はじまりの電話







広い屋敷の中の1室、家一つ分の広さもあろう部屋の中で少女は1人ベッドの中にいた、窓は締め切られ重たい遮光カーテンで外は何一つ見えず、部屋の中は小さなランプだけが照らす
重たいドアが数回ノックされるのを聞いた少女は「どうぞ」といった


「お嬢様、御友人からお電話です」

「…珍しいね、ありがとう」


遠く離れたその場所から二人とも動かないことにまるで痺れを切らしたかのようにソレは暗闇を動き、メイドの手の中にある黒電話を取ってベッドの上に置いた。
渡した後すぐ出ていったメイドに何も言わずに彼女は電話を嬉しそうにとった



「なぁにキルアちゃん」

『よぉ久しぶり、リーリェってハンター試験まだだよな』


ハンター試験、プロのハンターになるための試験だ
過酷で厳しいもので命を落とすこともある程だ、リーリェはそう言われ自分のよく使うテーブルの引き出しを見つめればソレがまたそこを開けて紙のようなものを取り出す
ハンター協会へと書かれたものは、試験を受けるためのいわゆる受験票、受けとるだけ受け取ってそのままにしていたのを忘れていた…と思い出す


「うん、なに?キルアちゃんもしかして」

『うん、実はクソババァとブタくん刺してさ家出してんだよな、どうせついでだし一緒に試験受けに行かねぇ?』

「わかった、あ、キルアちゃんちゃんと受験票だした?」

『あぁ』

「ふーんそっか、じゃあまた試験で会えるね」


そう話をして電話を切った
キルアと呼んだ少年を思い出し彼女は頬を緩めた


『なんだなんだ、浮かれやがって』

そんな彼女を見て、地面から浮き出てきた人を簡略化したようなシルエットの黒い何かはいってきた


「別に?それに…キルアちゃんに会うの何年ぶりだろ」

浮かれ面を隠す気配もなく少女は大きなベッドに大の字になった、それを上から覗くように影がみた
見たと言ってもソレには目はない、見てわかるのは口と黒い体にオマケのようなハットのような黒い何か


『まぁた、あの一家に狙われるんだやめとけやめとけ』

「…意地悪言わないで、それにゾルディック家はみんな優しいよ、知人に関しては」

『優しい奴は6歳の息子と5歳のその友達を結婚させようなんて思わねぇよ』



それはそれじゃないか。ともう言い返す気も失くしたのかリーリェは天井を見つめた
壁紙だけの天井いっぱいに広がる満点の星空を思い出す、キルアと呼んだ少年のことをよく覚えている、もっと小さな頃に初めてできた友達

暗殺一家とどんな依頼も引き受けるシャルドーラ家、そんな中での二人には友達がいなかった、親達が会わせたのは別の意味でだというのに2人は親友のようになった
ずっと連絡のなかった友からの連絡に心を踊らせながらハンター試験までを嬉しそうに待ちわびる

あぁ、外に出るのも何年ぶりだろうか。なんて思わず思いながら

そんな危なっかしい少女を横目にソレはため息をついたまるで子守はもう勘弁してくれというかのように



あの電話からの準備は早かった、いつも着ていた暑くて重たいワンピースは脱ぎ捨てて、ラフで戦闘に特化しているショートパンツに両脇が深く空いているものを着て
長くクセの強い髪は朝からメイドたち3人係で手入れをされたのも無視してすべて外してそのまま下ろした、1本のスカーフを見つめたあと嬉しそうに笑い細長くし頭にバンダナのようにつけて
重たく歩きにくいだけの厚底とヒールの靴はやめてシャドーに合わせやすいスケート靴のようなアレンジシューズを

カバンの中には最低限の荷物を入れて、受験票をみた
シャルドーラ家の子は女であれ男であれ10歳になれば絶対にハンター試験への紙をもらう
そして、仕事で必要になった時、暇な時、人それぞれになるが好みでソレを取りに行くのだ、リーリェはハンター試験はまだ受けてもおらず受験票も受け取ったばかりだった


「でも、私受かりたいとかじゃないもんなぁ」


思わずそう呟いたのも仕方ない、その歳で仕事はしているがライセンスの有無は関係がなかった
特に親からのこともなく、言われなければ引き出しの肥やしになる所だったわけだが


『キルアだけのために行くのかよ』

「だってぇ…ゾルディックのお家にはあんま行けないんだもん、キルアちゃんいる時わからないし」


ムスッと膨れたような彼女の言う通りだった、距離もそれなりにあり、最短でも4.5日は普通にかかる距離である、お互いの仕事や家の問題もありあまり会うことも減った
寂しいものもあったが時折来るゾルディックからの手紙を何よりも楽しみにしていた、キルアともう一人の弟とは特に仲がよかったからだ
二人の写真を見るだけでどんなことでも耐え続けてきたからだ、心地よかったのだ


「ふふ、でもキルアちゃん変わってるのかなぁ?楽しみだなぁ…うん、明日から…明日からなんだね」


変わらないあの優しい銀髪の少年の笑顔を思い出して頬を緩める、あぁ友達と会うなんて何年ぶりだろう