檀正宗











ガラス越しに見えた少女はいつか大人になっていた、少女と言うにはあまりにも表現さえ難しい歳だったか
初めて出会ったのは息子が友人として会社に連れてきていた時だった、興味もない息子という才能だけの存在
ソレが連れてきた人間はあまりにも平凡だった、それをねじ曲げたのだ、彼女は気づきもしない


「正宗さん、新しいお花気に入ってくれたようでよかった」

「あぁ相変わらず君の花の見る目は素晴らしい…こんな色のない場所が楽園のように感じられるよ」

「そんな事ありませんよ、正宗さんのおかげじゃありませんか」


そう言いながら微笑む彼女は昔と何も変わらない、小さな体でこの世の全ての敵になるとも知らずに
初めて出会ったころ、彼女はまだ中学3年でセーラー服をしっかりと着た少女だった
妻である女が気に入った小娘、日に日にやってくる度に美しく変わる彼女はまさに理想の女に思えた
ゲームによくいるヒロイン、プリンセスだと確信したのだ、真っ直ぐだった黒い髪はいつの間にか少しだけ茶色に染められ巻かれても更に女へと足を進めた


「今もあの場所が何処よりも忙しく素晴らしい花屋だと示すのは君がいるからだろう葵くん」

「でも、それでも正宗さんがあの時私に出資してくれなきゃ」

「あぁ君の両親のためだと言ったじゃないか…私の最愛の妻の親友であった夫婦なのだから」


薄い嘘を吐いては罪悪感を感じることもない、愛していなかった訳では無い、それ以上のものを見つけた迄だ
この5年間長いような短いような日々の中毎日のように顔を出してくれる彼女を欲して堪らなかった
どんな風にしてやろうかと、きっと最高のゲームになるのだとずっと考え続けていた


「私なんてお礼をしたらいいのか」


紅潮する頬も桃色の唇から見える舌も愛おしい、まるでオオカミと赤ずきんのようだと思えてしまう
小さな白いその柔肌に牙を立てて、血を啜り、泣きじゃくる女を食らうなどと


「ココを出てからも私の元へ花を届けてくれるだろう?」

「そんな簡単なことでいいのでしたら、私からお願いしたい程です」


宝生永夢が動いてきた、あぁもう外に出る時間なのかと理解する
今日のアノ娘は何をしているのか、部屋に飾られている花瓶の中の花をみつめる、まるで水晶のように透き通る無垢さを持ちながら成長を遂げた娘
その水晶を醜くも手を加えてやりたくて堪らない、美しい花を手折る花盗人のように



外の空気の心地よさなど何もわかりもしない
社長椅子に座りながら見覚えもない増えているゲームの機体を見る度に自身とよく似、成長し、歪んだあの息子という存在を思う
愛していたからこそ興味本位だったからこそ、愛おしい人を苦しめ全てを無くさせた


「あぁ葵、私は君が欲しい」


青色の音楽ゲームを撫でながら画面の奥でキャラクターが笑いかけた気がした
純粋無垢で疑いを知らない愛おしくも哀れな娘だと思えた


「……まさ、む、ねさ……」


だからこそ自身の手で変えてやろうと決めたのだ、緑色をイメージしたのか花束は彼女の上に落ちた
ここから始める、ウイルスにまた苦しみ自身を知ればいい、そして手に落ちればいい
仲間であると信じていたあの檀黎斗に裏切られたと思い悲しみに明け暮れてしまえ、その時に貪ってやる
最後の味方は結局自分しかいないのだと、昔と同じように思わせて


















あとがき
15年前にバグスターウイルスに(黎斗によって)感染させられる→都合のいい部分だけ記憶を消される(黎斗の事とか)→同じく正宗の手で数年後両親がウイルスで死亡(仮)→知らずに残された自分の家(店)が残るが到底一人ではお金が足りない→正宗登場(そこから完全に信用し続ける)
みたいな感じでした、正宗さんは学生時代の頃からずっと息子の友人であった娘を好きになるという…

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