あの日からすぐに一命を取り留めたものの意識の戻らぬスプリンガーを連れてリアンはデブリに戻ればロードバスターが出迎えた、インパクターとその他新人たちを連れて帰ってきたことに驚きつつも彼はとても嬉しそうに出迎えた

「よかったなリアン、ようやくインパクターとの再会だ」
「ロードバスターまで?もうやめてよ」

スプリンガーを運ぶインパクターの背中を見てロードバスターは嬉しそうに伝えた、なんせ彼はインパクターの旧友で二人の仲を特に応援していたのだから仕方ないだろう。
新人達はしばらく任務もなければ行く予定もないためリアンの傍にいるという、インパクターははじめこそ厄介払いしたい気持ちもあったがリアンは彼らを気に入ってしまっている上に静かなこの基地、デブリが騒がしくなるならいいじゃないかとロードバスターにもいわれてしまったおかげで今では静かだった基地が毎日騒がしいほどである。

だがしかしそんな騒がしさとは反する静けさのある部屋が一室
部屋の真ん中には回路スラブに横たわるスプリンガーがいた、彼は生命維持装置に繋がれながら尚も目覚めることはなくあの人々を惹き付けるマトリクスブルーの光を点灯させることはなく灰色のままだった
9ヶ月が経過しようとする中、みんなが毎日スプリンガーの見舞いに来ては話をしていた、リアンも同じで彼の新品同然のボディを毎日ワックスをかけてやるほど丁寧に磨いては話しかけた。
今日はローターストームが近くの星まで遊びに連れていってくれた
今日はガズルがザ・ジャッジに新しく貰った弾を使って壁に穴を開けた
今日はパイロが声を元の声帯に戻したみたいでプライマス症候群の快調がみえた
今日はアイアンフィストの大脳検知弾をようやく取る事ができた
今日はツインツイストがドリルモードになって走り回ったせいで轢かれかけた
今日はトップスピンが私の部屋の家具の設計図を書いてくれた(地図製作者なのに)
今日はロードバスターがトップスピンの図を元に家具を作ってくれた
毎日毎日飽きることがないほど話すことがあるのは今のレッカーズが今までにないほど明るく活気付いているからだろう、あの頃とは違うんだから早く起きてとリアンはいっても目覚める予兆は何も無い。

仲間が死ぬのが怖くて堪らなかった、原因は明白だと言われているゼロ・ポイントと呼ばれるもののせいだった、リアンは彼ら専門の医者では無いためスプリンガーをみたカプットに聞いたところそれは神経回路に生じる限りなく小さな空隙を指す言葉だった、そのとても小さな空隙は全身を駆け巡るスパークの流れを止めてしまうのだという
どうにかならないものかとリアンはスプリンガーの寝顔を見つめながらつい癖になった彼女の指は口元に移動していく

「まだ吸いてぇのか」
「…もう辞めたよ」

20年近く愛煙してしまった故に自然と指が悩みや苛立ちを覚えると動いてしまう、突如現れたインパクターに目を丸くしたリアンは返事をしつつ目覚めぬスプリンガーのことを心配した面持ちでみつめた

「こうして3人なのは懐かしく感じるな」

珍しく彼が昔話をしようとすることに驚きつつもリアンは見上げた、G-9が終わったといえどリアンは多忙を極めた、未許可武器の作成および使用、自身の命を危険に晒す行為、さらにはエクイタスのデータを持ち帰らずに破壊したという彼女の報告にプロールは思考回路を焼き切ってしまいそうになった、おかげで彼女は数ヶ月キミアで反省文を書く羽目になり毎日通信機でスプリンガーの様子を聞くことにしていた
彼女が解放されたのはここ最近でようやくデブリにゆったりと腰を下ろし羽を伸ばしていたところであった、それゆえこうしてインパクターとゆっくり話すのは久方ぶりのことである

「そうだね、あの頃はずっと3人でいた気がする」
「2人でもよく居ただろ」
「うん、あなたと1番2人きりだったね、よく連れ出してくれて嬉しかったよ」

例えそれが数十分だったとしても気分転換に彼はいつだってリアンの好きそうなものがあれば見せに連れてってやった、よくオルトモードのインパクターに乗せられて様々な星の中を走り回ったなと思い出しては懐かしさに恋しくなってしまう

「また…連れ出してくれる?」

彼女の言葉にインパクターはお前がいきたいなら何処までも。と答えた
薄暗い部屋で長い沈黙が続く、リアンはやることを終えた為そろそろ戻ろうかと椅子から降りようとした時インパクターは口に出した

「言いたいことがあるって言ってたな」

それはG-9の任務に行く前、2人がようやく再会した時にリアンから伝えた言葉だった
どうして今ここでとリアンは驚き目を逸らし椅子から降りようとするためインパクターは逃げることを許さぬように彼女を胸あたりまで掴み上げて問いかけた、レモンのような鮮やかな2つのオプティックが彼女を捉えて離さず捕まえられた本人は百面相のごとく表情を変えていた

「いま…ここで言わなきゃダメなの?」
「逃げる気だろ」

リアンはウッ…と思った、それもそうだデブリに帰還してから約1ヶ月近く経つがリアンはインパクターを避け続けた、周りの仲間たちはどうなった?と毎日聞いてくるがリアンは勇気が出ずに何も無いと言い続けたがどうやらそれももう限界のようだ
ちらりと回路スラブに横たわるスプリンガーをみつめてはダメだとリアンは判断する、この場所では言えないがきっとインパクターは何処ならいい?というだろう

「スプリンガーもまだ昏睡状態だし、私もまだキミアに提出しなきゃダメな物とかあるし…ほら、その、今はまだいいかなぁって」
「『無事に帰ってきたら…言いたいことがあるの』」

あの日の音声を再生したインパクターに意地悪過ぎるとリアンは泣きそうな面持ちになる、インパクターは意地悪だとリアンは何度も思ったことかと考えたあと冷静になって考えれば自分なんて…と彼女は自分を貶していく

「好きだ」

そんなリアンの思いを無視してインパクターは先に告げた、真剣な瞳でリアンだけを捉えて椅子にもう一度置いてやりゆっくりと話し始めた

「ずっとあの中で考えていた…」

初めて出会った頃、まだ年端もいかない子供だったリアン
人間なんてどうしていいのか分からないが助けた以上は後始末までしなきゃならないというのにキミアに所属するわ、挙句の果てに会う度に嬉しそうにこちらに寄ってくる姿ははじめこそペットのそれのようだった。
けれどそれに絆されたのも自分でレッカーズに来てみるか?と提案したのも自分、隣に居る時だけ戦場の憎悪も怒りも吐き気も全てリブートされたようだと気付いた時には多分これは愛だと気付いた
けれど所詮種族が違えば寿命も違う、リアンがこちらに向ける視線もそのうち変わるかもしれないと思えばこの関係は崩したくなどない…ずっと2人笑いあっていたかった

「お前を置いていったことを後悔してる」

陽だまりのように笑うお前の最後の表情を覚えている、あんなに綺麗だった瞳が赤く腫れて涙という水を零して行かないでと叫んでいた
ゼンティウムの船の中に閉じ込めるようにロードバスターに命じたのは顔を見れなかったからで万が一合わせたら俺はお前を連れて逃げ出しただろう。ゲッサメイン宇宙基地に到着して直ぐにメンバーと離れコミュニキューブで連絡を取り最高司令部に連絡をした間もリアンのことだけが心残りだった

「ずっとこうして平和ならいいのにね」

あぁその通りだ、腕の中で笑うお前に愛していると何度も言いたかった平和が訪れることなど自分の人生を思い返して無理だと思うのに不思議とリアンがいれば出来る気がした、それほどお前は俺を変えてくれた
最高司令部が用意した大袈裟なほどの2ダースのガーディアン・ドロイドの前で銛を外す頃、笑顔が浮かんだ、今すぐこいつらを跳ね除けて連れていけばよかった追われたとしてもどうにかなるような気がした、そんなことは許されるわけが無いと理解していた
暗い監房でも、日々の労働も、拷問の様な折檻も、全て慣れていたがスパークに残る感情だけは慣れなかった、何処までも思考回路が支配する、他に好きなやつが出来てそいつと共になったかだとかレッカーズを抜けたかとか生きているのか…1番はそこだ

「お前が生きてるとわかった時、全てどうでもいいくらい安心した」

これ以上望まなくてもいいとわかるがお前のあの言葉を聞いてどうしようもなく聞きたかった、どんな事を俺に言ってくれるんだ…

インパクターに頬を撫でられリアンの顔は沸騰しそうな程に赤くなりその小麦色の肌が濃くなっていた、首も耳も指先にまで熱が広がる
彼がここまで情熱的に真っ直ぐ言うと思わなかったからである、リアンの言葉を催促するように彼は指に髪を絡めるように撫でて優しくその瞳を見つめた

「わ…わたし、その」

震える声と視界、好きだとあと一言いうだけなのだ…けれど出ない、あぁどうしようかとリアンは自分の臆病さが嫌になってしまう

「す…」
「部屋から出た方がいいか?」
「スプリンガー!?」

突然聞こえたのはリアンの言葉ではなく2人の下で回路スラブに横たわるスプリンガーだった、彼は突如起き上がり自身に繋がっていたケーブルを抜いては重苦しく機体を起き上がらせてどれくらい寝ていた?と問いかける、インパクターは9ヶ月だと答えると休みすぎたな。と呟いた
みんなに挨拶をすると言って薄暗い部屋から出ていくスプリンガーは去り際に2人をみて笑った

「俺のいない所にしてくれよ、兄妹の告白で目覚めるなんて嫌だからな」
「ならとっとと部屋を出ろよ」
「いい、ここに居ていいから、そんなすぐ動いたら危ない!」

追いかけようとするリアンをインパクターは掴み、顔を寄せた、意地悪く笑った彼はいう

「言いたいことはねぇのか」

リアンはその言葉に観念したように呟いた

「…おかえり、インパクター」

そういってキスをされてしまえばインパクターは答えは違うがまぁいいかと次は自分から小さな唇に口付けた。

-END-


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