アルジュナ







薄っぺらな忠誠心も、道化師じみた笑顔も、つまらない主従に縛られるのも、実につまらぬ事だとため息をついた

アルジュナ

ココ最近契約を結んだサーヴァントはあまりにも人に対して壁を作っているのが見てわかった
彼の過去を知らないわけでもなく、彼の周りが彼をこうまでしたことくらいわかっていた




「孤独は寂しいものよ」


彼の柔らかな黒い髪を撫でた
フワフワとしたまるで綿菓子とでもいおうか、雲とでもいうか柔らかなその髪は手に触れては優しく絡めては自分の膝の上に頭を載せさせたサーヴァントにいった



「孤独を知った口ぶりですね」


「私は、普通の人間じゃないもの、孤独と生き抜いてきた」


だから知っていて当たり前よ、なんて褐色の肌の彼の肌の上に自身の手を滑らせた
冷たい手に文句も言わず彼はその手に猫が甘えるかのように頬を擦り寄せて目を細める


「それでも私は孤独でいたいんです…愛されてきた、愛してきた…俺はそれでも」


「アルジュナが悪い訳じゃない、あなたは私のサーヴァントだけど自由なんだから…孤独を望めばいい、自分の道を歩めばいい私はそのための土台となるわ」


その為ならばなんだってしてみせる、そう思えるほど彼に情があるのもまた自分の過去のせいなのだろうか
孤独こそは正義となり孤独こそは幸福であり、孤独こそは寂しさへと変わる
触れていた手が頬を撫でて唇の形を縁取る、吸い込まれるような瞳につられたと言い訳をしたらいい
ほんの一瞬の戯れのようなそれにさえ魔力ははるかに力を上回り彼を侵略した
褐色の手が伸びて美しい指先が黒く長い女の髪をなでた



「あなたは私の時代も生きたのですね」

「えぇ、あなたのそばでずっと見ていたわ」


どれだけ決まった道を歩まされ、どれだけ過酷な道を作られた
決してそこからはみ出ることは許されない、決してそこから逃げ出すことは許されない
みなが作った英雄として、戦士として、アルジュナという完璧な存在を潰してはならない
だからこそ彼の重荷は増え続けて何時しか彼の心はまるで枷をつけられたように海の底に沈められる
耐え抜いて何もかもを捨てても何もかもを望まずとも構わない


「私はあの時貴方が何よりも愛おしかった」


アルジュナのそばで笑う娘が何よりの救いだった
彼をその時だけはアルジュナでなく、一人の人として見てくれたからか
あの娘の笑顔があれば例え美しい妻を手にしても、過酷な道を歩んでも、何があろうとも忘れることもなく今も黒く落ちることは無かった



「ねぇ、アルジュナ」


優しい少女のような声だった
柔らかなソプラノのピアノのように優しく、花が咲くように美しい声
髪を撫でる手つきはまるで神が人を愛でるように愛おしく
名を呼ぶだけで、心は黒から白に変わる



「孤独はやっぱり、寂しいわ…貴方がいない"私"はきっと、苦しくて耐えれないから」



あの日あの時、女神の中の個として彼に言いたかった
アルジュナという男のそばで人として、友として、何よりもそばにいてやりたかった
人の言葉の重みも無くさせて2人だけでどこかで何かを見ていたかった



「マスター、いや…澪、私も少しだけ孤独は寂しいと、貴方に再会して思えましたよ」



大きな手が触れては包む、悲しそうに笑う彼の顔はあの人変わらぬ
ただ少しの自由を望んでいるただの青年のようだった




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