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PIPIPIPI…と大きな音を立ててスマホが震える、朝が来たかと冴えない頭でアラームを止めて隣で寝てるはずの恋人を見れば小さな恋人似の少女が大きな瞳を開いて見つめていた

「あれ、僕子供いたっけ…菊似だなぁ」

「私は菊本人ですスティーブンさん、寝ぼけていますか?」

その言葉に昨日のことを思い出して大きくため息をつきながら彼女を抱えてリビングに行く、まるでクリスマスの当日のようにソファとテーブルに置かれた子供用品を見て黄に頼んでいたと思い、服を適当に見繕って渡してやる
時刻は午前8:49でありいつもより少し遅い出勤になりそうだと思いパソコンとスマホを片手に昨日片っ端から連絡した相手の返信を見ていく

「スティーブンさん、用意できました」

「…君本当昔から可愛いんだなぁ」

「大人の私も可愛いんですか?」

「僕からしたらね」

まだ幼い手足で近づいてきた彼女に歩幅を合わせるにはスティーブンの足は自慢ではないがとても長い
その為必然的に彼女を片手で抱き上げながら移動することになるだろう、異界品に詳しい鑑定士であるハブレスからの返信が来ていた事を確認し口角を緩める少しは手がかりが掴めることだろうと思い部屋のドアを閉めてライブラに向かった

「みんな退治しなくていいんですか?」

「嗚呼この街はこういうものだからね、紐育って知ってるかい?」

「はい」

「元々はここは紐育である日異界と繋がっちゃったのさ…で僕らは世界の均衡を保つ為に日々頑張ってるのさ」

「スティーブンさんいい子いい子ですね」

「……あぁ、いい子だよ君もね」

不思議そうに街を見る菊は小さな手を伸ばしてスティーブンを撫でた、普段人に触れられる事があれど頭を撫でられることなどない彼は少しだけ驚くも彼女の優しさに少しばかり心が晴れた。
時折人間だからと高を括り絡む連中も簡単に薙ぎ払い行きしなに昼食がてらのお気に入り、サブウェイを購入する昨日の夜に味わったものがたいそう気に入ったのかまたオレンジジュースを頼む菊は早速飲もうとするが着いてからのお楽しみだと言えば仕方なく了承する
昔の彼女は少しだけ欲深く甘えたなのだと思いながらエレベーターに乗った

「さて、ここから君は僕の仲間に会うからちゃんと挨拶するんだよ」

「はい」

子供を持ったらこんな感じなのか。
とスティーブンは時折考えた、菊によく似た女の子で礼儀正しく才能があって可愛らしい、考えたことは無かったが実際に現れると悪いものではなく父性が働いてしまうばかりだった
3つあるうちの真ん中の扉を開ければ広がる花の香りはクラウスの紅茶の匂いだろう、全員とまではまだ行かないが殆どのメンバーが揃った事務所はいつもより人で埋まっている菊は意外にも幼い頃は人見知りらしくスティーブンのシャツをキュッと握った

「おはようみんな」

「おはようスティーブン、そして君は菊かな」

「…はい」

「私はクラウス・V・ラインヘルツ、ライブラのリーダーをしている、よければ君を抱っこしてもいいだろうか」

「菊いいかな?」

子供や動物に植物か弱く小さなものが好きなクラウスが今迄頼っていた菊の小さな姿を見ればそうしたくなるのも当然かと思いスティーブンの腕からクラウスに移る、先程よりも座席は広くなったらしくその両手にはまるでぬいぐるみのように鎮座していた
やってきたツェッド、チェイン、K.K、ギルベルトに挨拶をしていれば後からレオナルドとザップが同時に入ってきて挨拶をしたあと菊を構い始める

「すまないが菊を少し頼むよあとあんまり虐めるなよ彼女そんな見た目でも腕はもう充分ある」

「まじかよ流石才能マン」

「偉いですねぇ菊さんはどこかの先輩とは違って」

「そうですね、6歳児以下の兄弟子には見習っていただきたい」

ツェッドとレオナルドとザップに挟まれながら、朝食を食べていなかったことをギルベルトに伝えればお茶菓子を用意してもらっていた
ソファに座っていた菊は小さな身体で話をするスティーブンに近づき顔を上げた

「どうしたんだ俺はご飯いらないぞ」

「あ、あの、オレンジのんじゃダメですか?」

「あー、すまない少年、そこのサブウェイの袋に入ってるから出してやってくれないか」

「わかりました、菊さんこっちおいで」

妹が居るレオナルドは慣れたように菊に手を伸ばしてやりジュースを与えた
目を輝かせて飲む菊をみて子供がいるのはいい事だとライブラのメンバーが思った、とはいえ本来の菊を取り戻さなければ話が進まないためスティーブンは改めて自身のPCメールを確認しクラウスにみせた

「異界品の鑑定士から情報を入手してきたが、どうやらこのアルバムは開いた人間の過去と未来を入れ替えさせるものらしい」

メールに書かれた詳細と本のページには、あの光った小さなアルバムについての記載があった
まず、アルバムは3冊あり1つは原本残りはコピーだという、原本は術をかけるためのもの、コピーは発動させる為のもの
コピーアルバムは2つで1つの役割を持ち、その開いた者達の過去と未来を入れ替える、アルバムの写真は自身ではなく相手が写るようになっている。
アルバムは普通の人界にあるものと同じであり燃やしたりして破壊することは可能だがコピーを移動したまま壊した場合二度と戻れなくなる
もし過去で起きたことはその後の人生にも影響がある
アルバムの解除方法は2つ、2冊のアルバムを同時に開くか、原本と呼ばれるアルバムの術を解除するか。

と記載があったがその続きもあった

近頃そのアルバムを使って悪さをする異界人がいたとの報告であり、元は鑑定士であるハブレスの持ち物であったがつい先日強盗にあったと、とはいえアルバムには大きな力がないため混乱を軽く招く程度であり問題解決はしやすい、どうかその異界人をみつけてアルバムを取り返して欲しいという依頼混じりのものだった

「そこまで悪いことではないとは思いたいけど今この現状は大いに問題があるな」

「ふむ、とはいえあのままでは過去に行ってしまった菊はどうなるのだろうか」

スティーブンは顔を青白くさせた
何としても早くアルバムだけでもみつけ出さなければならないと思った、だがしかし二つ同時にアルバムは2人の元に現れるかは神のみぞ知るであった







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