。かわいい恋人を自分の手で気持ちよくさせる。嬉しくないわけがないと思うがジモの声はさらに切羽詰まっていく。
「ナマエッ…♡ほんとに、たのむ…♡おねがっ、ぁ♡やめっ…♡♡」
「大丈夫、気持ちよくなっていいから、イッて♡」
「違うっ、違うんだって、その…あぁ…ほんっ……ぁ…」
ジモは身体を丸くさせた。
ぺニスが脈打ったものの、ナマエが思わず嬉しそうに覗き込むと、ジモのぺニスからは黄金色のものが溢れ、トイレの中に綺麗に弧を描いて落ちていく。
ジョボボッというぺニスからの音とトイレの水が跳ねる音。
そしてしばらくすると放出が終わり、トイレの水はすっかり無色透明から黄色に変わった。きっと彼女が尿検査の担当医なら何かしらをいえただろう。
「……健康的ね」
うん、朝一番だもの。
ナマエは必死に取り繕って声を出すがジモは静かに流してズボン履いた。振り向いた彼はナマエをみては泣きそうな顔をしていた。
サーッとナマエも流石にやらかしたと感じた。
ジモがこうなるのも当たり前のことだと彼女は思った。普通に考えて恋人の前で放尿をしたのだ、ナマエだって彼と同じならそうなるだろう。
「ごめんなさいズーチャン、嫌だったわよね?私があなたの静止を聞かなかったせいだから、あなたは悪くないの!」
あからさまに落ち込んでいる。
ナマエは必死に彼の肩を掴んで慰めるが言葉は帰ってこず、狭いトイレの個室の中で慰めるがジモの顔は無表情だった。死んだ魚のような目をしている。大の大人が恋人にぺニスを扱かれて喘いで失禁……放尿した。有難いことにそれは全てちゃんとトイレの便座の中にいったので、どこも汚れていない。
「ズーチャンごめんね?私が調子に乗っちゃったから」
「……」
「嫌だったわよね?怒っていいのよ?」
「……」
「呆れた?嫌いになった?あの…ねぇ、ズーチャン?」
「……大の男が漏らすって、こんなこと…うぅ」
思わず顔を俯かせるジモにナマエは完全にやらかしたと思いつつ取り敢えず便器に座らせて慰めた。
ジモの性格を考えると、きっと彼は自分が情けなくてたまらないのだろう。泣きはしないがその一歩手前という彼は「こんなこと…」ということに、ナマエは彼の自尊心を酷く傷つけたと思い抱きしめて謝罪した。
「ごめんね、ついかわいくて止められなかった、私の責任なの」
「かわいいって…そんなわけ、ないでしょ…あんなの、漏らしたんだ」
「そうね、でも…なんていうかその……私はすごく興奮したから」
「え……」
口を滑らせたなとナマエは感じた。今から入れる保険を考えたが諦めた。彼の自尊心を傷付けなのならば、自分も同様にさらけ出して傷付くべきだった。
自分が彼の姿すべてに興奮しているのは事実で、それさえ嫌がられるのかも知れないが、あの時、他人の放尿など決して喜ぶべきものでないが、恋人である気高いジモが情けなく自分の手で排尿している姿は、正直興奮してしまった。
「そういう趣味じゃないけど、なんていうか、色っぽかったから」
ナマエは照れ臭そうにしつつもジモのスウェット上からぺニスを撫でた。放尿しただけのぺニスはまだ少し硬さを持っていた。彼の腰に手を添えてスウェットを軽く下着ごと下ろさせると、柔らかいそれがあり、ナマエは触れようとするがジモは汚れているからと拒絶するが、彼女は彼の胸を押して便座にゆっくりと座らせると自分のスウェットのズボンを下着ごと脱いだ。
「ナマエさん…その…」
「興奮した…って、言ったでしょ?」
「いや、あぉくそ、夢?」
彼女も自分がそんなに大胆になるとは思わなかったが背中を向けてジモに自分の濡れた場所を見せた。そこはもうなんの前準備もいらないほどトイレのライトに反射して光っており、ジモのぺニスに入口を押し付けて刺激する。
「私のこと呼びながらマスターベーションしてるのも、触られて声出してるのも、漏らしちゃうのも、全部興奮したっていうと、嫌?」
「そんな訳ないだろ…それどころか、凄く嬉しい……あんなダサい姿」
二十代の若いジモの回復は早い。
格好つけたがる理由もわかるが、ナマエはすっかり興奮しており、そんなくだらない理由を考える気も起きない。
「だから、ぁ、気に、しなっい、で…♡」
「ッッ……あぁナマエさん」
「フフッ、引いた?」
「……いや、すごく、興奮してる」
受け身が多いナマエにトイレで逆レイプのように挿入された。
普段なら場所をと互いに考えるのに、早朝から味わう快楽に二人はすっかりと逆上せてしまいそうだった。
「よか、た♡♡」
ナマエがトイレのドアに手を添えてジモの上で背中を見せながら腰を揺らす。剥き出しの小さな尻がジモのぺニスを咥えて揺れるのをみていれば、先程の悩みなど簡単に消えてしまいそうになる。
「ぁ…ッ♡」
「ナマエさん」
騎乗位だって中々させないジモだ。
いつだって二人のセックスはノーマルなのに、今日に限っては酷くアブノーマル。それが二人をより興奮させる。
髪を揺らして腰を揺らす彼女は不慣れな様子であり、ジモは細い腰に手を添えた。普段とは違う形での触れ方にジモは狭いトイレの中で腰を揺らし始める。下からの強い刺激にナマエは体勢を崩しそうになるがドアはドアノブを下に押さないと開かない。
「あッ♡あ…ッ♡」
「自分からって…はぁ……抑えられないだろ」
「は、ぁ♡好きっ、にしてい、いから♡♡」
「そういうのは、ダメです」
本当にダメになるからとジモはギリギリの理性で告げるのにナマエはぎゅうっ♡とソコでジモのぺニスを締め付けた。
好きにしていいと身体でいうようなナマエにジモは歯を食いしばるなり、彼女から一度抜いて、簡単に抱き上げるなり向き合って最奥まで一気に貫いた。
「〜ッ♡♡」
「イッ、たな」
「ま、っぁ♡ズ、チャ、ン♡♡」
「俺のこと好きにしたからな、俺も好きにする」
失禁しようがなんだろうと、と付け加えるジモはやはり少し根に持っている様子でナマエの唇を奪うなり、互いに舌を絡ませて唾液を混ぜた。ジモはナマエの尻を鷲掴みにして下から突き上げると上から押さえつける。
互いに吐息が混じりあい、狭い密室の中では小さな換気扇の音が微かに聞こえる程度で、二人の繋がった音やトイレットペーパーが揺れる音が聞こえる。
「ズーッ、チャン♡♡ズーチャン、イクッ♡イクッ、から♡」
「俺も、そろそろ……イキそうっ、♡」
肌のぶつかり合う音がしばらくして互いに声にならない声を互いの肩口で漏らした。ジモはゴムもしてないのに中に出してしまったと思いつつも、膝の上のナマエはアフターピルがあると告げるため、二人はしばらく狭いトイレの中で抱きしめ合った。
それから二時間後の八時過ぎ頃、ジモは休みのため朝食の片付けを終えて、ベッドシーツを外していた。
仕事の用意をして身嗜みを整え終えたナマエが玄関先でそろそろ行く。というのを聞いてジモは洗濯機に持っていくためのベッドシーツを片手に玄関に行くとスーツ姿のしっかりとした彼女がいた。
「迎えがいるなら連絡して」
「早めに帰るから平気よ、シーツちゃんと洗ってね」
「は……い」
結局あの後ベッドでも愛し合い、朝から存分に味わい尽くしたせいか互いに妙にスッキリして元気だった。
それを揶揄うようにいわれたジモは恥ずかしそうにするも彼女は頬にキスをしてドアに手を掛けて仕事へ向かおうとするが、手を止めて振り向いては笑った。
「トイレに行くなら私を呼びなさいね、いつでも相手してあげるわよ?」
「ナマエさん!!」
珍しくからかってくると思わずジモは声を上げてしまい、ナマエは笑って言ってしまう。朝からなんてことをしてしまったんだと思いつつも玄関のドアを閉めて手の中のベッドシーツを洗おうと考えつつ、ふと見えたトイレのドアにジモは数時間前の出来事を思い出した。
「あぁもう……ナマエさんめ……」
今日一日はダメになりそうだとジモは頭を抱えつつ家のことを始めるのだった。
2026.02.22
→