牧場主と牛娘


※牧場パロ(牧場主×牛娘)

心地よい風が吹いていた。
水車が回り、気持ちいいほどの緑の芝、柵の中では何十頭との羊たちが過ごし、牛舎には牛たちがのんびりと過ごし、小さな家の前には鈴のついたオスの黒猫が寝ていた。

「あらマチャク、そんなところで寝ていては危ないですわ」

そういったのは一人の女性だった。
その女性は人間のようであるが少しだけ姿が違った。
柔らかい髪からは人のような耳ではなく、牛のような耳と角が生えており、耳にはピアスが一つ付いていた。クラシカルなふんわりとしたボリューミーなスカートには小さな穴が空いており。そこからは牛のしっぽが生えている。

事務所兼自宅から出てきた彼女はドアの前でゴロリと転がった飼い猫マチャクに声をかけたが、猫はくわっと欠伸をしてはついでに毛繕いをするため、話を聞かないんだからと呆れつつ外に放牧していた牛たちを牛舎に戻す時間だからと「ほらマチャクお手伝いしてくださいな」といって、一人と一匹は牛舎へと牛を戻していく。

牛舎へと戻していく際には一匹ずつ様子を見ていき、健康管理表をチェックしてやる。普通の牛舎とは違い最新式の建物と機械が並ぶそこで彼女は牛たちに搾乳器を付けてやり、機械のスイッチを入れると静かな音を立てて牛たちのミルクが機械に溜まっていくのをみつつ、身重な牛には丁寧にケアをして、一通りの仕事をこなしては牛舎から出て、少し休もうと自宅へ戻ると、既にそこには一人の男がいた。

「お戻りでしたのねテスラ様」
「ただいまレディ、特に問題はなかったかな?」
「はい、今日もみんな元気で病気も何も無く過ごしておりましたわ、ね?マチャク」
「マチャクと君がいたら安心だ、そうだ午後からは搾乳器の調整をしようと思う。昨日軽いテストをしてみたが今より負担も少なく量も多く取れるようになるはずだ」

ここ"テスラ牧場"の牧場主、ニコラ・テスラは若き牧場主でありながら発明家としての才もある天才だった。自然と動物を愛し、一度経営が破綻したこの牧場の前の主から引き継いで立て直してからはのんびりと自身の発明をしつつも、牧場経営にも精を出しており。
彼の牧場の牛乳はとても美味しいと絶品であるが、一人での経営もあり、大手牧場と比べてば数は少ないが需要はとても高いものだった。

それはレディと呼ばれた彼女には理由がよくわかる。
テスラは経営者ではあるが金儲けを第一にしていないからだ。
どれだけ動物達に負担をかけず、ストレスを与えずに出来るのかを考えている優しい人であり、彼女は思わずその優しさを感じると申し訳なさそうな顔をして俯いてしまうため、テスラは優しく彼女の髪を撫でた。

「どうしたんだい?私のレディ」
「いえ……私のミルクがちゃんと出れば、もっとこの牧場も、テスラ様の研究へのお時間も余裕が生まれるのに」
「レディ……いや、レジーナ。言ってるじゃないか、そんなことを気にしないでくれと。君は私を毎日助けてくれている。それだけで十分なことだ、牛娘としての君の能力はミルクだけじゃないんだ」

君がいてくれるから助かっているんだとテスラは優しく告げてくれることにレディことレジーナは尻尾を揺らしながら「……はい」と返事をした。

夜になり。
与えられた自室にて彼女は人間用の搾乳器を手に持っては自分の胸に押し当てた。
手動タイプのポンプ式の搾乳器を手に、彼女はベッドの上で繰り返してみるものの、ほんの1ミリでさえ乳は出なかった。

牛娘──それは人間と牛のハーフのような種族である。
とても珍しい生き物でもあり、高値の取引をされ、酪農家たちには重宝されている。
人間の姿であり、知性もあり、見た目だけならほとんど変わらないがその本質は牛であり。力でいえば人間よりもはるかに強く、疲れ知らずで重労働もできる。さらには牛娘は妊娠せずともミルクを出すことが出来、その味は普通の牛以上のものであり。ミルクだけでも高値の取引をされていたり、一部では"乙女の雫"などとも言われるほどだった。

レディ・レジーナがテスラの牧場に来たのはもう一年以上前のことだった。
牛娘として別の大きな牧場で過ごしていた。
何人かの牛娘もいたほどだったが、全員買われた存在であり、彼女はそのうちの一人であり、その牧場の中では人間も牛娘も抜いて一番に働く真面目な子だった。

けれども牛娘の価値はミルクにあるとされ、大人になってもロクにミルクのでない彼女は散々牧場主に虐げられた。食事を減らされ、服は牛娘として買われた時からの牛娘を主張するビキニのみで、人と変わらない彼女たちはやってくる来客達に嫌な目を向けられるのがいつもの事だった。
ミルクの出る牛娘たちは普通の服を着せてもらい、暖かい場所で寝られるが、彼女は他の牛と同様の牛舎で牛達と共に眠った。
種付けの話は何度も出たが、彼女は拒絶し、暴れだしたがある日ついに牧場主は何人かで押さえ込んで無理やりしようとして彼女は逃げ出した時、ちょうどやって来たテスラとぶつかった。

「おっとすまない、レディ、怪我は?」
「あ……ありません」
「酷い格好だ、耳とタグからしてここの牧場の牛娘か、初めて見るが人と変わらないな。ほら私のジャケットを羽織たまえ」

現れたテスラはそういって彼女に自分の羽織っていたコートを着せてやり、牧場に用事があると言うが彼女は逃げようとするため、なにか大きな事情を察知したテスラは「取引に来たんだが、丁度いいから同席してくれるかな?悪いようにはしないし、何かあれば法的に処置を取る」というため、どういう意味がわからないが、その笑顔があまりにも眩く、まるで毎日見る朝を知らせてくれる昇りゆく太陽のようであるため、手を繋いで戻ったのだ。

「つまりこの牛娘はミルクが出ない上に種付けも出来ないから困っているということか」
「なるほど……では、私が引き取らせてもらおう」
「そこに好きな金額を書いてもらって構わない。あぁあと連絡したように他にも何頭か牛を引き取りたいんだが、一番状態の悪い子でいい」

テスラは事務所に案内されると、相手のレジーナへ向ける苛立った表情も、怒りを抱えた声も言葉も気にせずに淡々と自分の目的と相手の望むものを与えた。
そしてテスラは自分が乗ってきたトラックに何匹かの牛を乗せた。レディが世話になった牧場主曰く、この若い牧場主は変わり者であり、安くで調子の悪い牛を買い付けることは有名で、妙な研究や発明もしているからお前もその実験動物にされるんだ。と意地悪に告げて彼女が日頃から真面目に取っていたノートを投げつけては別れを告げた。

「そんなこと無かった。テスラ様は本当にお優しい方ですわ」

彼に引き取られてからの日々はまるで嘘のように穏やかで、テスラは決して彼女のミルクを求めず、どれだけ彼女が牛娘としての価値が少なくとも対等な人として扱い、同じ屋根の下で暮らし、出逢った頃のように「レディ」と彼女を呼ぶからこそ、彼女は心から嬉しいと思いつつ、何かを返したいと思ったが価値のあるものを産むことは出来なかった。

はぁ…とため息をこぼして搾乳器を外して、丁寧にアルコール消毒をして片付けた。これはテスラから渡されたものではなくレディが自主的に隠れて買ったものであり。テスラはレディが牛娘であるというのに作業員として賃金さえ払ってくれてる次第であった。

無駄に牛娘として発達した胸元を眺めては悪い方向へ考えが向かうとき、ドアがノックされるため彼女は慌てて服を着直して、箱に直した搾乳器をベッドの下に隠して慌ててドアを開けると夜分遅くにテスラがいた。

「まだ起きてるかい?」
「はい、どうされました」
「午前中に街へ行った際に買ってきたんだ、レディにピッタリだと思ってね」

テスラは部屋へ入らずに入口でレディに一冊の本をプレゼントした。
受け取った彼女は中を開くと挿絵の多い小説であり。煌びやかで優しい絵柄が印象的だった。思わず本を目の前で捲ったレディは夢中になるが、慌てて本を閉じて感謝を述べるとテスラは優しく微笑んで彼女のピアスの着いた耳を撫でた。
トパーズの石はテスラがくれたもので、前の牧場での管理タグを外してつけられたもので、毎日鏡を見ては誇らしささえ感じるものだった。

「もし分からない文字があればまた私に聞きに来て構わないから、いつも本当に助かるよありがとう、私のレディ」
「私こそ……テスラ様のためになるなら」

なんだって……と思いながら言い切れずに就寝前の挨拶をし、残されたレディは手の中の本を見つめた。牛娘として生まれた時から教育はほとんどなかったゆえに文字を読むことはできなかったが、テスラは引き取ると同時に教育までしてくれた。
お陰で今や牧場の金勘定さえできるようになり、彼女は褒められれば褒められるだけ結果を残して見せたのだが、それでも本当に望むものは涙の代わりとしても出てきてくれやしないものだった。

「テスラ様……ううん、ニコラ様」

本を抱えてベッドの上で小さく呟いて温もりを大切にしながら眠りについたレディはこの温もりに包まれていたいと感じた。

それから数週間後、レディはいつもの様に牧場で仕事をしていると一台の車が現れたのが見えた。見慣れたその車にレディは尻尾を揺らすと運転席の男は「やぁレディ」と気さくに挨拶をした。

やり手牧場経営者のトーマス・エジソンだった。

エジソンはいくつもの牧場を運営しており。
テスラ同様の発明家であり、経営者だった。
何人もの牛娘も世話しており、牛娘専用の牧場を持つほどであるが、テスラと違うのは彼は人間の見た目をしていても、根本は牛娘を動物とみていることだった。
それ自体にレディは何も不満には思わない。それが当たり前のことだからだ。それにエジソンは過去にテスラと犬猿だったというが今ではすっかりと互いに顔を合わせる仲で、経営方針の違いはあれども発明家として互いの才能はそれなりに認めているという、まさにライバルらしい関係だった。

「テスラ様でしたら事務所におられます」
「そうかありがとう」

そう言って慣れた足取りで自宅となる事務所に入ったエジソンにレディは何か嫌な予感がしつつも仕事続けた。

レディを引き取ってからの生活は一変した。
それまで一人であった牧場生活は可もなく不可もなくではあったが、科学者であり発明家のテスラにとっては自分の時間が思うように取れないこともあった、
それでも傷つく動物たちを保護してやり、自分なりに居場所の良い場所をと思う中、それなりの軌道を乗っていた頃、レディ・レジーナに出会った。

裸足で逃げ出してきた彼女に当初人間かと思ったものの、牛娘だと気付いたのは耳を見たら明確だった。
売春婦よりも酷い格好かつ、人間のような身なりをした彼女たちは家畜としては当たり前でも、人間の見た目をしている故に奴隷だった。牛娘の人権については年々問題となっているが牧場での生活については牛娘だからこその正当な仕事だといわれていた。

牧場経営をしていれば嫌でもそのワードを聞くため、テスラもしっかりと学んだが、その牧場にいた頃のレディは旧式のやり方で管理され、怯え苦しみ、相手の牧場主が願うことなど到底無理だと思いテスラは引き取った。

真面目で健気で心優しく、まさに彼女は"レディ"の名を冠するに相応しいとテスラは常日頃思いつつ、窓の外を見ていればドアが開き、聞き慣れた声で名前を呼ばれるため振り返るとそこにはエジソンがいた。
彼が来ることは珍しいことはなく、新しい発明の話や牧場の話など様々であったが、今日は特段約束もしてなかったはずだが?と思いつつ適当な話をしつつコーヒーを出した。

「それで話があってきたんだろう?なんだ揉め事か?どこかの牧場で何かあったとか?」
「大した話じゃない……というかまぁいい話が出たから持ってきた」
「いい話?」

エジソンは天気の話から初めて牧場の話をしていたが、そのうち真剣なものに変わり「レディのことなんだが」とつぶやいた。
テスラは全く検討がつかず何事かというと、相手も話がわかる男であるため、結論から話をしてくれた。

「モルガン牧場のモルガン氏がレディを引き取りたいと」

モルガン──といえばエジソンの元スポンサーであり。牧場経営から上へいった金持ちであり。今は工場を持つほどでエジソン以上の金持ちであったが、そんな相手からなぜ?と思えばエジソンはモルガン牧場の種牛となる牛男がレディに惚れたのだという。

牛男──とは牛娘の逆である。
牛娘よりも数は薄い上に価値は低いが種牛としての価値はとても高いのだという。しかしながらそんな一人に対して?と思えば、どうやらその牛男はモルガンが手違いで手を出した牛娘との間の子らしいのだという。

「レディはまだミルクが出ないんだろ?向こうは別に種付けのためじゃなくて、ちゃんとした嫁に迎えてもいいとかなんとか、なにせ相手の牛男の方は人間として生きてるしな」
「なるほど、しかし私一人では決めきれないことだ、彼女の意見もある」
「報酬は多いはずだ、もし種付けでミルクが出るようになったら、お前が予算の関係でダメだったタワーの建設費も出すことも言っていた」
「……」
「まぁ考えてみてくれ、お前があの子について何を考えてるかくらいは私もわかってるつもりだ」

無理強いでもない。というとエジソンはコーヒーを飲み終えるた帰ってしまう。
ドアを開けると入口で寝ていたマチャクがエジソンを睨むのをレディが注意すると短い挨拶をしてエジソンは帰っていくのを、干し草を運んでいたレディはそのまま見送ったのだった。

夜──レディは意味のない搾乳器を見ては箱に直す時、ドアがノックされ、彼女が慌てて開けようとする前にドアが開き、テスラが現れた。

「入ってもいいかな?」

そういった彼にもちろんだとベッドの下に箱を慌てて直したレディはベッド以外は特にない部屋で申し訳ないがベッドを椅子がわりに案内すると、テスラは黙り込んでしまうため、彼女も何も言えなかった。
十中八九、昼間のことだとわかっていたからだ。

「エジソン様の提案について悩んでいらっしゃるのですか?」
「聞いていたのか」

レディは申し訳なさそうな顔をするが、聴覚が人よりも優れているのだから仕方ないとテスラは思いつつ、彼女の言葉にそうだと返事をした。
エジソンは別れ際に手紙を渡してくれたが、それはモルガンからレディへの破格のスカウトであった。テスラは牧場主だが発明家で貧しくないが裕福でもない普通の男だった。
天才であっても、想像は無料でも創造は有料だ。牧場経営での金はあるが、夢に描いたものは莫大な資金であるため難しいものだったがモルガンの提案は流石だと言える金額でもあった。

「詳しく分かりませんけど、私があちらにいくと、すごいお金を貰えるんですよね?」
「そうらしい」
「ミルクが出たらもっと……貰えるって……」

レディの言葉は重たかった。
テスラはあくまでも彼女に判断を委ねる気であったが、レディはテスラの手を取ると笑顔を向けた。

「私行きます!向こうでその方と結ばれるだけでも生活は保証されますし、もし私が種付けでミルクが出るようになったら、テスラ様にはもっと余裕ある生活が出来るんですもの!私喜んでいきますわ」
「レジーナ……」
「沢山のことを教えてもらったんですもの。牛娘として役に立たない私をここまで……」

文字の読み書きもできる。
本も沢山読ませてもらった。
経営についても学び、金勘定も出来る。

まるで普通の人のように地位もないのに人のように扱ってもらえるなんて幸福だ。というレディにテスラはベッドの下の箱を見ては思わず手を取ると手動搾乳器であった。
思わず目を丸くするテスラにレディは毎日試してみてもダメだった、自分はやはりと暗い顔をするが、テスラを見てはすぐに笑顔を戻した。

「好きな人とじゃなきゃ……種付けも、搾乳も、本当は嫌だなんて、とんだダメ牛なんです、だから最後くらいテスラ様の役に立ちたいですわ」
「レディ……バカ言わないでくれ、君が役に立ってない時なんかないだろう」
「テスラ様……!?」

俯いたレディは突如なにかに包み込まれることに驚けば、テスラが抱きしめてくれたのだと理解した。

「君は私に優しさも思いやりも温もりも全てくれていた。この牧場は私一人では特定できなかったんだ。君が世間の評価に悩むことはいいが、私は君を牛娘ではなく"レジーナ"としてしか見ていなかったんだ」
「それ、は」
「他の男のところに行くなんてダメだ。牛娘だからって愛してもない男に抱かれることもダメだ。君には幸せでいて欲しい」

虐げられず、苦しまず、暖かい場所でこの牧場で自分やマチャクに他の動物たちと囲まれて笑って欲しい。

そうテスラがはっきりと口にした時、レディは困惑した。自分はテスラを愛しているがそれを彼の口から聞いているのかどうかと。しかしテスラはレジーナをみると「行かないでくれ」と告げるため、レジーナも「行きたくありません」と告げて二人は抱きしめ合った。

「もし種付けをしてもらうのならテスラ様がいい。ミルクが出ようと出まいと、牛娘としての価値がなくても、あなたにならなんだって捧げたいのですから」
「レディそれは言い過ぎだ、君は可憐な女性だから、そういわれると素直に男として困ってしまうよ」

でも気持ちは受け取る。とテスラはいうと優しくキスをした。
一度触れて離れると、ふわふわと心地よく感じて、もう一度触れると、夢を見てるのかと感じたがテスラは微笑むため、レディは胸が熱くなると感じた。

「ん?レディ、ミルクが出てるようだ!」
「へ?あっ……ほっ本当ですわ、止まらないです!どうしましょう」
「バケツかなにか持ってこよう、待っててくれ!!」

そう言って慌てて飛び出したテスラにレディは身体の変化に驚き、二人は騒がしい夜を無事に過ごした。

数日後──朝からミルクを飲むテスラは以前にも増して活気に満ち溢れていた。

「うん!レディのミルクを飲むとやはりやる気が出るな」
「まぁテスラ様ったらいい飲みっぷりですこと」

レディはミルクを飲んだテスラを微笑ましそうに見ながら、パンにたっぶりのバターを塗って頬張っていると、朝早いというのに事務所兼自宅のドアが開き、そこにはエジソンがいた。

「テスラ!あの件断ったのか?」
「おはようエジソン。あの件とはモルガンのことか?もちろんだ、調べたがあの牛男は色々問題児だしレディは任せられない」
「だとしても、ここよりもいい環境になるし、お前も望んでた部分はあっただろう……ん?このチーズ、とんでもなく美味いな!!」

エジソンは先日の件を断ったと聞いて驚いていたがレディは冷静に朝食をと差し出したチーズを食べたエジソンは話をそっちのけに絶賛を初めて、なにをしたのかと話を変えるため、テスラは自信満々に告げた。

「レディのミルクから作ったチーズだ、これは非売品で主に私専用だよ」
「なに?レディの?これは商売にしたら希少価値もあって凄いことになるぞ」
「No.Non.エジソン、私だけのものだ。さっきのチーズも君の口には持ったないほどだと言うのに」

全くと呆れるテスラにエジソンは二人を見たあと何かを察した顔をして肩を竦めては「わかったよ」といって、近々学会もあるから出席を忘れないように告げて出ていってしまう。

そうして二人きりになるとテスラとレディは隣に並んで食事を続けたが、テスラはどれも全てに満足そうにするため、レディは自分のミルクが誇らしいと思う時、テスラの手が肩に回されて優しく抱き寄せられる。

「ねぇレディ、この牧場は広いだろう……だから少し狭くなるのもいいと思わないかな」
「それは……」
「牛の意味としての種付けじゃあないが、まぁそういうことだ」
「あっ、朝からそういうことはいけませんのよ」
「すまない、あまりにも君の味が美味しくて」

もう……と言いつつも抱き寄せられたレジーナは優しくキスをされると受け入れてしまい、二人は朝食の途中でありながらも互いを見ることしか出来なくなった。
その時、テーブルの上に上がっていたマチャクはヨーグルトをひと舐めして、テスラの皿の上のチーズを1口かじったあと、テスラのコップの中のミルクを飲むため、二人がようやくテーブルに視線を移しては声を揃えていった。

「「こらマチャク!!」」

猫は慌てて逃げ出したものの最後にチーズを盗んでいくため、テスラは全く手癖の悪い友人だと思いつつ、猫をも虜にする貴重なミルクはこの家以外に流すなんてもったいなくて出来っこないとして、蜂蜜のかかったヨーグルトを食べては微笑んだ。
隣にいるレディもまたしっぽを揺らして、耳に着いたトパーズのピアスを輝かせて、いつかくる騒がしい食卓を考えては食事を進めるのだった。


2026.6.25


戻る 次へ
トップページに戻る