佐藤







色気も何も無いホテルの一室中で少女と言うには少しばかり難しい娘がベットの上で寝転んでいた
隣に座る男は日本では滅多に見ることのないモデルガンとは似ても似遣わないものを並べながらそれらを手入れしていた


「信長くんそれを食べたらしっかり歯を磨くんだよ」

信長と呼ばれた娘は気だるそうに彼女の口内で形を変えるチューイングキャンディーを見せた


「佐藤さん親父みたーいわらうわ」

決して品がいいという訳ではない口調でそう言った娘に男は何一つ返事もしない、先程の言葉も男の本心ではないのを娘はよくわかっている、考えの読めない不気味な男だと思うばかりだ
とはいえ一応は自分の命の恩人であるわけで文句を言うわけでもない、部屋の中のリモコンのボタンを興味も無しに押しては画面ばかりコロコロと変わる
どこもニュース番組で国内二例目の亜人発見のことばかりだった


「あとさぁ、信長くんって呼ぶのやだっていったじゃん?」

「はいはいわかったよ夕日くん」

「そのくん付も可愛くないよねぇ」

「全く…面倒だな」

「お?殺す?」


まるでおもちゃを与えられた子供のように、水を得た魚の如く目を輝かせてベッドから立ち上がった彼女を見上げて深いため息を付いた
亜人という存在自体が変わっているが、人格まで変わっていると面倒なものだと思った、確かにこの男佐藤は信長夕日の一回り以上年上で、下手をすれば親子に…いやそれ以上に見間違えられてもおかしくはない
佐藤は見た目だけでいえば無害そうな男だが夕日は違う1歩スイッチを触れれば爆発を起こす


「…あー、落ち着いた」

大きな音を立てて手入れをしたばかりの自分達の武器に血がついた、黒い霧からまた再生した夕日は頭を掻きながらつまらなさそうに佐藤をみつめる


「こんなにピチピチの女がいるのに欲情もしないなんてつまんないね」

「男だからねぇ、流石に女は選ぶよ」

「あぁそうですか」


そういってベッドに沈んだ夕日の精神は病んでいる、当然といえば当然だ、4歳から彼女は亜人として発見され政府のモルモットにされた
それから15年もの月日だ精神を病んでいるだけでよかったと思える時もある、佐藤にとって強い味方でもあるがなかなか厄介な存在でもあった


「佐藤さんはどうしてあたしみたいなの助けたの」

「そりゃあ亜人だから」

「あたしそういう所結構好き」


またテレビを見始めた彼女を男は思い出した
世界を、人間を強く憎みながらも、人体実験されるその時間を楽しんでいたことを、苦しみを快楽に変えた彼女の考えはある今正解だ、なにかに逃げたかったというわけなのだろう
佐藤や他の亜人と比べてもやはりそういった考えは変わってもいるが彼女の逃げ道だったのだろう。


「田中くんもさ、世界憎んでるかなぁ」

「そりゃあ憎むだろう?いや…君のように楽しんでるかもしれない」

実験室の中、何十人もの奇妙な人間に囲まれ、身体を切り刻まれ、肉を抉られ、死ぬ寸前まで延々と同じことを繰り返さられ
時には狂った研究者達に死ぬよりも苦しいことを繰り返され、国の為だと人間や動物にでも耐えられない極悪非道な事をされる
潜入をした時、ただその場を見下ろした時、目があった時確かに彼女は笑った


「あたし?あたし楽しんでなんかなかったよ、苦しくて悲しくて寂しかったよ、でも佐藤さんがさ居てくれたから何となくこの世界もありじゃね?って」


空になったチューイングキャンディーの袋を何度も逆さに振って、袋を破いて中を見て無いことをようやくわかったの深くため息をついて立ち上がる
洗面所の方にいって歯を洗い出したのか夕日の声は静かになった、一通りの武器の手入れをみてその美しさに吐息が零れる
これが人間が作ったものであり、人間が簡単に死んでしまうものなのだと、自分達に何度も向けられたこの銃口はリセットを何よりも簡単にしてくれるものだった


「好きな人いた?」

「いたかもしれないね」

戻ってきた娘はパジャマについでに着替えてベッドの中に入り眠る準備をしている、21時を回れば彼女は決まったように寝に入る


「あたしのこと愛してよ、そんでもってリセットするときもほんとに死ぬ時もあたしの手で死んでよね」

「あぁ、構わないよ君の望みならね」


そういって眠りにつく彼女の頭を撫でた、亜人の終わりなんていつくるか分かったものじゃない
ならば永遠に生きてやればいい、邪魔な害虫は殺して。




- 1 -
←前 次→