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寝ている間に夢を見るのはなぜなのだろう。

私達の世界では、夢見(ゆめみ)の世界を垣間見るからだと言われている。
現実――現世(うつつよ)にいる私達人間は、眠っている時だけ、意識を飛ばしている間だけ、普段は見ることも触れることも出来ない世界へと訪れることが可能になる。現世と夢見は表裏一体でありながら、それでいて決して交わることはない。相容れることのない光と影のように、混ざれば失われる白と黒のように、ともすれば近くで遠い生と死のように、近くて遠い、二つの世界。
この世界の始まりが何であったか、誰も知りはしないけれど、それでも人々は考える。そんなこと知っているのは世界の創造主たる神くらいのものだとしても。
では、私達の世界はどうやって形成されたかというと、一般的に、現世は夢見から生まれたと言われている。
それは、神々の住まう都――夢幻郷が夢見に存在すると言われているからだ。つまり正確に言うと夢見に住んでいた神の手によって作られたと言える。何もない無の大地に夢幻郷の神が降り立ち、生きとし生ける全ての生き物を作ったのだ。
あくまで神話上の話である。誰が見たわけでもない、誰が誰に聞いたのかも最早定かではない、それでも長らく言い伝えられてきた神話を人々は信じている。

その理由は、ある神木の存在にあった。

神が初めて大地に降り立った時、その足下から生えてきたと言われる聖なる大樹――星宿りの樹。魔除けの宝石をその枝に実らせ、光り輝く様は夜空に散りばめられた色とりどりの美しい星のようだと、そう名付けられた。だからだろうか、この世に降り立った神も星神と呼ばれている。
神の下より生まれし神木は、その身に宿す力によって様々な厄から人々を守ってきた。守られてきた人々は、不思議な力を宿す木を崇めた。
そうして、若木が大樹へと生長する頃には、一つの大きな街が形成されていた。

大樹の周りをぐるりと囲んだ街の名前は、星籠街(せいろうがい)。

その名の通り、星々の実る樹を籠の中へと大事に仕舞い込んだかのような――星を抱く街である。
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