Scorpion

※少しR-18



猫沢さんのところに新たな仕入れをするから手伝ってくれとの簡単なことを言われ、面倒臭がりながらも久しぶりの東京に何を着ていくかと頬を緩めた少女に佐藤はベッドに1着のワンピースを置いた

「あぁ、これ着てくれる?猫沢さんの後に寄りたいところがあるから」

「なになに、えっ!すごっちょーかわいい、買ってきてくれたの?」

若々しく飛んで跳ねて喜ぶ少女に疲れたような顔をして(とはいえあまり変わっているようには見えない)ついでに小物も置いていった佐藤の考えは読み取れずに、部屋の中に残されたドレスを見つめる
薄いラベンダー色の背中の大きく開いたドレスでスカート丈は前から後ろにかけ違った、前から見れば甘い可愛いデザインも後から見れば大人らしく艶やかなデザインであった、同じように揃えられた小さな何を入れるのか聞きたくもなるクラッチバッグ

「ねぇどこいくの?」

「んー、君がいったことないところだよ」

「つまんないよ」

隠れ家として現在使っているのは関西で猫沢達と会う約束をしているのは東京、新幹線や飛行機は足がつきやすいから危険だと言われ仕方なく運転のできる佐藤の助手席に座った、今頃他の連中は佐藤のいないアジトで優雅な休暇を楽しんでいる事だ
最低でも今回は三日は必要だというのに、いつもの田中ではなく夕日を連れた

着飾られた夕日は朝から佐藤に好き勝手にされ、メイクもいつもより遥かに薄く、髪もしっかりとまとめられ崩すに崩せない状況だ
足は高いヒールで慣れているはずが履きなれないアンクルストラップの付いたパンプス

「あと数時間の我慢だから、夕日君はできるよね?」

あまりにも文句を吐くものだから面倒になったのか1度頭を撫でられてサービスエリアでそう問われる
いうことの聞けない子供じゃないと自分をいう夕日は仕方なく黙り込んだ

「あ……」

いつの間に寝てしまったのか車の裏で猫沢と話をしていた佐藤をみて、もう今更車から出ても仕方が無いとため息を零しながら奥山から渡されていたスマートフォンを覗く
時刻は21:03と表記されて、どこかの立体駐車場での今回の約束は早々に終わり荷物が後ろのトランクに積まれ始める

「おはよう信長くん」

「おはよ佐藤さん…ごめんなさいあたし手伝い出来なくって」

「あぁ構わないさ、今から行くところに用事があるしその為に君に来てもらったからね」

その言葉に今回もハニートラップというもののためなのだと今更気づく
利用される以外の価値がないことをよく分かっていた、その中で亜人と人間どちらにつくかというシンプルな答えだった
渡された薬もいつも通りの避妊薬でそういった行為は全くしないというのに用心深いもので、仕方なく飲み込んでドリンクホルダーに用意されていた水を入れる

「さて付いたよ、賢い信長くんなら分かるだろうけど今回はこの男だよ、聞くことはこの間教えたから覚えているよね?」

まるで洗脳のように両頬を抑えられ目を合わさせられる、彼の血のような赤黒い瞳がちらりと見えて絡まり合う、唇を撫でられて舌がそこを舐める

「大丈夫だよ、上手にできればご褒美を上げるからね」

そう言いながら車から降ろされた夕日は過ぎ去った車を見て一人ぽつりと虚しい心とともに残される
意識を集中させなければと蕩けた思考を消すために頭を横に振る、いかにも金持ちのいそうなジャズバーらしいそこに未成年でありながら手馴れたように入った夕日は会員カードを見せ、店員の言葉に乗せられカウンターに座らされる

「やぁ、1人かな?」

まるで狙いの魚が来たような感覚だ、釣りをしている気分で尻に回された手もイヤらしく見つめる瞳もどうしてこの男相手なのかと思えていた
ふと視線の先のテーブル席に座る佐藤がいて、目を丸くしてしまえば相変わらず微笑みを消さずにいた

「私の部屋に来てくれるよね?」

男の声が耳元で聞こえた、腰に回された手もエレベーター内で触れられる手も心地悪くて今にも感情が溢れそうになる

ベッドに押し倒され、今にも喰らいたそうな男の体を反転させてドレスの裾を上げる
あぁここで失敗しないようにしなくてはと思いながら「ねぇあたしね、知りたいことがあるの」男は下世話に笑ってなんでも教えるよという

「よく頑張ったねぇ」

ベッドの上でせっかく貰ったラベンダーのドレスが赤く染まっていた、男の首がいつの間にか消えており、小さくため息を付けば小さく香る嗅ぎなれた香水の匂い、香水かシャンプーか洗剤か、よくもわからないけれど不快には一切感じない匂い

「さと、さっ…んっ!」

真後ろに立つ彼を見ようと見上げれば、顔を抑えられ、唇が塞ぎ込まれる
そのまま腕がゆっくりと回りワンピースを下ろした、デザインのせいで下着をつけることの出来なかった乳房が溢れ落ちるように出る、蛇のような薄い長い舌が口の中に入ってくる頃には服は半分に下ろされていた

「さとうさ?」

「あぁ気にしなくていいよすぐに終わるから」

尻の谷に当たる硬いそれが何かわからないほど脳天気な子供でもなかった
歳で言えばそういうことに興味のある思春期の少女なのだから、とはいえそういった行為がなかった彼女からすれば恐ろしくも感じた
大きくもない平均より少し小さいほどの胸を遊ばれながら背中に唇が落とされる
目の前のベッドに横たわる首のない死体を見つめても何も変わることは無い

「あぁ、それ邪魔だね」

そういったかと思いきや、一度離れてベッドに横たわる男を布団ごと落として血濡れのシーツと枕が残される

「ねぇ佐藤さんあたしした事ないよ」

「うん、知ってる」

「ならどうして今すんの」

少女の素朴な疑問なのだろう、佐藤は言われたことに一度考えてから、すぐにわかったような顔をして彼女を横にした

「別にいいんじゃないかな?どこでやろうといつ君を犯そうと、それが早いか遅いかだ、元々私はその気で君を飼っているんだよ?いやかい?」

優しい声がそういって益々疑問が大きくなるばかりだ、それでもドレスの裾から入ってくる
困り果てたような顔をしながらも佐藤ならと思う彼女は「嫌じゃないけど」と渋々ながら答えた、嬉しそうに微笑みながら彼女の足を持ち上げて内太ももにキスをして赤い印を残すことが彼らしくないようにおもえた、それは彼女の中の妄想での彼のイメージである

「大丈夫、私が痛いことなんてするはずないさ」

あぁ嘘ついた、赤い瞳がちらりと見える時は基本碌でもないことだ
そうわかっていながらも、その背中に腕を回し杭が打たれることに大きな悲鳴をあげた

「君を愛してるんだからねぇ夕日くん」

視界が崩れる中でまた彼の赤い瞳が今度ははっきりと見えた
結局愛というものには勝てないのだと心底少女は理解して、痛みを喜び受け入れる、そこに真実がないとしても


スコーピオン「瞳で酔わせて」