毎度毎度任務があろうがなかろうが大なり小なり怪我をしてくるのは大抵恐竜戦隊の面々である、撃たれただとか腕が外れただとか腰が痛いやら指先が切れただとか様々な理由でやってくる彼らに彼女は嬉しそうにしたがどうやらそんな彼らの統括はそれがいたく気に食わなかったようだ

「はーい、終わったよカクリュウちゃん」
「いやぁ助かった、ありがとうリーダーにまたドヤされるところだった」
「合体途中に躓いて突き指したんじゃあ、仕方ないよ」

指先に包帯を巻いてやってはニコニコと笑みを浮かべるカクリュウに彼女が笑みを向ければ同じく彼も嬉しそうに笑みを浮かべる、はじめの頃は中々信頼を獲得できなかったものの一度懐くとまるで友達か家族のように接してくれる仲間達に彼女もいつしか馴染んでいた
キャッキャウフフと二人が歌をうたって雑談に鼻を咲かせていると丁度先の報告を終えたらしいゴウリュウが二人の声に誘われてリペアルームに現れた

「なんでぇ楽しそうに話し込みやがって、ン?カクリュウお前何してんだ、またサボりか?」
「あっ!リーダー…ええっこれは」
「違うのカクリュウちゃんさっきの戦いで突き指しちゃったみたいで」
「なにぃ?」

ギロリと光る赤いバイザーにその身を縮み上がらせた二人は一体全体どう怒られるやら。と顔色を変える
ゴウリュウはその巨体を大きく揺らしてカクリュウに近付き手を大きく振り上げた時、彼女はゴウリュウさん!と止めようとしたが彼の手はとても優しく部下の腕に触れて彼の指先を見た、しっかりと固定された指先は動かす事さえ難しそうに見え様々な角度から見ては彼は納得したように手を離した

「よしこの処置なら大丈夫そうだな、次の任務迄に治ってなかったら留守番だからな」
「やったー!じゃなくてわかりました」

それでは失礼と逃げるように行ってしまったカクリュウに置き去られた彼女はほっと胸を撫で下ろすため何をそんなに緊張したんだかとゴウリュウは思わず彼女に伝えればてっきり怒られるのかと彼女はその旨を素直に晒した

「俺様が怒る時は仕事せずサボってたり馬鹿なことしてる時くらいだ、現にお前に怒ることなんざ何もない」

その言葉に目を大きく見開いてパチクリと瞬きした彼女だが彼は至って真面目な表情でいう、ゴウリュウの良いところは部下を平等に評価する上に何があっても彼らを守ろうとするところだった兄貴肌で力強い彼を好きにならない恐竜戦隊のメンバーはいない、思わず彼女も目尻を下げて笑みを浮かべるため彼は気恥ずかしく視線を逸らした

「それよりもだ、お前はその…カクリュウちゃんだとかっていうのをやめた方がいい」
「えぇ、どうしてです?」
「俺達はデストロンの恐竜戦隊、泣く子も黙る恐怖の部隊だぜ」

天井のライトが反射した赤いバイザーは威嚇するように光るが彼女は全くその言葉が理解できないようである、それもそのはず彼らの戦闘している姿や略奪する行為など一度も見たことがないないのだ
いつだって彼女は基地内で誰かしらと話をしたりお茶を入れたり時折仕事という名の治療をするというだけで大帝からの寵愛を受けるだけの存在であった、ともなれば恐竜戦隊の面々は面白おかしく優しい友人のような存在にしか認知しないのだろう
だが表ではそうしてデストロンとして激しく活動する危険な部隊、それがたかだか小娘ともいえよう人間に気軽な敬称で呼ばれるなどあってはならないのだ、だというのに

「ゴウリュウちゃん」

彼女にとって自室でもある治療室にて声が響いた、ゴウリュウは今一度足元の彼女を見下ろせば何を思ったか再度嬉しそうに「ゴウリュウちゃん」と呼んだ、一体全体何を思って呼んでいるのか先程の話は聞いてたのかと彼は苦しそうにそう呟くと彼女は小首を傾げた

「てっきり呼んで欲しいのかと」
「俺の話はお前の耳には届かなかったか?」
「届いてます、届いてますから」

指の腹で彼女の頭を押してやれば、けたけたと愉しそうに彼女は笑うもので聞いていないなと判断しゴウリュウは呆れてしまう
デスザラス相手にもそうだが恐れを知らないのかはたまたそういった性格なのか、肝が座ってんだか図太いんだかと溜息をこぼせば彼女はゴウリュウさん。と呼びかける

「なんだ?」

指を離して彼女を見つめれば手の下で笑みを浮かべた彼女はやっぱりそっちの方がいいという、そんな話をしてたんじゃあないんだがと思いつつも確かにあんな風に呼ばれるよりかはずっとマシだと感じて同意すれば彼女はまた嬉しそうに彼を呼ぶ、到底地球侵略しようと目論む悪の軍団の基地に聞こえる声ではない