助角





なくなった腕を見て、さてはて何度目やらと思ってしまった、この腕を初めて無くしたのは現世で生を謳歌していた時で、今も時折亡者に反撃をされ奪われたり、時に取れたり
まるで人形の関節がゆるくなったかのようなものだった。

決まってそんな時はある人に頼りに行く、っといってもこの館の中で傷を治してくれる人物など少ない、おまけにナマエが頼る者など

そして言っておこう、この腕は今回固定していたものがあったがそれはまるで壊されたかのようになって外れているのを


こんこんと小さなノック音が鳴る、夜も更けてもう他の獄卒達も廊下を歩いていない
誰もいない寒い廊下を歩いてナマエは少しだけ高ぶっている気持ちをいつものポーカーフェイスに混じらせて消した

「誰だ」
「ナマエです」
「いいぞ」

その言葉にどきりとしながらドアを開ければ褐色にしては淡い…日焼けにも似たような黒い肌に目立つ赤い目、そして昼間ではみれない後ろに撫でつけられた黒髪にラフな服装
それらは彼を現在、獄卒たちの上司でないようにみせる

「またか」
「すみません」
「スペアを持っているからよかったが、あまり任務中に落とすな」

その言葉ひとつひとつは説教でもあるのに、##の体はそれを聞く度に震える、興奮をしてその赤い舌がみえる言葉に甘さを覚えた

「そんな顔をするな」

いつもと違い下ろされた長い髪を撫でられ部屋に案内される。
シンプルなベッドにサイドテーブル、ランプとクローゼット、そして大きなソファーのみのその部屋は生活感が一つもない、最低限のもののみで揃えられる
その部屋に案内される度にナマエは期待してしまう、それは彼の恋人としてだ
周りに公表はしていない。だがしかし二人になれば甘さはあるかと思えばそうでもない

「腕を出してくれ」
「はい」

まだ修復されていない、なくなった腕をみせればため息をつく、新たな腕を持っている彼は器具でそれを付けていくがひとつ言った

「構って欲しいがために毎度壊すのはやめてくれ」
「じゃあ、どうしたらあなたは構ってくれますか?」

純粋な疑問、子供のようにいうのはいけないことだがどうしても彼が欲しい、彼の特別になれたのに
それは酷く滑稽な考えだろうけれども、それでもほしかった

「肋角さんはやっぱり子供が嫌ですか?命令の聞くいい子な私が好きですか?」

少しだけ苦しそうな顔をしていたから、きっと彼を困らせているのは分かっていた
だというのに、彼はそんな彼女の頭を掴み口付ける、何度も角度を変えて何度も小さな舌を絡めて音を立てて

「こうしたいってことだ、なぁナマエ、お前は危険な目にあいてぇのか」
「…貴方にならどんな風にされても構いません」

変わらぬ表情で詩を読むようにいう
肋角はため息をついた、この娘は自分の貞操の危機だというのにまるで他人事のような上に貞操など気にしてもいない様子だ
確かに生娘ではないかもしれないが流石に夜、男の部屋に来てこんなふうに言われては期待はするが、やる気もなくす

「はぁ、お前は本当に自分をわかっているのか」
「??私はあなたのモノです」
「なら甘えたい時は普通に甘えられないのか?」

その言葉にナマエは少しだけようやく困った顔をした、そんな顔をしたいのは自分なんだぞとでもいいたいが返事を待ってやれば数拍置いてからいう

「肋角さんに抱きしめられたいです」

そういう風に言えというわけでもなかったがなんだかんだといい、そう言ってくるのは純粋なのだろう
腕を伸ばせば音を立てて胸に抱きついてきた、腕は迷っていたがそれを取って背中に回してやればまるで子供のように抱きついた

「肋角さんが好きです」
「あぁ」
「貴方のためなら死ねます」

重苦しいその言葉は相変わらずで肋角は髪をなでる、指をすり抜けて落ちていく髪はまるで一つの映画の様子のようにも思える

「知る度に…あなたが欲しくなります」

赤と桃色を混ぜたような瞳は色を濃くしていう、まるで情事のような瞳に例え肋角とて大人であれ女のそんな目をみて揺らがないわけもない。

「そんな言葉を言って俺をどうする気だ」
「いえ、ただ……その、あなたの物になりたいと」

思ったんです…と言葉をいう前にそれは塞がれる、先程まで修復していたソファーの上に猫のように寝転ばされる、寝巻きの間から見える白い肌は肋角を刺激する

「モノになりたいか…いってくれるな、お前は俺をよくわかっていない」
「だからほしいんです」
「そういう訳じゃない、中身もすべてよくわかってるが…お前は俺を男として、獣としてわかってなさすぎる」

首筋を撫で腹を指がなでる、いつもしている手袋ではない、素肌の彼の感覚に##は少しだけ顔色を変える

「亡者に食わすくらいなら俺に食わせろ、そしてお前自体を教えるんだ、わかったな?」

赤い瞳がジトリとみつめていうものだから、ナマエは吐息混じりにいう

「えぇ、もちろんです」

口元をそっとなぞる彼の指を口に含みながら肋角のすべてを感じるために目を閉じた。







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