ラッキー
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女という存在はいつも男から虐げられ続けた
上に立つことを望めば蹴落とされ嘲笑われ、歯を食いしばり奴らをいつか見返してやると決めた
奴隷のような地獄の中、一族の、星のプライドは決して消さない、救世主など存在しないとわかった時、自分のその手で足で道を切り開いてきた
ジャークマターもキュウレンジャーもどうでもいい、ただ自分達の周りや家族友人全てが守れるのならば手を伸ばそうと
「っっ、どけええええ!!」
決めていた
空から聞こえた大きな女の声に釣られて顔を上げた、たまたま降り立った惑星を堪能していたキュウレンジャー御一行は思わず目を丸くした
上から降ってくるのは人型の声からして女であった翼であろうものは負傷し、煙を軽く出していた
「ちょっとちょっと!ラッキーのとこ行くじゃん!」
「えっ!うわぁまじ?」
ハミィの言葉にどうするかと考えたが束の間、衝突しそうなそれを受け止めることしか出来ず思わず手を伸ばす
勢いよく入ったそれに飛ばされて、二人して転がる、腕の中にいるのは女で傷つき気絶していた
「取り敢えず戻らなきゃ」
折角の休暇?であったのに。なんて文句を言う連中を置いて急ぎ足で船に戻った
兎も角ベッドの上に寝かせラプターの手当を受ける見ず知らずの女の服装は少し硬っ苦しく一般人らしくは見えないものだった
「……ん」
瞼を開けた瞳は紫と赤の綺麗なオッドアイであった、右から左にかけて長さの違う髪が新鮮でゆっくりと起き上がったが痛みに軽く顔を歪める
「ここは何処だ」
「ここはオリオン号です、チキュウから少し離れた場所に今はいますがあなたは?」
ハッキリとした強い声の女にラプターは同じように正確な場所を告げた
赤と紫の瞳がじっくりとみつめたのを思わずラッキーは唾を飲み込む、赤い唇から見える舌と少し尖った二本の歯、チキュウの人間には感じないそれに軽く起き上がった彼女はベッドサイドに置いていた帽子を被り直す
「私はコウモリ座出身、自警団レッドスペースの総司令兼リーダー、葵だ」
「自警団、レッドスペースってなんだ?」
思わず知らない言葉に声を出してしまえば、じっとラプターと葵と名乗った女の瞳が向けられる
もしかして変なことを聞いたかと冷や汗が背中を濡らす、日頃ラッキーだなんだと言っても今はそんなことも言える気がない
「自警団レッドスペースははるか昔から、それこそキュウレンジャーができる少し前からジャークマターやそのまた悪と戦い人々の平和を守ってきた一般人達の集団です」
「へぇ、それのリーダーってこと?」
「あぁコウモリ座ははるか昔奴らの奴隷だった、だが我が祖父が反乱を起こし私達は自警団として人を守り私たちを守ることを誓ったのだ」
「……かっこいいな!!アンタ…じゃなかった葵、俺はラッキー、俺達はキュウレンジャーだ、こっちはラプターな」
そういって葵の両手を勢いよく掴み笑顔を向ける、少しだけ気恥ずかしそうに微笑んで手を貸しながらベッドから立ち上がる
「にしてもチキュウ辺りか、少し時間が掛かってしまうな、羽の修復もこの調子では」
「うおっすごいな…コウモリ座の人間はみんなこうなのか?」
「人によるがな、私の家系は代々大きい…大きさとは強さになる、心も力も」
マントの下で見えた羽は銃弾の跡が残っており、飛ぶことは難しいことだろう、ため息をついた葵にどうしてやることも出来ない為にラッキーもその隣を歩くラプターも顔を下げた
「なに、食事をすれば回復も早くなる、そんなに困ることは無い」
「料理なら宇宙一のシェフがいますよ」
「おっ!そうだスパーダ!!」
そうと決まればと走り出したラッキーに葵は小さく笑った
二人きりになったラプターは背の高い彼女を見つめた
「彼は優しい人なんだな」
「ラッキーですか?えぇ、私達の頼れる仲間です」
「そうか…ラプター貴方もキュウレンジャーなのだろう、話を聞きたいのだが」
廊下を歩きながらラプターと話をし始め葵はキッチンの中で座りながら食事をし終え、自身の船に連絡を入れおえ仲間全員に挨拶もした、どうやら船が来るまでは2日はかかるとの事らしくその間には葵の傷も治ることだろうと全員で話をした
相部屋があまりないことからハミィかラプターの部屋だと言われたものだったが、色々と理由をつけ始めた2人に代わりラッキーの部屋に泊まる事となった
「…ラッキー、そこで寝るのは体に良くない」
「でもベッドは一つだしソファーってもブランケットあるし気にしなくていいって」
「私はコウモリだ、寝なくても大丈夫だし君こそここで寝てくれ」
「葵は女の子なんだから美容の大敵?になるからしっかりベッドで寝ろって」
そう言い始めてもう一時間となった、おやすみ。と言い始めてからのこの攻防は終わりが見えなかった
葵は諦める気も、ラッキーも折れる気もなかった
男女同じ部屋であるが誰も気にすることもない部屋の中
「わかった、ならこうしようぜ」
そういいながらやってきては布団をあけて、ベッドの中に入ってきたラッキーのシャンプーの匂いが香った、葵は目を丸くしたあと顔を赤らめたのを見てラッキーも少しだけ固まる
「やっやっぱやめとく!女の子だし」
「いや、いい…構わないんだ…ラッキーならば」
初対面じゃないか
なんて野暮なことは思わなかった、そっと寄り添われた葵の体温が直に体に伝わる
心臓が早く走るのが聴こえないかと互いに思わず思え、顔を見つめた
赤らんだ互いの頬が恥ずかしく口を開いた
「おやすみ葵」
「…あぁおやすみなさいラッキー」
少しだけ背中に回した腕にドキリと心臓を高鳴らせた
目を閉じた会ったばかりの彼女に何を思ってしまうのか、などと思いながら、けどこれは悪い気持ちではないのだと理解する
「おはようラッキー」
目を覚ました時、赤と紫の瞳が目に入る
寝起きで少し蕩けた瞳や癖のついた髪の毛、様々なものが目に入りパジャマから見える白い肌に目をそらす
「おっおおおはよう葵」
「すまないが、腕を離して欲しいんだ…力が強くて抜けなかったから」
「えっあっあぁーーわりぃ!」
「いや、いいんだ私こそ、その」
だんまりとした空気に耐えきれなくなり着替えを片手に急ぎ足で部屋を出てガルの部屋に入る
まだ寝ていたらしく、大きな音を立てて入ってきたラッキーに思わず目を向ける
「何してるガルかぁ」
「いや、あのな、そのいやぁなんもないってかはっははは」
「……さては、葵とかいう昨日の」
「ばっばーーか違うってな今日もそのあのなんていうかラッキーなことあったから嬉しくってつい」
下手な嘘をつきながら着替え始めるラッキーに思わずニヤニヤと笑う
ラッキーも男だったなぁなんて笑い始めるガルに外まで聞こえてないかと心配になりながら靴下を履く
「うわ、靴忘れた」
そう言いながらもう1度部屋に戻りドアを開ければ丁度服を着ている途中の彼女がその場に立っていた、白い背中から大きく広がる羽が美しいと思いながらも一瞬止まった思考を必死に働かせて逃げ出した
「………やっぱり、気味が悪いか」
小さく呟きながら服に袖を通しながらマントを付け帽子をかぶりみんなのいるであろうメインルームに行けばガルにからかわれるように話をしているラッキーがいた
目を合わせるようなことも無く、挙動不審な彼に何も言えなくなる、ハミィが楽しそうに話しかけてくれたのを気にそんなことも考えるのを忘れる
「昨日は変なことなかった?」
「ラッキーはそんな男じゃないから大丈夫だ」
「えーでも男の人だよ怪しくなーい?」
「私なんかよりハミィの方がきっとラッキーもいいと思うさ」
「えーないない、だってあんなにわかりやすいのにさぁマジウケルよねー」
その言葉を知らぬ振りした
その日も特に大きなことはなく戦闘を終えたばかりのラッキーたちも大した怪我がなく無事に生還した
夕食を終えその日の終り、シャワーを浴びおえ部屋に入る前にふと、ハミィの言葉が引っかかる
落ちる瞬間、死ぬかもしれないのにあの瞳が離れなかった
一目惚れなんて馬鹿らしい、自分にはすることがあるじゃないかと自己嫌悪をしながらもこの大きな感情が消えずに残っていた
助けられたから?なんて単純なのだろうと思わずため息をついた
「葵?」
「あっ、ラッキー」
「頭濡れてんじゃん、ほらほら風邪ひくし俺がいてラッキーだな!拭いてやるよ」
何も無かったように手を取られてベッドに座らされ髪の毛を乾かされる、タオル越しに触れる大きな指先
自分の一族、ほかの者達と違うと感じる、今だけは自警団ではなく、女としていていいかと思ってしまう
「…葵と会えてすげぇラッキーなのに、俺さ」
「 すげぇ……もっと、いたいなって」
背中から聞こえる声に羽が小さく動いた、もしこの羽が完全に治っていたら、船がすぐ近くなら
何も出来ないのにと思えて、髪を拭く手が止まる、小さく後ろを見れば首も耳も顔も全てが真っ赤になったラッキーがいて、絡まった瞳に熱がこもる
「私は、こんな気持ちは初めてだ」
「…おなじ?」
「…かもしれない」
「すげぇラッキー、っていうかハッピー」
小さく乾いた声がそういった、ふとみれば彼の髪も濡れていてシャワー浴びたあとじゃないかと気づく
伸ばされた足を見つめたあと上半身を少しだけ捻らせてラッキーの太ももに手を置いて見つめた、タオルの手が落ちて視線は変わらない
「…一目惚れはおかしいかもしれない」
「二人同時ならラッキーだろ」
「一緒になんていれない」
「いつでも会いに行くから」
「私は自警団のリーダーだ」
「俺はキュウレンジャー」
「……それでも、私はすきかもしれっ」
言い切る前に塞がれた唇が心地よく右手がそっとラッキーの頬を包んだ
飢えた狼のように何度も重なった唇に目を細めた、赤と紫の瞳が細められる心地良さに心が暖かくなる気分だった
「もういっちまうのか、寂しいな」
「いつでも来ていいからね」
「おう!ラッキーのことよろしくガル!」
「えっそういう関係?」
「そういう関係とは?」
「そういう関係はそういう関係ってやつ」
「葵さん、いつでも歓迎しますので是非また」
そういって送り出してくれる面々に頬を緩める、この人たちが世界を宇宙を救ってくれるのか。などと思わず思えてしまう
次にいつ会えるかもわからない相手に寂しいとは言えずに女としての時間は終わったのを少しだけ悔しく感じる、足を進めようとすれば腕が掴まれる
「葵、愛してる!どこにいたって俺達はずっと一緒だ」
「……ラッキー、あぁ…私はレッドスペースのリーダーではあるが、お前を愛するただの女でもある、私の心はいつでもお前の中にあるよ」
たった一言にいっぱいになる、小さく最後に触れ合った唇の感触が寂しくも嬉しくいつかまた会える日があればいいのにと、いや会えるだろうと自己完結しながら船の中でオリオン号を見つめた
不思議な出会いに愛を知る、まるで冒険家の気分だと小さく笑いながら羽をいっぱいに伸ばしながらまた次の惑星へと進めるのだった。
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