近頃デストロンの動きは活発であり、デスザラスは非常に苛立ちを感じピリピリとした肌に痛いほどの張り詰めた空気が基地内で感じられた、増える会議にいくら基地の隅にある治療室と言えど聞こえてくる怒号に一体全体何事やらと思いつつ部屋にやってきていたデスザラスのブレストタイガーを撫でていた、グルグルと喉を鳴らすブレストは不安げな彼女をみつめては大丈夫だと言わんばかりにその頬にじゃれつくように舐めてやった
「ここに居たのか」
「デスザラス大帝様、お話は終わりましたか?」
「ああ、お前にも次の計画について念の為説明しておこう」
珍しく自室にやってきたデスザラスに彼女は真剣に話を聞いた、今あるエネルギー全てを使い古の都アトランティスを浮上させそこに隠れたエネルギーを強奪するのだという
そのアトランティスとやらは海の底深くに眠っているとのことであり彼女は巨大な津波が発生してしまうのではないかと思わず伝えたもののデストロンの為なのだと言われれば彼女にそれ以上発言することなどまるで許されず静かに頷いた
「お前には沢山苦労をかけている、暗黒要塞さえ元に戻ればこんな苦しいことも減るのだ安心してくれ」
誰よりも巨大なその指先で彼女を撫でる姿はとても優しいものに感じられた、小さく頷く彼女をデスザラスは何処までも自分の子供のように可愛がるその姿はまるで父のようであった
「恐竜戦隊のみんなも出撃するんですか?」
「あぁ当然奴らは力仕事には欠かせない人材だからな」
「あまり怪我をさせないように無茶をさせないようしてください、お願いします大帝様」
「分かっておる優しい娘だ、そんなに奴等がいいのか」
デスザラスにとっての恐竜戦隊はさほど価値がないと言えよう存在だった、力ばかりで頭が回らず任務の失敗も多い(失敗の数で言えばブレストフォースの面々も同じだ)そんなガサツで野蛮な連中のどこがいいのやらと彼は毎度思っていたが彼女にはデストロンという中に優劣など無く、ただ仲間が傷ついて欲しくないだけだった、特にゴウリュウはいつだってあのメンバーの中で傷をこさえて帰ってくるというので目が離せなかった
「みんな大切ですよ、彼らもブレストフォースも当然デスザラス様も」
だから怪我をして欲しくないと素直な彼女の言葉にデスザラスは暗い宇宙の中で見つけたちいさな存在ではあるがこの娘だけは隣にずっと置いてやりたいと感じられた、まるで自身の子供のように感じられるからだ
「エネルギーの運搬だけだ、怪我をすることは無いだろう奴らにも充分気をつけろと忠告しておこう」
「ありがとうございます大帝様」
「それにしてもお前は本当に恐竜戦隊、特にゴウリュウを気に入ってるようだな」
「そんな、それは、その、そんなこと」
隠し事や嘘をつくのが下手だとは思っていたがまさかこれほどかと呆れて久方振りに自然な笑みが溢れるデスザラスをみて彼女もつられて笑う、やはりデスザラスがいくら破壊大帝と呼ばれ畏怖される存在だとしても笑みを浮かべる姿の方が遥かに魅力的であり彼女には到底恐ろしい存在に感じられなかった、例え誰もが彼を恐怖しても彼女だけはデスザラスの優しさを知っていたから
「ゴウリュウさん!」
たったったっと軽快な足音が近付いてくる方向にゴウリュウは身体ごと向ければ案の定見慣れた彼女がやってきた、次の任務に向けて早速ゴウリュウ率いる恐竜戦隊の面々は用意をしていた、今あるエネルギー全てを利用して行う程の価値ある場所なのかと疑問を感じつつも決めたことを拒否することも出来ない彼等は小言をいいつつメインルームにいこうとしており部下達も足を止めたが何かを察したのか先に行ってしまう
「どうした、大帝様に用事か?」
「違います、次の任務ってすごく大事だって聞いたからどうしても渡したいものがあって」
ゴソゴソとポケットの中を探る彼女になんだと思い膝をついて待ってやればようやく見つかったらしく「これ…」といわれゴウリュウは指を差し出したら鋭い指先の先端に何かが掛けられる、ちいさな長方形のキーホルダーのようなものは見慣れないものであった
「お守り作ってみたんです、本当はみんなの分用意したかったけど間に合わなくて」
エネルギーを運ぶだけだとしてもサイバトロンが来て抗争になる筈なのだからという彼女の優しさが機体に染み渡る、どうして彼女はこんな自分にここまでしてくれるのかと彼は思う、単純にその目は好意を向けていることを理解していながらもゴウリュウは自身の立場や種族の差など様々な違いから見ないふりをした
だから彼にできることはその鋭い指先で怪我をさせぬように触ることもせずただ「ありがとうよ、これがありゃ百人力よ」と力強く返事をするだけなのであった、その言葉に嬉しそうな笑みを浮かべる彼女に背を向け歩き出しながらゴウリュウはそのお守りを胸にしまう、何処までも力のあるものに感じられ今ならばなんだって出来そうだと思うのだ
海底での任務ということもあり治療室でありながらも彼女の部屋は厳重にロックをかけられていた、万が一サンダーアロー内が浸水しても無事なようにだというが些か心配性なのではないかと思いつつ彼女はその指示に従う
「それにしても人が居なけりゃ仕事もないし、することが無いな」
どうしようかと彼女はベッドを占領するティラノサウルスのぬいぐるみに声をかけるがソレは当然なにも言わなかった、日毎に苛立ちを抑えきれない様子のデスザラスやそれに巻き込まれる仲間達にどうにかできないものかと思いつつ今現在彼らを治療することで手一杯の自分には到底問題解決は出来ないと感じられ堪らず柔らかな布に顔を埋めれば消えない土臭いような汗臭いような香りが広がった、その香りは確かに彼女の想う相手であり彼が今なにをしているのかとばかり考えてしまう
どうしてゴウリュウなんかが好きなんだと仲間達は口にする度にどう伝えればいいのかと彼女は悩んだ、あの日あの時治療を担当する中ゴウリュウを知り恋をするのは自然なことであったからだ、彼は不器用でありながらも必ず相手のことを考え自分の守りたいものを守ろうとしてきた
「もう随分お前に直してもらってるな」
「確かに…特にゴウリュウさんは多いから一番やりやすいですよ」
「嬉しかねぇ言葉だ」
「多分目を閉じてても出来ます」
そういって目を瞑り彼の期待に手を這わせここはいつに治した、ここは誰にやられたか、なんて彼女は記憶の中を手繰り寄せて伝えてはどうだと彼に自慢げな顔をする
「そのうち専属のリペア師になっちまいそうだな」
「ゴウリュウさんの専属なら私いいよ、いくらでも二十四時間三百六十五日全部対応しますよ」
「それなら俺はお前が困った時にいつだって助けてやるさ」
だからいつでも頼ってくれという彼に甘えて雑用でもなんでも手伝わせたのは今となっては悪かったかもしれないなと思い出して苦笑した、ふとサンダーアロー全体が大きく揺れたことに彼女は起き上がり何事かとおもいドアに近付けば遠くで上手くいったという喜びの声が聞こえ安堵する、これで暫くはデスザラスも機嫌がよく軍内の空気も良くなるだろうと思いまだ解放されないことを見越して手元のそのぬいぐるみを抱き締めた、目覚める時にはみんなが戻ってきてくれているようにと
ゴウリュウにとって彼女は特別だった、それは傍から見ても分かるものであるが決して彼女の何かになりたいという訳では無い、初めこそ子供のように感じていたものが日々を過ごす中彼女が立派な大人であり自分には持たぬものを持つ部分に自然と惹かれていながらも自分の手を見るだけで決して触れてはならないものだと思えた、人間は脆く儚く彼の鋭い三本の指ならば簡単に引き裂いてしまえるのだ
「おい、危ねぇぞ」
「危なくありませんよ、そんなに怖がらずとも」
「怖がっちゃいねぇ、ただお前に何かあれば俺様がデスザラス大帝に怒られるだけだ」
廊下で見かけて時間があれば毎度誘われ自室に連れていかれることに慣れる頃彼女は手を見たいといった、普段治療で散々見ているだろうという気持ちがありながらも差し出せば彼女は恐れも知らずにその手の中に登り仔猫がじゃれるように動き回るのだ
ゴウリュウは落とさぬ様に慌てて両手で抱き留めて触れる事など治療以外に無かった彼女に対して動揺しつつ傷付けぬ様にと注意を払っていた、だというのに当の本人はそんなことも気にせずにゴウリュウの指先に頬擦りをしては心地よさそうに笑みを浮かべる
「ゴウリュウさんの手って大きくて安心する」
おまけに暖かいという彼女にゴウリュウは表面温度を調整したとは云わずにただ静かに見下ろした、瞼を重たそうにする彼女を下ろしてやるなど考えが抜けてしまう頃には気付けば寝てしまっておりその熱を彼は感じながら「子供だな」というしかなかった
そんな彼女だけが心残りであると彼は思った、デスザラスに裏切られ地球に残されサイバトロンに助けられ医療ベッドに横になりながら考え続けた、デストロンという軍団はサイバトロンと違い個が多くそれぞれが強い野望を持ち仲間意識はチーム以外は少ない、こうしたことが起きないとは思わなかったがまさか自分が散々尽した相手にかと呆れさえ感じる
隕石爆弾を受けた彼は起動すると同時にただ彼女のことだけを思い自分の心配をする部下達に彼女のことを問いかけた
「あの子なら多分サンダーアローにいますよ」
「そうか…大帝の所にいるならまだ安全だな」
それだけは良かったと安堵しつつも彼女はデストロンにその身を置いていていいのかと考えればゴウリュウは直ぐに答えをだした、そしてカクリュウにサイバトロンを呼ぶように伝えた
「どうしてこんなこと僕たちに」
サイバトロンに身を置く少年ジャンをみてゴウリュウは彼女よりも幼いながら立派な戦士の目をしている子供だと感じた、過去に彼に何度か仕掛けたことがありながらも彼はスターセイバーによく似て広い心と強い勇気を持っており、あの司令官は良い父親なのだと思った
ゴウリュウは自身の記憶の中に鮮明にある暗黒要塞の地図データを送り彼に渡してやり問いに答えた
「デスザラスは裏切った、捨てられるのは嫌だ、見捨ててやる…それに俺達は、いや、俺はあいつを守ってやりたいんだ」
「あいつ?」
「あぁそうだ、あいつ…」
ゴウリュウはそのまま意識を落としてしまい恐竜戦隊の面々は慌てて駆け寄るもピーポーがすぐさま彼の様子を見たところ命に別状はないと伝え安堵する、ジャンは未だゴウリュウのいっていた"あいつ"を気にした様子であった為彼らは顔を見合せて伝えた
彼女は優しく穏やかで到底デストロン軍には似合わない人間であった、そしてゴウリュウの愛する人間だと、今頃連れられて暗黒要塞にいる頃だろうから彼女ごと助けて欲しいと彼らはデストロンではなくただの恐竜戦隊として彼らの尊敬するリーダーとその人にとって大切な彼女の為に頼んだ
気付けば寝てしまっていたと目を覚ました彼女は部屋が違うと気付く、噂に聞いていた暗黒要塞の中に来たということなのだろうと察した彼女は一緒に連れて来てくれていたらしいぬいぐるみを抱き締めピリつく空気のその場所に表情を暗くした、ふと廊下からヘルバットとドリルホーンの話し声が聞こえる
恐竜戦隊はおいてきぼり?要塞がよみがえれば約立たずは不要ってことだな。その言葉を聞き暗黒要塞に居ることは確実であるが恐竜戦隊の面々がいないという事実に気付き思わず口元を手で覆う、そんなはずが無い…デスザラスに限ってまさか部下を置き去りになどきっと何か考えがあるはずだと彼女は堪らず部屋を飛び出しメインルームを探し飛び込んだ
デスザラスは彼女の顔を見るなり非常に機嫌良さそうに猫なで声で「目覚めたか」というが彼女にとってはそれ所ではなく震える声で問いかける
「大帝様恐竜戦隊の皆さんは」
「気にせずとも良い」
「気にせずって彼らは仲間ですよ」
「奴らは所詮捨て駒よ、先に地球の破壊だ」
「そんなことをしたら皆が」
「くどい!お前はワシの側に黙ってついてくればいい、これ以上の話し合いは不要だ、レオザック部屋に連れて行ってやれ」
椅子に座っていたデスザラスだが恐竜戦隊ひとつを気にした彼女に強い苛立ちを感じたのか立ち上がり初めて彼女に声を荒らげた、傍に控えていたブレストフォースの面々は何も言わず顔を伏せた、デスザラスは指名したレオザックに鍵を忘れるなよと念入りに告げる
静かな廊下を歩くレオザックの手の中にいる彼女は酷く不安げな表情を浮かべていたが彼もまた慰められる程の優しさなどは持ちえなかった、今にも泣きそうに潤む瞳がふと彼を見上げた
「ねぇレオザック、ゴウリュウさん達のこと迎えに行くよね?」
きっとあんなことを言っていても長い間過ごした仲間なのだからきっとあの言葉は嘘なんだと彼女は藁にもすがる思いでレオザックに問いかけるも彼は苦虫を潰したような表情を浮かべながらただ前だけを見据えた
「デスザラスのことを分かってるだろ、そんなことするはずが無い」
「どうして?仲間だよ…私たちみんな家族みたいに」
「俺たちは所詮デストロン、デスザラス様に仕える身だ、明日は我が身…恐竜戦隊がどうなろうとも構わん」
それは彼にとっての本音であった、利用し利用されるのがこの軍における自分達であり生き抜くためなら他者を利用するのが当然である、そう考えればゴウリュウという男は些か甘いヤツだとも思えた、それが美点であるゆえに彼女は彼を好いたのだろうとも考える
レオザックが手の中を見下ろせば消え入りそうな声で「酷いよ」と呟いていた、スパークに電流を流されたように痛みを感じながらも今は目先のことだけを考えねばと彼は部屋の中に彼女を閉じ込めた
薄暗い部屋には何も無くただ静かで暗いだけであり彼女は部屋の隅で膝を抱え溢れそうになる涙を拭いながら願った
「ゴウリュウさん、お願い無事でいて」
次々と負傷するサイバトロンの兵士たちと共に並ぶゴウリュウの傍を離れない部下達に兎に角手伝いをしろと告げ未だ動けぬ自身を恨めしく感じる、次々と降ってくる隕石爆弾の被害を聞きつつどうしようも無い現状をただ見守る中ふと胸元からはみ出たひとつのお守りを指先で取り出す
器用な刺繍で健康第一と書かれており彼女らしいなと感じながらゴウリュウはまだ痛む機体を持ち上げる、迎えに行かなければならないのだと考えて
「どこに行くんです隊長」
「どこでもいいだろ、お前達はここで手伝いをし続けろ」
「ダメですってそんな身体じゃ今度こそ無事で済まない」
珍しく忙しなく真面目に動き回るカクリュウに呼び止められるもゴウリュウは彼を突き放した、突き飛ばされたカクリュウの音を聞いてやってきた恐竜戦隊の面々はゴウリュウをみつめる
「俺ァ今行かなきゃダメなんだ、悪いなお前たち」
仕事の手伝いもしなければ自分勝手な奴は隊長ではないと彼は自身に思うが彼らはゴウリュウがその選択することを理解していた為静かに見つめた、そしてそれ以上引き止めずただ無事に戻ってきて欲しいとだけ告げるものだから良い部下を持てたと彼は苦笑した
ビクトリーセイバーが現れ戦闘が激化する中デスザラスは地球破壊のみに思考を奪われていた、レオザックは大帝の座を奪いたいと常日頃願っていたもののデスザラスを尊敬していないわけではなかった、だからこそここまで彼に着いてきたはずだったがその裏先程の彼女の表情や泣き顔が忘れられずにいた、彼女の警護をしているジャルガーに通信機で連絡を取るも相変わらず泣き続けているとの報告を受け彼はメインルームから出ていきジャルガーと交代する、確かに部屋の奥では彼女の啜り泣く声が聞こえておりレオザックは深呼吸のように冷却ファンを回して思考を落ち着けてからノックすれば彼女の声が聞こえ彼は伝える
「俺はお前を見ているとかつての妹を思い出す、だから逃げられるなら逃げろ、入口は開けられないがその部屋の奥に非常扉があるはずだ、俺はもう行くが大帝にこの事は言うなよ」
そういって遠ざかる彼の足音に思わず立ち上がり入口のドアを叩く、まるでレオザックの声は戦場で死を覚悟したような戦士の声だと感じたからだ
兎も角彼に言われた非常扉を探そうとした時まるで要塞は変形でもしているかのように足場を動かすため彼女は困惑する、本気でデスザラスは今から地球を攻め入るのだと感じつつようやく見つけた非常扉は人間サイズのものであり重たいながらも何とか彼女の力だけで開く
「どこに行けばいいの」
広く薄暗い要塞の内部で孤独だと感じた、戦いに行かずにそばに居てくれればよかったのにとレオザックに思いつつ彼女は足を進めていけば近くで何者かが戦う声が聞こえた
ふと角から覗き込めばそこにはスターセイバーとデスザラスが一騎打ちをしており今まさに決着だと言わんばかりに胸元に刺さった剣を引き抜くデスザラスがいた、その姿に堪らず彼女は飛び出して床に伏すデスザラスの傍に寄った
「お父様!」
スターセイバーは思わず二人を見下ろし動揺した、傷付いたデスザラスではあるものの彼女を見ては優しく笑みを浮かべ「部屋に居ろと言ったはずだ」と告げるものでありその姿は破壊大帝には遠く及ばぬものであった
だがしかしどれだけ二人の仲が良くても要塞を止めここを脱出しなければならなかった、そしてもう長くないデスザラスは仕方がないが人間の彼女を置いていくことは正義のサイバトロン総司令官に出来るわけがなく彼女を抱き上げる
「離して!みんなっみんなもう居ないんです、ここに居させて大帝様と居させて」
「ダメだ、こんな所にいては死んでしまう、君を待つ存在だっているはずだ」
そんな存在はもう居ないと彼女は思いながらも決して目の前の敵を恨むことは出来なかった、自分達が行っていたことは決して正しいことでないことを理解していたからだ、抵抗をやめ静まる彼女を連れスターセイバーは脱出口に向かおうとする中ドアが閉まろうとした
「間に合わん、すまないビクトリーレオ彼女を頼む!」
「ああわかった」
ジャンを探しつつ出口に向かっていた為か間に合わず彼女だけを放り投げた先でビクトリーレオは名も知らぬ得体の知れぬ彼女を手に抱いていたがすぐさま隣のホーリーに任せる
ふと通信機で要塞をそのまま地球に衝突させるということが判明しスターセイバーは自身を犠牲にしてでも止めるという頃、ふと彼女にはデスザラスの声が聞こえた
「達者で生きろ我が娘よ、必ずまた迎えに行こう」
まだ生きているのだと感じながらもホーリーの腕の中で要塞の破壊される様を見つめながらもデスザラスを思い出す、誰よりも優しく寛大な心を持ち恐れられたとしても彼女にとって彼は確かに"父親"であった
それはデスザラスだけでなく彼の部下である仲間たちみんな彼女にとっての家族だった、だからこそどれだけ彼らが悪者とされても傍にいた、皆不器用な者たちだったのだ
「さよなら大帝、さよならデスザラス様、さよなら…お父様」
あまり父と呼ぶことは無かった、だがしかしそう呼べば彼は確かに厳しい表情を崩して名を呼んでくれることが心地よかった
爆破され完全に朽ち行く要塞を見つめ涙を零した、もう一人きりで生きていかねばならないのだと思いながら…だがしかしふと地球から飛び出してきた小型シャトルがホーリーたちの傍に止まり何事かと彼らは見つめていれば一人の男が慌てたように飛び出した
「あいつは無事か!?」
「ゴウリュウさん!!」
「無事だったのか」
「良かった、良かった…生きていたんですね」
ホーリーの腕から飛び出した彼女は傷だらけのゴウリュウに飛び着けば彼は何も言わず自然と受け止めて強く抱き締めた、二人の関係はどういうことだと思いつつも眺めるもののゴウリュウと彼女は泣きながら再会を強く喜んだ
「みんな居なくなって私一人かと」
「悪かった、アイツらも無事だから安心しろ」
「傷だらけなのにこんなところまで来るなんて危ないじゃないですか」
ちいさな手がゴウリュウの機体に触れる、顔も身体も全て大なり小なり爆破に巻き込まれた怪我の跡があり今ここまで来たことさえ驚いてしまうほどであるがゴウリュウは胸元にいる彼女に告げる
「お前が心配だったんでな、迎えに来たんだ」
「…ゴウリュウさん」
あっジャンは見ちゃダメ。という声と共に二人の影が重なり直ぐに離れる照れくさそうに笑う彼女にいつもの様に不貞腐れたようなしかめっ面をした後に照れ臭そうな顔をしたゴウリュウはその腕の中の彼女をもう一度抱きしめて地球に帰ろうといった
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