いつの間にかロストライトのクルーは総勢四百名程になっていた
元のクルーが凡そ二百人、そこにナイツの面々やディセプティコンの罪人やらなんだかんだと詰め込んだ結果が今である
アイリスは安定した仕事に慣れてきた現在内勤への目標は薄れておりその旨を本部にも伝えていた、何故ならロストライト…彼らと居ることが心地よかったからだ、しかし時折どうしても居心地が悪くなる時がある
「アイリス様今日もとても愛らしい、あなたをひと目見れただけで私は」
「毎日毎日飽きずにくだらない戯言を言うのが好きだな、それをメガトロンに吐けばどうだ?ついでに抱いてもらえるかもしれんぞ」
「黙れオーバーロード、アイリス様と私の愛瀬の邪魔をするな貴様の顔を見ているだけで八つ裂きにしてやりたくなる」
そもそもこんなヤツらを乗せるなといわれていた過去を懐かしむ、現在慣れたアイリスも時折彼らを追放したくなるほど犬猿の仲代表のターンとオーバーロードに挟まれながら彼女はカップラーメンを片手にデータパッドを眺めた、今月も順調でありサイバートロン星の方も安定数値を出しているようで少し性格が気難しい相棒にほっと胸を撫で下ろす
そして食事を終えては健康診断の為に医務室に足を運べば急患を相手にしているのか忙しない様子であった
「また後できましょうか?」
「大丈夫だ、それよりも今日は仕事はまだか」
「おい待ってくれよ先生、俺のケツにミスファイアの野郎が撃ってきた弾丸がまだ残ってるだろ」
「スキッズ少し黙れ今話しているだろう、というかもう終わってるから帰れ」
「ええっとスキッズ大丈夫ですか?仕事は診断終わってから行こうかと思いまして」
「大丈夫じゃねぇよ…ったく、それじゃあまた」
「もう来るなよ…にしてもアイリスまたカップラーメンを食っていたな」
医務室に到着しいつも通りの席に座って直ぐに忙しなく患者の相手をするファルマと会話をするアイリスは低くなる彼の声に思わず姿勢を正して「えーどうですかね?」と分かりやすい誤魔化し方をした
もとより彼女の健康管理には人一倍うるさいファルマが騒がしくがなり立てるのを目を閉じて聞いていれば奥の集中治療室から戻ってきた二人組がファルマに呆れたように声をかける
「アイリスに説教しますけどファルマ、貴方もエナジョンスティックだけでしょう」
「たまには普通の食事も取った方がいいのはお互い様だ、ここは患者数も以前より少ないのだからゆっくり出来るだろう」
「お前達はのんびり食いすぎなんだ、特にアンブロンお前はそもそも食いすぎだぞ、それでなくてもこの船は頭のおかしい奴らばかりで直ぐに頭ごとぶっぱなす奴が来てたんじゃ休めるわけもないだろうに」
ブツブツも繰り返すファルマにアイリスを含めて三人は思わず苦い顔をして笑った
ファルマ、ファーストエイド、アンブロン、彼らはデルファイやルナ1での騒動後は随分と荒れたもののあの日から数年経過すればまるで昔のように軽口を叩きあえるほどの関係には戻っていた、許しあえないことも多くあるとは理解しておりまだ完全な友人や仕事仲間とはいえないのかもしれないが互いを心の底では信頼しているのは患者を相手する姿をみて嫌という程感じられたアイリスは笑みを浮かべ検査を受けた
「アイリスウエストが少し…」
「体重も増加が」
「胸は変わらないのにな」
アンブロン、ファーストエイド、ファルマは高々こんな小さな自分相手に3人がかりで検査を同時にしなくてもいいじゃないかとアイリスは感じていたがふとそのように言われてしまえば堪らず彼らに「酷いですよ!」と声を荒らげた、彼らはそんな彼女に笑うもウェストに至っては0.7mmしか変わらないという結果にますます頬を膨らませ三人に文句を告げていれば医務室のドアがまた開いた
「えらく楽しそうな声だな」
「そんなにいい結果がでたのか?」
「ラチェット先生!サンダークラッシュさん!聞いてくださいよ三人ってば酷くって」
入ってきた二人に早速アイリスは飛び付くように伝えれば彼らはファーストエイドに手渡されたデータを見ては絶句したように口元を抑えるものでやはり何か危険な数値が出ているのかと覗き込むも医者では無い彼女からしてみれば見慣れない言葉と数値が並んでおり小首を傾げてしまう
「アイリスこれは」
「…な、なんですか」
「何も変わりないな」
「みんなしてやっぱり酷くないですか?」
全くもうこの医者たちは患者をなんだと思っているんだと口先ではいいつつも彼らの優しくおちゃめなところだと感じて呆れてしまう、そうして集まった彼らからの身体検査に問題がなければそのまま部屋を出て向かうは自室という名の職場であった
「アイリス」
「パーシー」
「今から仕事を?」
「うん、パーシーは何かまた作ってるの?」
丁度部屋に入ろうとした途端に隣の部屋からでてきたパーセプターにアイリスは羽を止めて嬉しそうに近付き肩に乗った、彼の手には見慣れない武器がまたありこれは何かと問いかけるもアイリスにしてみれば少々難しい説明が始まってしまい彼の楽しそうなその姿に思わず笑みが溢れてしまうもパーセプターはふと言葉を止め真横に居座る彼女を見つめた
「すまない、つまらない話だったな」
「そんなことないよ、パーシーのお話だったら私なんだって好きだもの」
「ありがとう…とどうやら今日の取引先が来たらしい」
以前からほかの者と話す時にもつい自分の専門知識に熱がはいり嫌がられたことを思い出したパーセプターは反省するもののアイリスは彼が楽しそうに話をしてくれることが好きであり、そこから得た知識は時に役立つことを知っているため嫌いではないと告げる頃、ちょうど白い見慣れた機体が現れ彼女はまた嬉しそうに微笑んだ
「ウィング、いらっしゃい」
「先生とお話中邪魔してすまないね」
「いや、彼女とは隣人だからいつでも話せるので問題ない」
「私も彼女とは深い仲だからいつでも構わないんだが"仕事の手伝い"だから申し訳ないな」
「あの…二人とも何か嫌なことあったの?」
「「いいや、なにも?」」
ウィングが現れてすぐさまアイリスに向けていた優しい笑みを消したパーセプターは隣人故にいつでも大丈夫だと告げたことにウィングもまた言い返し険悪なムードが流れていることを気にしたアイリスは好きな二人が実は喧嘩をしているのかと不安になってしまうも二人ともそれを指摘されては直ぐに彼女に向けて優しい笑みを浮かべて否定した
ほっと胸を撫で下ろせばパーセプターの肩に座る彼女はウィングの手の中に抱かれて「行こうか」といわれ頷いたアイリスはパーセプターにまたゆっくりね。と告げて部屋に入った
「んっ♡あっ…ウィング♡今日ッ…はげしっ、ぃ♡」
「すまないね、他の奴と仲のいい君を見て嫉妬したのかもしれない」
「?っ…ウィ、ングとが♡いち、ばん…なか、よしっぁ♡だよっ」
「…そうだといいんだが」
あくまでクルーとしてだろうと呆れるウィングだがそれでもその言葉に心地良さを感じて彼女の頬に口付け最奥で果て彼女の髪を撫で愛おしそうにみつめたもう二度と消えぬ彼女以上に欲するものなど何も無いと感じて…
ウィングとの仕事を終えてアイリスは一人船内を散歩していれば見慣れたヒトをみつけ思わず子供のように無邪気に飛びついてしまう
「ダイアトラス様」
「アイリスか、突然飛びつかれると驚くじゃないか、仕事終わりか?」
「はい、ダイアトラス様はどちらへ?」
「サイクロナスと書庫で懐かしい本をみつけて盛り上がってその帰りだ」
その言葉に確か彼らはかつて同じ時代に一緒に活動していたのだと思い出してはちんけな言葉になるやもしれないが彼らは確かに親友だったのだと思い出す、そう考えてはこの船で様々な人達を救いもう一度会うことが出来たことはいい事だと感じられた、ダイアトラスと談笑を続けようとすればアイリスの通信機が音を奏でた、何事かと思えばブラスターからアイリス宛の荷物が本部から来ているといわれ彼女は目を輝かせて彼の手を引き共に向かった
「一体何が来たんだ?」
「ふふふ、船長達もクルーのみんなもいますね?」
アイリスは箱を見た途端にブラスターに頼んで暇なメンバーはメインデッキに集まるように呼び出しをさせた、当然クルーの面々は大半が予定は無い上にアイリスには好意的であるため何事かと集まれば彼女はいそいそと本部から届いたダンボール箱の中から見慣れぬ黒い衣類を取りだした
「いよいよ私も皆さんのおかげでスーツデビューです」
ジャジャーンと効果音をつけて声高々に話をする彼女にクルーたちの表情はいまいちであったが隣に立つダイアトラスはそれは孫娘が就職に成功したかのように嬉しそうに小さく拍手をした
しかしアイリスは何故こんなにも祝われないのかと思いきや先頭にいたロディマスが彼女の手の中のものを睨みつけ指さして告げた
「なんで黒と紫なんだよ!それじゃあコンズカラーじゃねぇか」
「そうだ、せめて赤青にしろ」
ロストライトのクルーは大半がオートボットであるためかそんなくだらない意見を言われてしまいアイリスは唖然としてしまう、そのうち同じく集まっていたディセプティコンの面々があのカラーが似合ってるしアイリスが所属するなら普通に悪魔なんだからこちら(ディセプティコン)だろうと告げる彼らを他所にロディマスは自身の横に静かに佇むもう一人の船長をみた
「メガトロンお前の意見聞こうじゃねぇの」
「なぜ俺が……」
「素直にいえよ」
「……アイリスには黒が似合う」
さぁたたかいだ! といわんばかりに乱闘が始まりアイリスは全くなんてことだと頭を抱えつつその隙に新品のスーツに身を包んでダイアトラスに披露すれば彼は嬉しそうに彼女の頭を撫でた
「とても似合っているぞ」
「ありがとうございますダイアトラス様」
「…強いて言うなら紺と黄でもいいと思うがな」
あなたまでそんなことを言うのかとアイリスはガクッと項垂れつつもスーツの色の規定は特にないためカタログを見て見ます…と告げた
騒動が収まる様子は無いため騒がしい現場からこっそりと抜け出してその場で話せなかった愛しき隣人と自分の騎士に感想を聞こうと思いながら部屋を後にしつつ静かな廊下でこの船のみんなに深い感謝をした、ずっとこの旅が続きますように…と祈りながら
-END-