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「いったたココは?」

「目覚めたのおねーさん」

目を覚ますと同時にどこかの木の上だと気づき身体を起こす、幼い少年の声が聞こえて下に目をやれば気品のいい少年がそこに立っていた

「何してるの」

「ここはどちらですが」

「僕の家の庭だよ、不法侵入なのはそっちだよ」

「決して貴方に危害を加えるつもりはなくですね」

「分かってるよ、それより降りてきて聞きたいこと沢山あるんだから」

黒いくせっ毛に、少し垂れた赤い瞳、小さな身体だが彼の足元を彩る靴は特注品に見える、黄色の小さなリボンと濃い青色のシャツに対してまるでスティーブンの小さな頃の姿に見えて仕方ない、それもあのアルバムで見た姿と同じもの
大きな屋敷の中に入り、手を繋がれた菊はまるで田舎から出てきた娘のように辺りを見渡した

「スティーブン様、お客様ですか?」

「うん、紅茶とお菓子を頼むよ僕の部屋でいいからさ」

「畏まりました」

彼の専属のメイドらしい女性は穏やかな笑顔でスティーブンと呼んでそういった

「貴方の名前はスティーブン・A・スターフェイズなのですか」

「そうだよ、知ってるんだね誘拐犯にも泥棒にも見えないんだけどなぁ」

意地悪そうにそういう彼は楽しそうで、あの性格は昔からだったのかと意地悪く思ってしまう
大きな扉を開けてスティーブンの私室らしいそこは白と青に統一されており美しかった
部屋の真ん中の椅子に座った彼を見ながら菊は彼の前に立ち見下ろした

「スパイでも無さそうだし、僕を殺しに来たようにも見えない、勿論僕の家族へも…君って本当何者?何しに来たの?僕を知ってるならそれなりにいい家の人間だろう」

上から目線のまるで王のようなその高慢な態度はまるでスティーブン自身が敵を拷問する時のような声色であった、まだ顔に見えるはずのタトゥーが見えないあたり完璧にまだエスメラルダ式血凍術を身につけていないことも察せた
彼の家だというのならばここはイギリスあたりだろうと予想をしつつ少年に跪いた

「私は菊、芍野という日本の鬼退治を家業にしています、信じられるかわかりませんが貴方の将来のパートナーです、事件に巻き込まれこの様な場所に落ちてしまったようなのです」

「ふぅん、なる程ねだから懐かしい匂いがするのか、大方理由はわかるよ僕も体験したしね」

その言葉に菊は目の色を変えてスティーブンにアルバムの話をすれば全く同じ経験をしたと彼は語る
菊の目の前にある本棚の中に身に覚えのないアルバムがあり手に取ってみてみれば菊のような幼い少女が映っていたとそしてそれは突然光り始め、その後菊が屋敷の庭の木の上に落ちてきていたのだとスティーブンは教えた
現在のスティーブンは12歳らしく、エスメラルダ式を取得途中だと語った

「書庫室等はありませんか」

「見てみる?本がありすぎるのと地球の言葉じゃない本ばっかりだよ」

「血界の眷属の言葉や異界のものでしょう、ご安心下さい私は読めますので問題はありませんから」

「本当僕の恋人らしいね、完璧主義者だ」

「そうですか?」

「まぁね」

得意げな顔をしてスティーブンに手を引かれて書庫室に行けばそこはまるで大きな図書館のように床から天井まで溢れかえっていた
本は全て血界の眷属やその他異界のもの達ばかりであり、先祖代々牙狩りを受け継がれてきたのだと再認識する

「僕の主はどんな感じだい」

「貴方と反対な性格かもしれません、誰でも信じて真っ直ぐで人間は善なのだと語るようなそんな方です」

「ふうん、君はどうして僕に引かれたんだ」

「随分と聞きますね、気になりますか?」

普段はあまり話さないはずのスティーブンが幼くなればこんなにお喋りで尚且つ自分の未来がどこまでも気になる少年だと思うと菊は少し面白く思えた
目をキラキラとさせてまるで寝る前に聞かせて貰える童話を待ちわびる子供の顔をする彼は年相応だったのかと思った
歳を取れば苦労を重ねてあんな顔にもなるのか…と失礼ながら思いつつ本を1冊ずつ取りながらスティーブンの質問に答える菊は少しだけ今が楽しくも思えるのだった。






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