片桐拳
▼▲▼
正直にいえばずるいと思えた
誰もが憧れる例えるなら宝塚の男役のトップスターのような存在が何も知らない、身長も低けりゃ腕っ節が強いわけでもないし顔もいいわけでもないのに取られるなんて
聖明鏡学院の女生徒たちで水上翔の恋心を知らない人はいない。毎日ある真面目な告白にラブレターに困らされる相手が今は同じような顔をしているのだから
「なぁ、みんなはさ…彼氏とデートってどんな格好するんだよ」
そうクラスの女生徒たちに聞いた彼女が大間違えだった
正直女は恋の話が好きだ、そして幸せを純粋に願ってくれた、本気で彼女を好きだとしても
噂によれば彼女の恋心を奪ったヤクザの片桐拳と今週末に二人でデートだという
その為にどんなところに行くや格好やらわからなかった。
部屋のクローゼットに洋服棚の中には男物ばかりで可愛らしいピンクも水色も何も無い。
1度度胸で買ったスカートが寂しそうにまだ奥にしまわれていた
デートだと知ればあとは服にメイクに…友達であり親衛隊である彼女らが魅力を引き出すのは得意中の得意である
短いベリーショートも気にならないブラウンをベースにした大人らしいメイクは普段しないためかにあってないように見えて、唇のグロスはベタベタとしてティッシュで拭いたくもなる
自分の制服と変わらないロングスカートに清楚なブラウスに薄手の水色のカーディガンさえも怖くて仕方が無い。
高い身長故にヒールのない靴にする
「…あぁどうしよう」
変だろうか?もしかしてすごいダサい?逆に浮いてる?なんてなれず、店のガラスに反射して映る自分を見続けて髪の毛を直したりと無意味な行動をしていれば肩を叩かれた
「よぉ、またせ……」
「いえ、全然」
普通に挨拶してきようとした片桐が止まったことにやはり可笑しいのかと固まって内心自身を毒付いたが片桐は小さく笑った
「すげぇ、綺麗だなぁ化粧してるし…服もいつもとちげぇし…まじびびったわ」
「あっあの!変じゃないっすか!」
「変じゃねぇよ、つか隣歩く俺のがダセェだろ」
「拳さんはどんな格好でもかっこいいだろ」
なんていつも通りに笑っていう彼女に顔をそらした
あぁ真っ直ぐした犬のような目で見られて言われるとどうも返答しにくくなる。
嬉し恥ずかしとでも言うべきなのか、けれど自分より背丈の高い彼女が普段しない格好にメイクで努力をしてきていることが何より嬉しかった。
交際をするのには流石に歳があれかと思って断ったのは未だに後悔しているがそれでも彼女は真っ直ぐと「なら自分が大人になるまで待っててください、そん時にまた拳さんに結婚申し込みます」なんていった
「行きてぇって言ってた水族館いくか」
「いいのかよ、あそこ…遠いだろ」
「なんだ?俺が源治たちみてぇに連れてくところが適当なバーやカラオケやコンビニだと思ったのかよ?俺は拳さんだぜ?大人の拳さん体験させてやるよ」
「っ……うん、ならよろしくお願いします」
そういった2人は旗から見れば普通のカップルに見えなくもない、翔がそこいらの16の高校生に見えないというのもあるが
二人の間には確実に穏やかでなおかつ幸せそうな雰囲気が流れているからだ。
手が触れるか触れないかの距離を2人は維持して時折ちらりと見合う
話は尽きることなく、けれど決してはしゃいでるようなわけでもないそのデートはまるで中学生のカップルのデートのようであった
黒と青が交差するような水族館を楽しそうに見ていた翔を見つめて拳は頬を緩める
ヤクザという職業にただの平凡なこの女子高生を絡めてはならないと思った、実際のことを言えば彼女を好きな気持ちは同じく程にあるが、それ以上に歳も職業も何もかも気にしてしまった
ふと小さな水槽から目を離して横を振り返った##は拳をみつめた
「なぁ拳さん」
「どうした?」
「私、別に気にしてないんだ歳も見た目も何もかも、あんたの中身が好きだから」
「…はぁ、お前なぁ歳考えろよ、俺はお前と世界が違うだろ」
「違うからなんだよ」
きっと彼女は難しさをわかってないんだと拳は彼女を子供扱いしてしまう、それは歳が10以上離れているからだろう。
自分がこの女に本当に惚れてるのかと問われればそのとおりである、この世で1度は女を本気で愛したことくらいはあったからこそ、そう思い続けた
「なら私は拳さんと同じ道を歩む、あんたの隣でアンタのために生きたい…助けられたからってここまでいうほど私は簡単な女じゃねぇんだ」
拳の腕をとったかと思えば、それを##は自身の胸に押し付けた、流石にそれは場所的にもヤバイ!っと思い言おうとした
「この心臓ごと、あんたに捧げるさ」
なんていう女に、こいつか16歳の女とも少女とも言えない存在でなければ今すぐ結婚しただろうに。なんて内心思うが我に返り急いで手を離した
周りの目が二人に注がれてるのを見て急いで拳は翔の手を取って走り出して自分の車に乗った
「お前なぁ、あんなところで…」
なんて言おうとしたのに彼女は真っ赤な顔で下を俯いていた、耳や首まで赤くして人間どこまで肌の色を変えれるのだろうか。
なんて思ってしまった、けれど彼女をどうしたらいいのかわからなくなって困惑し始めた
「どっどうしたんだよ?やっぱ恥ずかしかったのかよ…あんなところで」
「ちっ違う……その、手ぇ…繋いでくれたのスゲェ、嬉しくて」
自分の右手を見つめていた翔の言葉に拳まで顔を赤くした
自分で胸に手をやらせたくせに今更手を握ることに恥じるなどどういうことなんだと思ってしまうが、それが翔という女らしくもあった
「手ぇくらいいくらでも繋いでやるだろが」
「ぁ………なっ、なぁ拳さん」
「どうした?」
「私、まだあんたに及ばないくらいの女だけどさ、あと4年後には絶対あんたが惚れこむような女になるから…それまではこのガキみたいな遊びに付き合ってね?」
精一杯の強がりのように笑う彼女に手をかけて思わず顔を寄せあった
気づけば距離は0になってしまう
すぐに離れたのにその時間さえあっという間に思えた
「わっ悪ぃ!!!」
「……私の初めて奪ったんだ…全部奪ってくれるまで覚悟してくれ」
なんて狭い車の中で翔は意地悪に笑った
あぁこの女本当に俺が望むように成長しているよ。なんて密かにその年下の女に思った
交際前に手を出す気はなかったのに…なんて脳で声が響いた
家に送り届けた時に翔は車を降りて運転席の方にまわった
窓を開けてやれば翔はまた笑った無邪気な少女の顔で、そっと頬を包まれて顔が近づいてまた離れた
「私、やっぱ拳さんのことすげぇ好きみたい」
じゃあね!なんていって家の中に逃げるように行ってしまった彼女を見つめて
そして顔を覆って1人だけの車の中でぽつりという
「あー、ズリぃ女になっちまったなぁ。」
▲▼▲
- 1 -