治療室に入る度に僅かに増えている色とりどりの花達に苛立ちを感じるとはとゴウリュウは思った、どうやら彼女は植物が好きだったらしくそれを知るブレストフォースの面々は度々彼女に花を送っていたらしい、面々ということで理解できるだろうがレオザックだけではなかったのだ、ガイホーク、ジャルガー、ドリルホーン、キルバイソン、あのごますり上手のヘルバットさえごますりではなく善意だけで彼女に花を送っていたらしい

「みんなくれるのはいいけど花瓶が足りなくて困るっていったら無理矢理お花を変えていっちゃうんです」

枯れてないのに勿体ないという彼女は嬉しそうに花の水を替えていた、そもそもレオザックは元より彼女に冷たい態度やら皮肉が多く嫌われていると思っていたがどうやら素直でない部分を知られていたらしく先日の一件のことも水に流し仲直りをしたようで部屋の中は赤い薔薇が咲き誇っておりまるで庭園かと感じるほどだ

「あいつがブレストフォースの面々から花を貰ってるの…知ってたか?」

ゴウリュウは恐竜戦隊の部屋にてそう問いかければ各自自由に休んでいた連中は顔を上げて反対に知らなかったのかと彼に問いかけた、元からこの質素で薄暗いサンダーアローの中で唯一明るく華々しいあの治療室は少々異質にも思えるほどである
そして彼らは続け様に「俺達も彼女にお土産あげたりしてますよ」といった、そんなこと聞いていないぞと驚いた表情をするが彼らは口々に自分は花をやった自分は食べ物をあげた自分は綺麗な泥団子をあげた。などというがもしやこの軍で彼女にものを与えてないのは自分だけかと気付く、デスザラスに関しては論外だった、何故なら彼は彼女に対してはとても甘く欲しいと強請られれば惑星ひとつでもくれてやるだろう
近頃地球によく行くことがあるがその度に自由行動するデストロンの面々を不思議に思っていたが理由が判明しゴウリュウは頭を抱える、あの恐怖のデストロンが…ではなく、唯一自分が彼女に何もしていないことがだ

「それで何か欲しいものはあるか」
「直接聞くってゴウリュウさんらしいですね」
「要らねぇもの貰っても仕方ねぇだろ、嫌いだったら尚のこと」
「リペアキットも修理用品もこの間大帝様に頂いたし、お花はちょっと今は困るし、お菓子もこの間恐竜戦隊のみんなが買ってきてくれたし」

今は特に何も無いですと笑顔でいう彼女にそれでも何かないかと引き下がらずに問いかければ彼女は眉間に皺を寄せてうんうんと悩ましい表情を浮かべる、普段から世話になっているというのに何もしておらず気遣いのひとつも出来ていなかったゆえに出来れば何かをやりたかった

「ゴウリュウさんが私に似合うって思うものが欲しいです」
「そりゃあ難しい注文だな、もっと無いのか?」
「強請るのは簡単ですけど、プレゼントって相手のこと考えてするものじゃないですか少しくらい私の事で悩んでくださいな」

まるで自分が彼女のことで悩んだことなどないようだと思われていたらしい、ゴウリュウは確かにプレゼントはそういうものかと一理あると思いながら部屋を見渡して花はやめようと思いつつ部屋を出た
次の任務の下調べだといいつつゴウリュウは珍しく地球に一人で降り立った、任務というのは建前で彼女に渡すプレゼントについて考えていたのだ、ネット通販に雑誌にテレビ人間たちのありとあらゆる最新情報を見ながら頭を悩ますゴウリュウは花も食品も服も鞄もアクセサリーもそのどれもが彼女に似合わないわけが無いと思った、それ故にますます何がいいのか分からず街中の人間を遠目に眺めて情報を探る
彼女と同じ年代の女性達は大抵華やかなメイクに短いスカート姿で生足を出して男の隣を歩いていた、ふとそんな彼女を想像しては何となく違うような気がした、食べ物は以ての外で消えるものを手渡したくは無いと思いつつ彼の下調べは結局成果も出せずに終わった
だがしかしゴウリュウが彼女へのプレゼントが決まったのはふとした時であった

「あらこれ」
「どうだ気に入ったか?」

サイバトロンの戦闘を終えて戻ってきたゴウリュウは早速治療室に足を運び彼女にソレを差し出した、突如目の前に現れた自身と同じくらいのサイズをするテディベアだった
大きな赤いリボンを綺麗にしたそのテディベアは柔らかく彼女は思わず飛び込んで抱きしめた、まさかゴウリュウからこんなに可愛らしいものが貰えるなどと予想しなかったのである、喜ぶ彼女に満足そうな顔をする彼であったがふと彼女はリボンの裏を見ては笑みを止める

「ねぇゴウリュウさんこれどこで手に入れたんです」
「ん?あぁ任務の時にサイバトロンのガキが持っててな」
「だと思いました、これ【イルミナへ】って書いてますもの」

これじゃあ貰えませんという彼女にゴウリュウは驚いてしまい押し付けられてしまう、手の中のテディベアは確かに悲しそうにそのつぶらな瞳をキラリと光らせてゴウリュウをみつめており彼は気まずそうな表情を浮かべる、さらに視線の先には先程まで喜びに満ちていた彼女の表情が暗くなりますます彼の罪悪感が湧いてしまうばかりだった

「てっきりゴウリュウさんが作ってくれたのかと思ったのに」

きっとこのテディベアは大きさから見ても特注でサイバトロンの少年が好きな人に愛情を込めて作った大切なものなんだと感じられた、それがまさか略奪され他の人に手渡されるだなんてテディベアも思わなかったことだろう

「私へのプレゼントって気持ちはとても嬉しいですが人から奪ったものは欲しくありません、ちゃんとこれはサイバトロンの子に返してくださいね」

そう出なければしばらく恐竜戦隊の治療は受けないというものだから今現在デストロンの軍医である彼女に拒絶されれば自分達でしなければならず到底面倒な事だと知った彼は顔色を変える
いや、それ以上に彼女に拒絶に近い言葉を言われたことに傷ついたのかもしれない、ポロリとバイザーの下のカメラアイが潤む彼に気付いた彼女は慌てて弁明する、決して気持ちを拒絶した訳ではなくただ自分の為に思うのならばちゃんとした方法でして欲しいだけなのだと、ゴウリュウは別に泣いてはいないといってそのテディベアはしっかり返しておくと告げ背中を向けた

それから数日後目覚めた彼女の枕元にはそれはそれは大きなデフォルメされたティラノサウルスのぬいぐるみが置かれていた、首には大きなリボンをつけて名前が書かれているが慣れぬ筆記体のせいか綴りが違うことが確認出来て彼女は堪らずに笑みを零した、縫い目の荒いそのぬいぐるみを力いっぱい抱き締めれば嗅ぎなれたオイルがする、みんな同じ洗浄剤やエネルギー補給をしているというのハッキリと彼-ゴウリュウ-からだと理解した
一から作成されたらしいその不器用なティラノサウルスは彼によく似ておりそっとその鼻先にキスをしてベッドから飛び出す、今すぐ彼に会ってお礼を伝えたいと思いながら。

「この間盗まれたイルミナへのプレゼント用のテディベアが帰ってきてる」
「おっ、よかったじゃんジャン、手紙までついてら」

しばらくガールフレンドに渡そうと用意していたテディベアをデストロンの襲撃と同時に盗まれ落ち込んでいたジャンだがある朝目覚めるとサイバトロン基地の入口に置かれていたそのぬいぐるみに安堵する、手紙には謝罪の文言とぬいぐるみの作成方法が知りたいという内容が記載されており少年は驚きつつも直ぐにその手紙の差出人が誰かに作ってあげたいのだと理解して分かりやすくメモを書き、またデストロンの襲撃があった際にその手紙をとある恐竜の傍に落としてやるのだった