全くもってここはデストロンの基地に似合わない場所だと思いながらもゴウリュウは珍しく彼女の自室兼治療室の掃除を手伝ってやった、鼻歌を歌いながら大掃除をする彼女自身も全くもってこの基地には似合わず時折何故彼女がここにいるのかと疑問さえ抱きそうになる

「この間大帝様がオーロラを見せに連れてってくれたんです、ゴウリュウさんみたことあります?」
「オーロラだぁ?美味いのかそりゃあ」
「もう食べ物なわけありませんよ」

けれど何故ここにいるかなど愚問でかの破壊大帝が一身に寵愛を注ぐのだから彼女がここにいる意味などはそれ以上は無い、オーロラとはなんだと思い彼はブレイン内で調べてはすぐさま理解してこんな事のために二人は突然出ていったのかと思えば破壊大帝も名が廃るというもの
だがしかしそんなことを気にしない彼女はデスザラスについて嬉しそうに語り、オーロラの感想を伝えた、この時期でなくては見れないとテレビで見て頼んでみたら時間ぴったりに連れていってくれた上に夕飯にピザを食べたいと言えば態々ピザ屋にまで連れて行き二人でテラス席で過ごしたと、テレビでピザ屋をデストロンの襲撃だと言われていたことを思い出して僅かに頭が痛くなった

「全く大帝も甘いもんだ」
「そうでしょうか、私にも怒る時は怒りますよ」

その言葉にゴウリュウは飽きれてしまう、彼女のいう怒られたは精々夜更かしをするなだとか一人で行動は危険だ。なんていう親心のようなものであるが部下である彼らは全く違う下手をすれば大破させられそうなほどの怪我を負っている、特にレオザックは度々折檻を受けるがデスザラスに受けているなど彼女に言える訳も知られるわけもいかない為裏で仲間達に修理してもらっているのだがそんな事は当然知らない彼女はいつもサイバトロンとの戦いでの負傷のみを修理する

「そういえばゴウリュウさんって私には怒らないですよね」

思い立ったようにいう彼女にゴウリュウは修理パーツを棚に直していた手を止めて彼女を見る、普段カクリュウをよく叱りつけては棍棒で叩いている姿を想像しているのか手を垂直にしては振り下ろす彼女は目を輝かせており何か嫌な予感がすると思っていればそれは当たった

「私にもたまには怒ってくださいよ」
「怒る理由がないだろうが」

そもそも怒りたくて怒っている訳では無いんだと呆れていえばどうやら火が点いた彼女は自分のダメな点を上げてはどうにか叱られたがろうとする、だがしかし彼女の言うことは夜中におやつを食べただとか実はヘルバットに貰った花をレオザック捨てられたがそれを回収しただとかデスザラスのブレストイーグルに乗せてもらったなんてだけで全くもって怒る要素がなかった

「お願いゴウリュウさん、このままじゃ私本気で悪いことしちゃいますよ」
「一応聞くがどんなことだ」
「寝てるゴウリュウさんの顔に落書きしたりとか」
「そりゃあ怖いこった見てみろ震えちまってら」

盛大に笑ってやれば彼女は不満げな顔を浮かべて作業をするゴウリュウの足元にやってきたかと思うとアスレチックの如く彼に登っていった、危険だからやめろという彼のいうことも聞かずに気付けば彼女は器用に彼の肩まで上がってきた、そして彼の顔を覗き見た
互いに交わる視線にゴウリュウは動けずにいれば頬に手を添えそして顔を寄せた、あと数センチというところで堪らず彼はつまみ上げた

「嫁入り前の娘が何してやがるんだ、ちったぁ恥じらいって奴はねぇのか」

好きでも無いやつにからかい交じりにしやがって俺じゃなきゃどうなるんだというゴウリュウだが彼女は目を丸くしたままであった、そして普段通りの声量で怒ってしまったと気付いては慌てて顔を青ざめ彼女を地面に下ろした未だ黙り込む彼女が泣き出すのではないかとハラハラしていれば小さな声が聞こえ聴覚センサーの感度を高めて音を拾う

「初めて怒ってもらっちゃった」

その言葉におもわず転がってしまうも彼女は嬉しそうに笑みを浮かべるだけであった、呆れも何もかも通り越して本当に不思議な生き物だと感じつつ掃除の続きをしてやれば彼女もようやく再開する
彼女はここまで穏やかで朗らかで優しいというのを感じる度にまるでデストロンには似合わないと思った、地球に滞在することも多くなったのだから逃げ出して地球人の生活をしてもいいというのに彼女は一向にサンダーアローから出てこずに彼らの傍で彼らの為に生活をする、彼女が拾われて早数年デストロンが何を目的として行動しているのか知らないほど子供でもない上に善悪の区別もついているはずだ

「そういえばデストロンから出ていきたいって思わねぇのか」

備品の数を数える彼女に問いかければダンボールの中に向けていた視線を彼に向ける、丸く大きく水晶のように輝く瞳の本音はどうなのかとかんがえる、仮に彼女がもしデストロンを抜けたいといえば自分はどう動くのかと考えた時静かに見送ることは出来ないかもしれないと思ったそれは彼女が仲間であるからだとゴウリュウは考える、恐竜戦隊の面々はまるで家族のように過ごしていたたかだか数年ではあるが彼女もまた立派な家族の一員のようで欠けることが考えられないのだ
そんな彼の視線を受け続けた彼女は短く「思う訳ありませんよ」といった、ここにはデスザラスもブレストフォースも恐竜戦隊もいる

「それにゴウリュウさんがいるから」

全くもって度し難いとゴウリュウは掃除を終えて広い廊下を歩きながら彼女の表情を思い出す、近頃要塞の復活に向けてますます激しい活動をする中でも彼女は変わらない、どれだけサンダーアローの中の空気が悪くともあの治療室に足を運べば花の香りと彼女の表情にすべてがリセットされる

「別に俺がいても」
「恐竜戦隊のことは好きですし、それに私はここが家だと思ってるしみんなのことを家族と思っていますから」

あの後続け様にいう彼の言葉を遮った彼女の瞳は真っ直ぐでゴウリュウはそれ以上の返事はできなかった、嬉しいような何処と無くそんな彼女だからこそ悪化する戦況の中この場にいていいのかと悩む
サイバトロン、いやスターセイバーの漢気と優しさに触れたゴウリュウは時折考えてしまう、いっその事彼女を奴らに預ければもう少し平和に生きられるのではないかと手元に置きたいという気持ちなど毛頭もないただ彼女の幸せだけを願っている自分がらしくないと感じて彼はそれを隠すようにのんびり昼寝をする部下達を怒声で叩き起こした