この地球にトランスフォーマーが現れ、人類とオートボットが手を組みそして様々な経緯の上でディセプティコンとの戦争は終結した
和平の象徴が何か必要なのではないかと考える中でオプティマスがいった

私にいい考えがある

それはいわゆる自分たちとサムのような、細かく言えばサムとバンブルビーのような関係性であり友情でも愛情でもなんでもいいのだという
ただ他種族同士互いを知れば互いの理にもなるだろうという考えなのだという、確かに彼らトランスフォーマーにもパートナー制度があった正確にいえば彼らに性別などは無いので地球の法律上とは異なる場合もあるが簡単にいえばそんなものだ
人間とトランスフォーマーを繋ぐためのパートナーシップを聞いたNESTのレノックスは頭を捻って言葉を出した

「結婚ってことか?」

その言葉を聞いてその会議に参加していた彼らは即座に検索をした、簡単に言えばそういうものだと全員が何となく理解をしたがディセプティコンのリーダーは「そんなもの無意味だ」と吐き捨てた
そんな事は予想通りでオプティマスは怯むことは無かった


まぁそんなこんなという話の結果両軍のリーダーは互いにパートナーを付けることにした
オプティマスはNESTの兵士であるアイリスという女性を選んだ

「おはようオプティマス」

小さく欠伸をしながらドアを開けたその女性に名を呼ばれた彼は顔を向ける、少しだけ扱い慣れた小さな鉄の塊…もといフライパンの上には本日も少し焦げたスクランブルエッグとウインナー、タイミングよく音を立てたトースターから焼きたてのパンが飛び出す
テーブルの上に置いてある少しだけシワのついた新聞紙を片手に椅子に座るアイリスの前には食材が並んだ

「いただきます」

そういって新聞を片手に朝食を摂る彼女をオプティマスは興味と好奇心と好意の目で見つめた
パートナーシップの導入の上で相手を選ぶ権利は当然生まれた、だがしかしそれは軍内の人間である為にサムやカーリー等自分の見知った外部の人間ではダメだと言われた、万が一があった際に動けなかったり軍事機密が漏れやすいためだろう
メガトロンは誰でもいいといった結果トランスフォーマーの研究者でもある科学者をパートナーに、そしてオプティマスはレノックスに声をかけた軍内の人間で同意があればいいのかと。彼は不思議な顔をした後にあぁもちろん。といったためにオプティマスは直談判に踏み込んだ

「パートナーシップの導入で私?」
「あぁキミさえ良ければの話だが、仮にキミにパートナーがいたり…もし私が嫌だったりするのならば断ってくれても」
「すごく楽しそうね、いいわよどうせ私みたいな女にはパートナーなんて居ないし丁度いい」

二つ返事で了承をしたアイリスは嬉しそうに書類にサインをするも誓約書をしっかり読んでいないのだろうか?などと不安感を覚えた

「パートナーってことは24時間一緒に過ごすわけでしょ、あなたサイズの家ってあるのかしら」
「あぁその事については…」

いつも通りの音と別で強い光が現れて眩しさに目を閉じたあとに目を開ければそこには成人男性よりも大きいものの人間と大差ない大きさになったオプティマスがいた
これにはアイリスも口を大きく開けたあと彼の体を一頻り興奮気味に撫で回して喜んだ
そうして2人の部屋が基地内に宛てがわれ、まるで新婚生活が始まるかのように2人の生活が始まったものの彼女は想像したよりもずっと怠惰な生活をしていた、帰宅してすぐに服も着替えずにベッドに行ったり休みの前の夜は浴びるように酒を飲んでは潰れてソファに寝たり、服は床に脱ぎ捨て食事は基本はインスタントでゴミはそのまま
そんな女をパートナーに選んだオプティマスを聞いた時に彼女を知る仲間達が「本当にアイリスでいいのか?」と聞くものだから不思議でたまらなかったが納得いくものでもあった

「本当オプティマスと"結婚"してよかったよ」
「私もきみがパートナーであることは喜ばしいがもう少し生活習慣を整える方がいいのではないか」
「整ってるでしょう?朝は7時に起きて夜は23時に寝てるわ」
「残念だアイリス、現在時刻はAM08:21であり昨晩寝た時刻はAM01:11だ」
「あらレディのプライバシーを覗き見るだなんて」
「そ、それは」

彼女が眉間に皺を寄せて睨みつけるものだから思わずたじろいでしまう、確かにそう言われてしまうとそうなのだが…と口を開く前に彼女の表情はあっという間に柔らかくなって楽しそうに笑う

「からかってごめんなさい、だってあまりにもオプティマスの反応が面白いんだもの」

まるでイタズラをした子供のように彼女は笑うがオプティマスからすればスパークが縮みそうな程であった、異種族とはいえ好意を抱いている相手に嫌われたくなどないものだ
それに彼女が覗き見る…とはいうがこの家には生憎とベッドはひとつしかない、キングサイズふたつ分程の巨大なベッドは2人が安心して寝られるサイズであり2人してそのベッドで横になった時刻を把握していた

「あまりからかわないでくれ、スパークに悪い」
「はぁい、それよりそろそろ出勤時刻だし用意するね今日も美味しいご飯ありがとうダーリン」

立ち上がったアイリスは向かいの席に座っていたオプティマスの横を通る際にその金属の頬に口付けた、キスという概念がない彼らからしてみれば不思議なことではあるもののどうも嫌いでは無かった
準備を進める彼女を横目に片付けをして終われば部屋の前に出てビークルモードで待機する、約5分後軍服に身を包んだ彼女が現れて「毎日体重計に乗る気分」だなんていい乗り込むものだから別に車だと言うのに変わったことを言うのだな。と考えの意図を読めずに走り出して彼女の所属部署まで送り届けて自身もいつも通りのトランスフォーマーたちの集う部屋に行く
地球での過ごし方や軍での手伝いにセイバートロン星に帰るための用意など様々な事が仕事にあった、仕事をしていれば時刻はPM12:00となりその時間になればオプティマスはソワソワし始めるが仲間たちは知っている為初めこそからかいはしたがもう今はしなくなった

「オプティマスいる?」
「あぁアイリスのダーリンなら向こうさ」
「あらありがとうジャズ、あなたも早くダーリン作って紹介してね」

入口付近でそんな会話をしているのを聴覚回路を拡げて聞いていればあっという間に自身の足元にお待ちのパートナーが現れた
慣れた手つきで彼女の傍に手を近付ければまるで小動物のように手の上に乗って本来のオプティマスと同じ高さの席に案内される

「味はどうだろう」
「うん、美味しいよ、オプティマスが人間なら料理人になれるかも」

まるでハムスターのようにサーモンとエビのホットサンドを口いっぱいに頬張っている彼女をそれはもう愛おしげに彼はみつめた
このパートナーシップがはじまって彼はいい意味で変わったことを部下たちは喜んだ、気を張りつめ責任感だらけの彼を癒せるのは今ではもうアイリスだけかもしれないのだから
そうして楽しい休憩時間を終えればアイリスはまた戻ってしまう、その時のオプティマスの顔と言えばまるで置いてけぼりをされた犬のようにも見えなくはないほどだった、そして午後の仕事中やってきた今回の件の主導者でもあるレノックスが別の任務の話をし終えたあとオプティマスにいった

「そんなに好きなら本当に結婚したらいいじゃないか、今は契約上のものだからアイツも他にいい男が出来たらそっちに行くかもしれない」

実際彼女の戸籍は決してオプティマスと一緒になることは無いのだ
一方的な契約書は破棄されればそこまでのものでもあった、ふと"結婚"という言葉をあらためて調べてながら彼は渋い顔を示したのはどういう意味なのかレノックスは聞くことが出来ずに同じく難しい顔をした

「どうしたのオプティマス難しい顔して」

全くどうしたものかとアイリスは不思議な顔を浮べる自分のパートナーを見てもどうやら口を聞く気は無いらしい、怒っているというわけでもなければ悲しんでいるというのはもっと無い
またまたメガトロンと揉めたのだろうかと思いながらも夕飯を食べながら向かいに座る難しい顔をする愛しのパートナーを困った顔をして眺めていた

「アイリス」

ふと彼の言葉に花を咲かせたように笑顔で答えたアイリスだがやはり彼はそれ以上は言わずにまたすぐに視線を外してしまう
いよいよパートナー契約も終わりかと思ったが彼女も自身の怠惰な性格をよく理解していた、過去にも数度それを理由に捨てられたことはあったので今更の事だった、だがしかしオプティマスを失うのは今までにないほどに悲しい気持ちにもなっている
できることならば彼に最後を看取って欲しいと傲慢ながら思うのだから、夕飯を終えて互いのシャワータイムも終えて(オプティマスの洗車の手伝いもした)そして身綺麗な2人は少しだけ狭いソファに座って映画を見ていた
在り来り王道なラブストーリーに感動するアイリスと反対にオプティマスはまだ難しい顔をしているものだからどうしたものかと思いつつやはりいい答えが出ないので何も言わずに映像を眺めた
映画のエンドロールが流れてもう日付も変わったその時歯を磨いてもう寝ようと声を出してソファから立ち上がった彼女の手を掴んだのは当然オプティマスだった

「どうしたの?」

声は僅かに震えていた、もしかすると今日が契約終了日なのかと思ったからだ
アイリスはオプティマスが好きだ、彼といると自然でいられて新しい事にも頻繁に出会える、人間と異なる故に迫害や差別を受けようとも彼とならその道を進むのも悪くないと思えていた
けれど実際相手はどうなのだろうか、家政婦のように過ごしてだらしないパートナーを取って苦労ばかり書けているのではないかと、悪い考えをすればするだけ頭の中は夜の闇と共に落ちていく

「私と結婚してほしい」

真っ直ぐな彼の美しい青いオプティックにみつめられそういわれれば思わず時が止まってしまう

「あぁいや、その、人間と私達では難しいのはわかっている寿命も生き方も違うし、けれど私はキミと歩みたい・・・いや、出来ることならずっと共に過ごし最後にキミを看取りたい」

「誰にも渡したくないんだ」

苦しそうな切実そうな彼の声が小さく部屋に響いた、エンドロールを終えて番組は深夜の通販に移行する
テレビの中では大きなダイヤモンドのついた指輪が映し出されて出演者の女性がそれを左手の薬指に着けては大喜びしていた、何かしらの反応をくれるであろうと考えていた彼女があまりにも静かなものだからオプティマスは少しの不安を覚えた

「紙じゃなくて口約束なのにいいの?」

ようやくでた彼女の言葉にハッとしてしまう

「もしかしたら私がほかの人好きになっても口約束だからって逃げられるかもしれないのよ?」
「私は普通の人間だから嘘だってつくし、隠そうとするわよ」
「何も私たちを繋ぐものなんてないのに、それでもオプティマスは大丈夫なの?」

彼女はそう言いながらもオプティマスは口約束だとしても絶対に破らないことを知っていた
ただ自分の不満が言葉に出ただけなのだ、種族も違えば2人を繋ぐものなど何も無い、万が一彼がこの星を去ればそれでこの関係は終わりになるのだ

「キミを縛るものはある、私自身だ」
「え、あっ?これ」
「地球人の大半は結婚する際に繋がりを見せるものを身につけると知った、これを肌身離さずにつけていてほしい」
「・・・ねぇ、これいつ測ったの?」
「映画を見ている時にサイズ調整した」

銀色の輪っかには赤と青の小さな塗装があった、それは紛れもなく彼のパーツの一種だろう
その小さなリングがアイリスの左薬指にはめられオプティマスは気難しいというよりも酷く弱々しく自信のなさそうな顔をしていたようにみえた

「キミの伴侶になりたい」

その言葉に普段からお喋りだと言われているはずの彼女は声も出せずにその温もりのある金属の体に抱きついて唇にキスを送った
そして翌日レノックスの前には1枚の契約書が返却され、代わりに1枚の紙が出された

「おいおい、お前たちもか」

なんて彼は呟きながら婚姻届の証人者枠に嬉しそうにサインをするのだった。

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