夜遅く、ハデスの城と正反対に位置する最深部にある黒山羊バフォメットの館、ハデスは静かにそちらへ足を運んだ。むせ返るような黒山羊の悪魔の香りが香り、薄いピンクの煙と禍々しいそのオーラだけで通常の下級神や悪魔に魔物などは混沌の世界へと誘われるであろう。
ハデスを乗せた馬車がその館の前で止まるなり、従者がドアを開く前に自ら降り立ち、彼らに戻るように告げた、冥王の職務が残っていようと自分の頬を張ったあのメイド長が管理していることを知っているため、多少彼が抜けることも問題はない、否問題にはさせる気はないという考えであり、彼は巨大な門を抜けて館の扉を開くなり、入口には数十名のメイドとは言い難い女たちが並んでいた。
彼女たちの服装はかつてメイドになるためにやってきたバルゼミアと同じ上半身はクラシカルなメイドであるが下半身はその意味を成さないハイレグの激しい、バフォメットに仕えるにふさわしい格好であり、その容姿もプロポーションも天界冥界屈指の美女たちで構成されている。
種族や人種、肌の色や髪の長さや色も問わず女たちは存在し、ハデスをみるなり、その瞳を細めてはにこりと微笑み彼の四方を取り囲んでは彼の身体にその美しい手を這わせ、正面に立った一人のメイドは彼の頬を撫でて顔を寄せて妖艶に笑った。
「いらっしゃいませ冥王ハデス様、久方ぶりに遊びにいらしてくださいましたか」
冥王様もお疲れ様ですもの、本日も大変麗しいお姿ですわ、私共準備は万端でございます、いつぶりのことでございましょうか、と彼女たちは口々に呟いてはハデスを一匹の餌のようにみつめるが、それがこの城のメイドたちの客人へのもてなし方であった。
ハデスは彼女たちを軽蔑した眼差しを向けるわけでも、ましてや欲望の眼差しで見るわけでもない、それがこの館では通常でありマナーでもあるのだから思うことはなにもないのだ。
「バルゼミアに会いに来た、どこにいる?」
「お嬢様は中庭でございます、しかし今はそっとしておくほうが」
メイドたちは誘いを断られたことを残念がるが、彼が来た理由を理解しており少しだけ困ったような表情を浮かべつつ素直に場所をいうと、ハデスは感謝を告げて彼女たちの間から抜けていく、その背中に受ける視線は不安も心配もそれ以上の僅かな嫌悪も混ざっており、彼女たちが如何にあの血を継ぐ娘たちを愛しているのかが伺えるため、ハデスは静かに慣れたように足を進めて、正面入口から更に奥に続く中庭へと足を進めた。
彼の居城の中庭も立派なものであるが、バフォメットの館の中庭はなににも勝る美しさであり、それはあの悪魔がかつて人間の妻のためにと用意した愛の結晶であるからであり、花々は薔薇からラベンダーまで季節や種類を問わずそれぞれがいがみ合わないようにどこまでも丁寧に飾られていた。
そしてその奥のすずらんとジャスミンが飾られた白い花園に彼女はいた、冥界の夜よりも深く美しい少しだけ癖のある長い黒髪にその髪から伸びた立派な黒山羊の角、そして月明かりのように眩い黄金色の瞳、デコルテラインが広くその肌とその身を美しく見せる真っ白な淑女のドレスを身にまとった女性が一人佇んでいた。
バフォメットの館の中は強固な結界が張られており、それはバーモットが生まれた頃からのもので、バフォメットの血を継ぐ女たちを守るものであった。
ブローチのないバルゼミアは安心しているためか、力を抑えることなくリラックスしたようであり、小さな風が吹くと髪が乱されて耳に髪をかけるときハデスは彼女の名前を呼んだ、僅かに揺れた肩に静かに振り返る彼女をみたとき、ハデスは彼女はとっくに自分がかわいがっていた友人の娘や、姪のような幼さなど消えた、女性であるのだと感じてしまう。
それは残酷な成長のようでもあるが、なによりもハデスの奥底に秘めた感情を揺さぶるには十分なものでもあった。
「ハデス様」
「話があってきた、嫌ならいいんだが、お前の好物であるイチゴとはちみつのタルトも用意している、よかったらこれを食べる時間だけでも共にしてくれないだろうか」
「えぇもちろんでございます」
ハデスはここに来る前に自身の城のシェフに頼んで作らせた彼女の好物の入ったケーキの箱を掲げれば彼女は断ることもなく静かに返事をするが普段のような無邪気な笑顔がないことに彼は小さく胸を痛めた。
二人は中庭の中心にある純白のガゼボの下の椅子に腰掛けるとメイド達が早速とケーキと紅茶を淹れて、二人の邪魔をしないようにとすぐにその場を後にして、広い中庭には二人だけになってしまう。
「ベルゼブブから預かっている、調整をしてくれたらしいからもっていなさい」
「このために態々起こしくださったのですね、ありがとうございます」
「いや、謝りたくてきただけだ、バルゼミア...傷つけてすまなかった」
彼は決して簡単に謝罪を口にすることはない、それは彼のプライドなどではなくそうするようなことがないからだ、かつてハデスが彼女に謝ってきたことはあれど、それは幼い彼女がへそを曲げた時の機嫌取りのためだけで、このように真剣に謝罪をすることなどは滅多になかったはずであるが、ハデスは謝罪という口だけでは決して許されないことを理解していた。
バルゼミアは普段であれば目の前にある艷やかでハチミツが掛かった真っ赤なイチゴのケーキに目を輝かせていただろう。紅茶に関してもいくつもの砂糖をいれて溶かしていたはずだが彼女は一切触れようとせずにテーブルの上に置かれた深い朱色のブローチを眺めるだけだった。
「あの時、お前を傷つけたのは自分を抑制できなかったからだ、大切にしなければならない存在だとわかっていながら余は自分の欲望に負けたのだ、冥界の王たる存在でありながら、お前を傷つけ悲しませた、それはどんなに謝っても許されぬことだとわかっている」
「いいんです、謝らないでくださいハデス様、仕方のないことなのです」
ハデスは彼女が「ハデスおじさま」と呼ばないことが静かな拒絶であると感じられて胸が傷んだ、そして彼女の言葉が突き放すような諦めきったような声であるということは更に彼を苦しめ、ハデスがバルゼミアをみつめると、彼女の瞳もまたハデスを見つめる瞳は愛する者に向ける感情の昂りからくる山羊の瞳であった。
「この瞳はその方の深淵という名の欲望をあらわにする鏡、貴方様でも抗えぬのは当然のことなのです」
これはそういうものである。
母もそれに苦しめられ、バルゼミアもそれに苦しめられてきた、そしてそれ以上にその周囲の者たちはもっと狂わされてきたものに抗うことなどはできないのだと彼女は理解したように微かに微笑むが、それは彼女の心の平穏も幸せも全て認めないというものだった。
「私は嬉しいのです、それほどまでに強い血を宿せたことに、次期バフォメットを継ぐに値しているのだと」
彼女は立ち上がるとハデスの隣に並び、彼は彼女の黄金色のハチミツのようにドロリとした瞳を見る時、胸の奥底を刺激されるように感じた、甘いアンバーとムスクという人の欲望を刺激する香りに混じった彼女だけの特別な香りは周囲の花々に負けぬような香りであり、真っ白なコルセットで締め上げられた細い腰、彼女の手がハデスの両頬を優しく包み込み見下ろす時、それは混沌を極めるバフォメットの瞳である。
心臓が早まり、全てを解放してしまいたい、自分の欲望を表に出し、抑制していた全てを捨ててしまいたいと心の奥に秘めていたものが出てしまいそうになるとバルゼミアはあまりにも美しく微笑んだ。
「良いのです、私は黒山羊の悪魔、人々の混沌を受け止め、そしてこの世界に幸福を与えるのです」
そこには自分など存在しないという横長の山羊の瞳孔をみつめるハデスは呑まれそうになるが彼女の手を掴み立ち上がると彼女を見つめた。彼女の瞳の中に揺らぎが生まれ、バフォメットの血をぶつける魔力が水の上の波紋のように広がり消えるを感じるとハデスははっきりと告げた。
「お前はバフォメットの血を継ぐ者でも、黒山羊の悪魔でもない、ただのバルゼミアだ、我が友ベルゼブブとバーモットの娘であり、余の最愛の女性(ヒト)だ」
「ハデ...ス様...」
「全く先程からなんだ、余にむせ返るような能力を使ってくるのはいいが話途中に失礼だろう、お前は昔からそうだ、自分本位で話を進めて、覚えているか?お前が幼い頃、余がベルゼブブが話しているときにお前の話に耳を傾けなかったからといって、無理矢理に能力を解放して城中がパニックになって」
「あっあの、それは」
「ハデスおじさま、ハデスおじさま、といってアヒルの雛のようについて回るくせに、ちょっと自分の思い通りにいかないことがあれば拗ねてな。あぁそうだあの時もそうだったな、確かお前の行事に参加できないかもといったときに」
「もうっ!!もういいでしょおじさま!!なんでそんな事いうの!!」
ひどい!忘れてよ!とぽかぽかとハデスの胸を真っ赤な顔をして叩く彼女にハデスはこれまでの彼女のわがままによって困らされたことを次々と口にすると、彼女は涙目になってそんなことは過去のことであると否定するものの、ハデスはそれは過去であれども懐かしくも愛おしいものであるとして笑ってしまう。
どれだけ取り繕って自分を魅了しようが、どれだけ大人のふりをしようがハデスには意味などない、彼女の全てを知っているのだ、そしてだからこそ彼はそこから成長している彼女を心から愛おしいと感じ、自分だけのヒトにしたいと思ってしまった。
それははるか昔に約束をしたときから、彼も律儀に守ってきた約束だった。数多の女神に言い寄られてもハデスの瞳には無邪気に自分を愛してくれる彼女しか映っていないのだ。何百万年生きてきた中でも、彼女だけが特別であった。
「おじさまのバカっ!私はバフォメットの...」
「あぁそうだ、お前は美しいバフォメットの血を継ぐ女だ、そして...余のかわいいお嬢さん、いいや王妃だ、愛しているバルゼミア」
「...それは、子供に対して」
「いいや?お前を抱きたいと思っている。キスをしたいと、触れたいと、例えお前がその血を継いでいない普通の娘だとしても、余はバルゼミアという存在だからこそ思うのだ」
それはバルゼミアがハデスが冥界の王という立場でなく、ただのハデスに向けるものとおなじものだろう?と抱きしめながら問いかけるとバルゼミアは彼の胸の中で暴れていた手を止めてしまう。
バルゼミアが彼に恋をしたのは冥界の王だからではない、ハデスという自分を無性に愛してくれる相手だからだった。バフォメットという影に怯えるわけでも好奇心を向けるわけでもない、ただの一人の存在として見てくれるからこそ愛したのだ。
「”おじさま”として接していたはずの余がそうしてみていることが怖ければ逃げるがいい、だが余はずっとお前を愛していた。一人の女性としてな」
どんな姿のお前をみていても、その全てを知っているからこそ愛しているんだというハデスに抱きしめられるバルゼミアは彼の心臓の音を聞いた。心地よい心音を耳にする彼女はそれが普段よりも早く自分と同じように恋に加速する音と同じだと理解すると思わずハデスの外套を思わず指先で握ってしまう。
「私...こんなに大きな角をしてるのよ」
「とても立派で凛々しいな」
「瞳だってみんなと全然違う」
「冥界ではお前のような瞳はごまんといる、その中でもお前の瞳が一番美しい」
「この香りや血がおじさまやみんなをおかしくさせるし」
「余以外にはしてほしくないものだ、余だけにその香りを花のように撒いてくれるか?」
どれだけの言い訳を並べ立ててもハデスはいつものように笑い、彼女を強く抱きしめてその瞳をみつめてハッキリと告げた。その黄金色の山羊の瞳を覗き込む者は次第に自分の本能に従い混沌に飲み込まれるというのに、ハデスは決してそうならないというように彼女の横長の瞳孔をみつめた。色素の違う互いの金色の瞳が交じるのは異なる夜の月が重なるようだった。
バルゼミアはまたでも...と自身のなさそうに呟く時、ハデスが彼女の頬に手を添えて、そして一度だけ触れるだけのとても優しいキスをした。それはあの時の激しくも乱暴でもない、ただ慈しむようなものである。
「愛しているといってほしいんだ」
それは冥王としてでも、神々の長兄でもない、ただハデスという存在としての姿であり、彼は少しだけその眉を下げてただ愛するヒトからの言葉を待つ姿にバルゼミアは彼が本当に自分を何者でもない自分として愛するというのだと理解してしまうと、ほんの少しの背伸びをして自ら唇を重ねた。
「愛してますハデスおじさま」
彼の首に腕を回して泣いてしまいそうになりながら、ハッキリと口にするとふわりと彼女の香りが花が開花するように広がり、ハデスはその華奢な純白の少女から女性になろうとする花を抱きしめた。
その時、中庭の花は息を潜めるように香りを止めるようであり、二人はただ真っ白な小さな教会のようなガゼボの下で深く抱きしめ合い、紅茶が冷めることも気にせずに抱きしめ合い、互いの愛を確かめあった。
◇◆◇
「おじさま!おじさま!ハデスおじさま〜♡」
「バルゼミア、全くお前はそのような格好はやめなさいといっただろうに」
「だって今日は特別なんですもの、おじいさまに仕立ててもらったドレスなんですよ、どうですか?」
ハデスの居城にて騒がしく客間に現れたのは一人の王妃だった、冥府の王の妻たる彼女は落ち着きなく純銀に藤紫のドレスを身にまとってはいるものの、乳房がこぼれそうかつ下着が見えてしまいそうな際どいデザインであり、ハデスはすっかりと呆れたようではあるが、しっかりと「よく似合っている」と褒めれば彼女は嬉しそうにするものの、彼女は時計を見るとそわそわと落ち着きない様子であり。
その二人に対してドアが開くとそこにはティーセットを用意して現れたバルゼミアの母バーモットとハデスの友人であり義父となったベルゼブブが現れるなり、二人をみつめた。
「バルゼミア、あまり騒がしくしてはなりません、貴方は王妃であり次期当主なのですから落ち着きをもたなくては」
「そうだよバルゼミア、それに君の振動でその子が目覚めてしまう」
その子...と言われたバルゼミアはハデスの腕に抱かれた小さな赤子をみた。
バルゼミアとハデスが結ばれて数百年後、二人は一人の娘を授かった。
当時百八十歳の未成年だったバルゼミアにハデスは婚約を取り付け、二百歳のあかつきに結婚した。そうして夫婦となり数百年後、二人はハデスの弟であり神々を統べるゼウスに”創造承認書”の判を貰い受け、一人娘を貰い受け、そして先日その子は生まれた。バルゼミアによく似た黒い髪と整った顔立ちをした赤子にすっかりと全員が堕ちてしまい、ハデスも今や冥王としての威厳もないほど一人娘の父としての顔をしてしまっていた。
ハデスの腕の中にいた目を閉じたまま眠る娘はとても静かな眠り姫のようであり、先日ゼウスに合わせた際にも一切目を開けることもなくすやすやと眠っており、流石はハデスの娘だと笑い合い、さらにその髪からは既に山羊の角が立派に生えており、神の血が強くなるがゆえのものであると全員が理解するがために、この子を守ろうと思いあった。
その時、客間のドアが開き、そこからは潮の微かな香りと冷たい空気が微かに流れ、そこにはハデスの弟であり、大海の王たるポセイドンが普段とは違う礼服を着た姿で立ち尽くしており、彼を見るなりハデスは明るい表情を浮かべるものの、彼はいつものように眉間にシワを寄せた。
「久しいなポセイドン、来てくれて嬉しく思う」
「久しぶりだな兄上、兄上の子が生まれたから来たがすぐに帰るぞ」
ポセイドンは低く厳しい声で告げるが無理もないことであり、ハデスもそれは理解していた、なにせポセイドンは黒山羊の悪魔バフォメットという存在を嫌悪に近いほど毛嫌い、バーモットについてはその静寂さを認めているが、その娘のバルゼミアに関してはその騒々しさと身なりを好めずに二人はあまり良い関係ではなかった。
そのため、結婚式ぶりに会ったバルゼミアも苦い顔をしつつも、バーモットに紅茶を淹れてもらいつつ、ハデスと共にその腕にいる赤子をポセイドンに見せた。
「この子が余とバルゼミアとの娘だ、愛らしいだろう」
「...兄上の血のお陰だな」
「ポセイドン様、よろしければ抱っこしてくださりませんか?」
「何故、余がそのようなことをせねばならぬ」
普段の口癖のような雑魚や屑などといった言葉は赤子ゆえに控えるポセイドンも多少なりとも思いやりがあるのだと理解するバルゼミアはハデスから受け取った自分の娘を、ゼウスやアダマスも抱いてくれたのでハデスの弟である彼にも抱いてほしいと告げ、ハデスからも頼むと言われてしまえば姪の顔を見に来たのだから仕方ないとして彼はその小さな命を不慣れに抱いた。
ポセイドンにとって赤子を抱くのはゼウスぶりだと感じた、それは数百万年前のことだった、暖かく心地よくそして何よりも小さく神が守らなければならないと感じさせられる無垢な存在。
ポセイドンの腕の中でも泣くことのない赤子に彼は「ふん」と満足げにするのをハデスとバルゼミア、ベルゼブブとバーモットはみつめては嬉しそうに微笑んだ、まるでそれは一つの家族の形であるから。
「さぁ紅茶を淹れました、本日はポセイドン様のお好みの海の茶葉とハデス様のお好きなケーキをご用意いたしました、是非お召し上がりくださいませ」
「ポセイドン様、是非お席に座って召し上がってくださいませ」
バーモットの言葉にバルゼミアはハデスの紅茶にミルクを多めに砂糖を三つ落としては椅子を引いて、赤子を受け取ろうと腕を差し出すとポセイドンは赤子を差し出すものの彼は固まった。
それは彼だけではなく全員だった、赤子はポセイドンの襟を優しく掴んでいたからだ、それはとても柔らかいものであり「随分気に入られたようだな」とハデスが笑って優しくその手を外してみようとするが、ハデスの顔色が変わった。
「兄上?この赤子の手を外してくれないのか?」
「違う、外そうとしているんだ、だが離れないんだ!!」
「えぇダメよ、ポセイドン様をはず...えっ、ハッハデスおじさま、ママ、パパ...この子」
ポセイドンが自分の襟首を掴み腕の中から動かぬ赤子に何事かと思うものの、四人は彼の腕の中の赤子が初めて目を開いた姿を見つめた、その瞳の瞳孔はぐにゃりと歪み横長の山羊の瞳でポセイドンをみつめては、それまで生理的微笑もみせなかった赤子が心からの笑みをみせたのだ。
それはまるでバルゼミアが生まれた時、ハデスの指を掴んだときのようなものであり、ポセイドンは何事かと不思議がるのをよそに四人は呆気を取られた顔をしつつも、次の途端にこの子は紛れもなくバルゼミアの娘であり、バフォメットの血を継ぐ新たな子だと納得して笑った。
青い紅茶の中の砂糖はゆっくりと溶けて消えていく、それはまるでこれからを合図するように、静かに優しく甘く、ハデスとバルゼミアの愛のように。