アーサー





それは突然のことであった、澪がつい数ヶ月前召喚された男性であるアーサー王に命を救ってもらいその礼をしたいと告げた

「それなら私とよければ日本の東京に行きたいんだがどうかな?君と買い物やお茶がしたいんだ」

「えっあ、えぇその程度なら」

両手を取られてそれはもう全世界の女性が簡単に彼に落ちるのではと思えるほどの笑顔を向けられた、もとより拒否権などないに等しい彼の頼み事には二つ返事をするしかなく澪は驚きつつも頷けば彼は滅多に見せないような騎士のような表情ではなく少年のような笑顔で約束を取って付けて行ってしまった

「そうですか、我が王が……」

「そうなの、アルトリアとも日本ではよく出かけたけど彼とは初めてだなぁって」

「でしたらこのガウェインに澪様のプロデュースを!」

「いや、貴公の趣味は王にそぐわない、ここは私が」

「ならば間をとってこの私を」

ふと円卓の騎士たちの集うお茶会に参加しつつも澪はどうしたものかと口に出したのは間違いだったらしく、我先にと散々口を出してきたガウェイン、ランスロット、トリスタンに澪は深いため息を付けば隣に座るベディヴィエールは無くなったカップに2杯目のお茶を入れた

「申し訳ございません、彼らも浮かれているんです」

「…ベディヴィエールは王の1番近くにいたのよね」

「へ?いやそういう訳ではありませんがえっと」

「そうよ、貴方ならセンスだっていいしそうね今夜一緒に選んでほしいの」

そういった途端に全員が椅子から転げ落ちたことに澪が目を丸くしたと思いきや立ち上がりまたもや言い合いを始めた円卓の騎士たちに深いため息をついた

「ごほん!失礼します」

「こんにちはマシュ」

「はいこんにちは澪さん、お話途中失礼しますが皆さんは藤丸先輩と一緒に周回だそうです」

その言葉に体を鈍らせていた円卓の騎士たちはようやくかと体を解しつつも出ていってしまった
残されたマシュが澪をチラチラと覗くもので思わず疑問を抱きながら彼女を見つめた

「そ…その、私も今度藤丸先輩とで、デートでして、よければお洋服を、お選びしたいな…などと」

「勿論!それなら立花ちゃんも呼びましょ」

「はい!!」


こうして乙女3人のデート服選びが始まった、マシュは立花の弟であり自分のパートナーであり近頃意識を持ち始めた藤丸
そして立花はどうにもこと煩く誘ってくるという巌窟王とのデート
3人のパートナーの好みや自分たちの好みを考えつつも、出資はどこからか聞いていたダヴィンチが潔く引き受けてくれた
マシュはカジュアルかつ可愛いワンピースで年相応のカップルらしい格好に甘さを

「リツカはあいつセンス無いからなぁ…私が今度お揃いになるように買っとくからね」

「ありがとうございます先輩」

「明日には届くって言ってたし楽しみね」

その次の立花の服は相手が巌窟王なだけあり、シッククールな少し大人びた格好に髪型もいつもと違う少し巻き髪にイヤリングは大ぶりでパンツスタイルに普段はあまり履かないヒールにしようと買い物かごに入れていく

「うわぁ私似合うかなぁ」

「先輩なら似合います、スタイルもいいですしいつもと違って…素敵です」

「そうね、かの巌窟王と並ぶなら少し派手でも目立たないし」

そういっていればいつの間にか澪の服選びとなるが2人は楽しそうに話をして選び、澪は相も変わらずアーサーとか…などと思いつつ服を見つめる
いつの間にかカゴに入ったのは白地に青い花の刺繍の入ったシャツに濃い青色のロング丈のフレアスカートだった、白に金の入った高めのパンプスに黒と白のチェック模様のある小さなハンドバッグを入れ終えてようやく一息を入れる

「はぁ……なんだか自分の分なのにすごく迷った」

「それだけアーサーのこと考えてるんですって」

「私も澪さんとアーサーさんでしたら」

「そんなんじゃないわよ、これもこの間のお礼だし」

年相応の2人を嬉しく思いつつも過ごし、それから2日後
腕時計を見つめて時刻は昼過ぎ、もう時期レイシフトという名のデート時間かと思いつつもコフィンの前に待った
時代は21世紀現代の東京のデートスポットや買い物などもできる原宿だった、普段は着ない服に髪型を気にしつつも待ちわびていれば少し遅れたアーサーがやってきた

「またせてごめんよ」

「いや大丈夫」

「……」

「アーサー?」

「あまりにも綺麗だったから…驚いてしまって」

まるで息を吐くように女が欲しがる言葉を吐くものだから思わず顔を背けてしまう、職員たちに声をかけてレイシフト準備をしてもらいサーヴァントであるアーサーも召喚システムではなく共にコフィン移動となった


「人の山ね」

人理修復を終えたいま少しばかりの休息だと思いながらも東京の特に人の多い場所といえよう原宿、表参道の入口に立つ2人は外人と日本人とはいえ互いの端正な顔立ちに皆が目を向けては通り過ぎた

「そうだね…だが騎士である僕の役目として君を存分にエスコートさせてもらうよ」

「あら、プランでも考えてきたの?」

「それはこれからってことで」

「そうね」

慣れないヒールだった為か優しく腕を出してくれた彼に甘えた、さがら恋人のように歩く2人は時折テレビや雑誌関係者などに止められては写真やインタビューを受けさせられそうになりながらもアーサーはそれをやんわりと断る、それ故に相手もますます理想カップルの取材だと強くなってきたためかデートプランも潰れに潰れた

「はぁこんなに上手くいかないなんて」

「東京の人は案外気が強いのね」

「その服…」

「え?あっ汚れてるわね、さっきの人混みでなにか当たったのかなせっかく選んでもらったのに」

「なら僕が次は選んでも?」

その一言に二つ返事に答えのは間違いだったらしく、アーサーの服選びは女性の倍以上で更には気に入った服は全て彼が買っていってしまう
どこにそんな金があったのかと思いながらもカードまでも作っていたらしい彼が沢山の荷物を持ってはその度にカルデアにも送っているらしく澪はストップをかけように言葉巧みにやられ、店員もアーサーを見れば嬉しそうに顔を緩めた

「…まさか1式全部着替えさせられるなんて」

結局白地にスカート部分はブルーのストライプの入ったかわいいドレスに仕立てられた
隣にいるアーサーの服もきっちりとしたカジュアルスーツのようなものだった為かお揃いに見えなくもなく、靴も少し低いパンプスに変わり歩きやすさも変わる

「君に似合う服が沢山あったからどうしてもプレゼントしたくて」

恥ずかしそうにそう笑っていう彼が最後に用意してくれたのは中目黒の大きなビルの最上階のレストランだった
本当に女性をお姫様のように扱う彼に澪は内心むかむかとした、手馴れたようなその行為が結局礼なら誰でもよかったのかと思えてしまったからだ、澪も女で少しはアーサーに期待もしていた、だがその考えも捨てて白ワインを片手にフルコースを楽しみながら東京の街並みを見下ろした

「私なんかより立花ちゃん誘えばよかったのに」

「マスターを?あぁ彼女にはしてもしきれないね」

「なら尚更じゃない」

「…でも君がいいんだ、僕が好きだと思うのは澪ただ1人だから、そんな人とこの街を来たかったから」

「アーサー、その私でも勘違いするかもしれないから」

「してくれていい、澪だって子供じゃないんだ…男性が服を贈る意味を知ってるだろう」

最後のデザートを食べ終えてそう告げたアーサーに澪は思わず目を丸くしてみつめた、真剣なその瞳に焼かれそうになりながらも顔を背けてネオンの輝く街並みを見下ろしたがいつの間にか隣に来ていたアーサーが澪の耳元で囁いた

「君が欲しい」

その言葉に振り返れば彼は優しく微笑んでいた

「今日中に帰らなくてもいいと言われてはいるから…もし可能ならこの部屋で待ってるよ」

そういって手に握らされたホテルの小さなルームカード、それ以上告げる他なく行ってしまう背中を見つめて澪は1人カードを見つめた
勘違いをしてはいけないと思いながらもここまでされたか…と考えた、まだ残っていた白ワインを飲み干して立ち上がる、店員に会計を頼もうとしたが先に済まされたと当たり前のことを言われホテルの場所を調べればすぐ隣のこのレストランを経営しているらしい場所であった
あの王に知らしめてやろうと澪は思いながらホテルの部屋の前に立ち、ノックを2回鳴らせばドアは開いた
カルデアに帰るのは明日の昼ぐらいだと予定を立ててそっとホテルのドアを閉めた。

2人の行く末はまだ分からないまま



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