カルナ
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「月が、綺麗だな」
思わず目を丸めた、日本人にそれを言うだなんて彼は英霊だ様々な知識を得た上でそれをいうのか、はたまたその通りの言葉なのか
それでもカルデアから見えるのはいつも通りの吹雪、雪ばかりのこの場所で月など綺麗に見れるわけもない、暗い夜間の廊下でそういった彼の金色の甲冑は外の明かりに光った
私、死んでもいいわ
なんて言えたならば良かった
その言葉通りに受け取った彼女は小さく笑う
「えぇ、そうね、月は綺麗だわ」
返事をした彼女の腕を掴みカルナは彼女に口付ける、深く求めて溶け込むように、まるで火に晒される氷のように溶けそうな優しさ
薄らと開いた先で見えた彼の顔はあまりにも優しく、あまりにも切なかった
最愛の人を残して死んでいったのだ、悲しくないわけがないとわかっていた
彼の背中に腕を回した、永遠のようなこの再会の時間が心地よくて堪らない
「…よかった」
「それは、どういう意味で?」
澪のマスタールームの中でカルナは幸せそうに(とはいっても顔はさほど変わらないが)していた
カルナの側で座る彼女の手を何度も繋ぎ撫でて絡める、まるで幼い子が初めてなにかに触れるかのような好奇心が混ざったように
嬉しそうに、幸せそうに、懐かしむように、求めてはその白い肌がスルスルと指を撫でる
唇が触れてそこを確認しては、生きていることに安心しているかのような安堵を浮かべる
「居てくれた」
言葉が足りないとはよくいう、とは思ってしまうが自分がそれだけ彼をわかってやれているのかとも思える
とはいえ、彼は今英霊、サーヴァントであり、澪はマスターの1人でありカルナのマスターではない
おまけに残念ながら、恋敵とも言える、そして宿敵であるアルジュナのマスターである
澪の前世(何度目かは知らないマハーバーラタ)ではカルナの妻でありアルジュナを殺した女であった
そんな中を記憶が無いわけでもない中また2度目の人生ともいえようものを3人ともが経験しているのだから、奇妙な話もあるものだ
「カルナ??えっと、その…」
「なんだ?」
こんなに甘えたがりな男だったのかと内心驚いた、今の彼は腰に抱きついては、子供のように接してくる
スキンシップも激しい彼にいままで本当に何がったのかと問い詰めたくもなるが、全て聞かせられそうな気がしなくもない
彼の柔らかな白い髪に触れたが、そこで気づく……
「これ、柔らかいのね」
まるで例えるなら雲のような柔らかさ、ふわふわと綿あめのように柔らかく心地いい彼の装備品ともいえようピンクのモノ
それはずっと自身の指先から刺激しては心地よい柔らかさに手のひらで遊ぶ
「あぁ、気に入ったか?」
「えぇ、こんなのあったら仕事してる時にずっと触ってそうだわ」
「ならばこれは、澪に」
そう言って渡してくるカルナに思わずそれを押し当てる、なんといっても施しの英雄
そんなことはお手の物といおう、だがしかしそんな彼から大事?なモノを貰えるわけもなく澪はカルナに押し当てる
あぁ勘弁してくださいとばかしに澪が押し、どうにか彼女に受け取ってもらおうと押すカルナ、殺風景なモノのない部屋のベッドの上で二人して押し合いへしあい
ピンクに塗れる白と黒は小さく笑う
「もうカルナってぁ!」
「っ澪」
ベッドから勢いよく頭から落ちそうになる澪をすぐ様キャッチしたカルナは少し焦ったような面構えで、澪は静かに彼を見て、二人して地面に座り重なり合う
あぁ、なんと幸福な時間なのか
どうしてあの時私は、俺は、と思う
だがそれは運命であり、こうして再会できたのもまた一つの運命なのだと思える
離れた唇同士が優しいリップ音を奏でた、倒れ込むようにカルナの肩に顎を置いて、彼の背中に腕を力なく回せば遠慮なしに男らしいが細い腕が回ってくる
力がこもって抱きしめられて澪はいう
「ねぇ、カルナ」
「?」
「私、死んでもいいわ」
貴方となら、今度こそ
なんて思いながらそっと瞳を閉じた、愛おしい人の腕で眠る日はなんとも幸せな夢を見よう事か…
カルナは澪の肩に顔を同じように埋める
「あぁ、よかった」
なんて幸せそうに呟きながら
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