アルカ=ゾルディック
扉の向こうに彼女がいるのを知っていた
重たい鋼のそのドアは開くことなく、一人で彼女は泣いているのが聞いてわかる
「アルカ、私だよ」
あなたのためなら何だってできる、好きだと意識してその能力を出せばみんながもう彼女をきっと解放してくれる
残酷な方法だった、愛を逆手に取った大人達の醜い使い方、ゆっくりと開いたドアの中で彼女は声の出ないことに首を傾げながらもこちらをみて嬉しそうに両手を伸ばしてくれる
「ごめんねアルカ、好きだよ…ごめんね」
私達が一緒になるためには声を、彼女の能力を極力出させないようにしなければならなかった、彼女の愛する1人の兄のためにも彼女のことを利用させないように
そのためなら私の愛などどうなったっていい、こんな紙のような薄いプライドなど要らずに彼女のために全てを捨てて構わない
「リーリェ、泣いてるの?」
そう聞こえた時には能力は解けてしまった、カメラを見つめれば低い声が部屋の中に響く
「出てこいリーリェ」
「…はい」
ゾルディックの家の子でない自分が彼女のそばにいれるのは幼い頃からの彼女の好きな人であるからだろう
この変わった能力の発動条件を満たすことの出来る彼女
人の願いを叶える代わりにその代償を貰うナニカ、それを恐れた家族による軟禁は悲しいほど残酷で、練習がてらリーリェは一日に一度会いに行く
「アルカごめんね、今日も付き合ってもらっちゃったや」
「うん!いいよ…ねぇねぇリーリェちゅーして」
このキスの意味はオネダリでないのを知ったのはいつからか、それくらい何年もアルカへ能力を使い続けてきた
一度解けたらすぐに退室をルールにしているのはもし何かの手違いで「おねだり」が始まったとき用だった
「うん、アルカ大好きだよ」
「私も!」
抱きしめられる度に、好きだと言って毎日触れ合う数秒の唇に、悲しみが溢れ出そうだった
全部大好きだと、言ってあげたかった出来ることなら2人でどこか遠くに誰も知らない場所で愛を望みあいながら、最後を望みたいのに
彼女の変わった能力と、家族はそれを許すことは無い、家族とも認められずに兵器のように、悪魔だと例えた人達が憎らしくて
その中の優しい一人の銀髪の少年だけは彼女ら二人を認める、愛し合う二人への祝福を
「アルカへの制御は難しいものか」
「はい、やっぱり自力で解いてる可能性が」
「除念を自力でするのは厄介だが、その力が弱めれないのか」
「……アルカだけでも、私も一緒ならこの能力は強さを増します」
愛する人にだけにしか聞かない、言葉のでなくなる魔法
内緒話の特化されたもののように、一般人となんら変わらないアルカにはなにかよく分からなくても、身体は理解をしているらしく大きく抵抗をしては毎度強い能力で解除をする
その一瞬の数十分が幸せだった、手を握りあって愛を心で語り合う、知っているからこそ許されるその時間が心地よかった
ナニカもアルカも愛しているからと全ての人に言っていたいのに、それは無理なことだった
「おはようアルカ」
「あれリーリェ?」
寝ている間に入った時はアルカは不思議な顔をしたあと幸せそうに微笑む
それが何より好きでサプライズ代わりにする
「リーリェが起きた時にいると、うれしいなぁ」
「どうして?」
「だってずっと一緒にいるみたいだもん」
心臓に南京錠を付けられたように重たく感じる、彼女の純粋な部分が重くのしかかり、そしてその言葉は心地よさや幸福感の中に侵入するナイフのようだった
好きだと愛してると願って言っても誰も認めてくれないのだ、お互いの利益のためだけに居させられる
彼女の優しさに漬け込んだこの実験は悲しさに溢れる時折自由時間としてこうしてアルカと話をさせてもらえることは何よりの幸福であり、この子のためならばなんだって出来ると信じていられた
「あのね、文字書くの得意になったんだ」
そう太陽のように笑う彼女を誰が悪魔に思えるのかと思う
優しい花のような愛らしさに抱きしめそうになる、部屋の入口のランプが黄色に変わったのを見てあぁもう終わりかと理解する
「そっか…じゃあアルカ、今日も少しだけ…ごめんね」
大きく頷く彼女に心が痛んで仕方ない、どうか誰か私たちを救ってほしいと思えたのに、お互いの繋がれた指先が心地よくて
声の出せない彼女の指先が動き出しては何度も彼女はいう
好き
と、彼女の好きな兄に対してとは別で頬を赤く染めて嬉しそうに笑うものだから、仕方なかった
ゆっくり片手を取られてもうすぐ終わってしまうのを感じながら必死に終わらないようにと力を込める、愛してるとアルカがいった
手のひらに書いた文字で恥ずかしそうに笑った途端に目は真っ黒に変わった
「出ろ!リーリェ!」
「…リーリェ、オネガイ」
「…わたし、私ねアルカとナニカと3人で逃げたいの」
あい。
私たちだけの楽園に行きたかった、1度だけでいい二人で外に出て愛し合いたいと願った
女の子同士とか分からないけれど、関係なくアルカと居たかった、どれだけ愛してると言ってもダメだった
運命は変えれないんだと誰かが言ったのを思い出す、盗人と花のように、折れた花は枯れて死ぬしかないのだ
「…ある、かす……き、あ、る」
数日で居場所がバレた、幸せなんて存在しない
愛してる、愛してる
手刀で眠らされた愛しいあなたにそういった、心臓が痛むの、ゾルディックに歯向かうからダメなんだと呆れた声が聞こえた
それでもいい、それでも私は眠る彼女に愛を叫んだ。