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カービィの常習

目覚めたとき、またか、と、そう思った。
特段、不快なわけじゃない。
むしろ、こういう日はひどく調子がいい。
目は冴えて、体もすぐ温まる。
食欲も旺盛!

…これはいつも通りかな。
ともあれ、鼻歌混じりに散歩に出る。
目的は…そうだね、探し物といったところだろうか。
何かは、僕も知らない。
でもきっと何か見つかるよ。
そういう日なんだ。
行く道の景色はなんとも代わり映えしない、呆れるほどの平和。
すれ違う人々も、木々を揺らす暖かな春風も、眉をしかめる飯屋の店長も。
うん、今日は、ここで食べていこうかな。
今日は特に、すこぶる快調だ。
もう二、三軒はしごしても良いくらいに感じた。
だからそうしたし、デザートもつけてしまいたいところだ。
腹八分もいいけれど、食べれるときに食べておけというのが今日の気分だからね。
喉を通る甘く冷たい感触が心地いい。
もっと暑い時期だったらもっと美味しいのだろうけどそれはいつかのお楽しみ。
今は今のアイスが美味しい。それでいいったらそれでいい。
ん!ひらめいた。
海の方に行ってみよう。
岬の高台、海を見下ろせるそこに生えた大きなヤシの下に腰を下ろすと、
潮風に誘われて眠気が釣り出される。
魚の気分を味わいながら昼寝と洒落込めば、
今日も穏やかなMr.シャインが海へと降りていく。



昼寝と言うには少し寝すぎた僕の鼻に、ツン、と鉄の臭いが混じり目を覚ました。
追って、体に振動が伝わって来る。
派手な目覚ましだなあもう。
んーっ、と背を伸ばして体操おいっちにー



探し物は見つかった。
岬の近く、岩場に隠された格納庫からせり出す異形の巨体。
呆れる平和を黒翼が轟音を立てて引き裂いていく。
「僕を呼んだのは君かい、メタナイト」
目を細めて片手で髪をかきあげてそれを見た。
まだ動力が安定せず即座の離陸はできないようだ。
あの巨体だ。慣熟飛行など出来ていないことは明確。
今船内は機体制御に慌てふためいていることだろう。
堂々と乗り込んでも、迎撃に出られる人員は限られている。
自らが立てた風で波が立ち、海面に落ちた機体の影が死角を作っている。
これらを隠れ蓑に低空から一気に肉薄すればあの主砲も役は成さない。
一番邪魔されたくない時ってところか。
なら、お邪魔しよう。
メタナイトのことだ、きっと。
「歓迎してくれるよね」




「…起きろ、カービィ」
「ん…んん…?君かメタナイト…懐かしい夢を見てたよ」
「無駄話はいい。気付いているのだろう。あの時の様に」
「…まあね、結構前から。君には悪いけどちょっと比にならないんでね」
「いや、同感だ。ハルバードの用意は進めているがあまり足しにはならんだろう」
「そうでもないよ、きっと。要は使い所ってね」
「…お前が言うならそうなのだろう。仕掛けるのか?」
「ううん。僕はちょっと別件があってね。彼が動くんじゃないかな。いい機会なんじゃないかって思ってる」
「彼、か。後手になるだろうな。ならば…私は先に行く」
「いいけど、手間増やさないでよね」
「手厳しいな。努力はする。…ということはお前の別件はそれか」
「うん、だからちょっと遅れる。取り戻すのに力を借りる事になるけどよろしくね」
「使い所とは図々しくよくも言ったな。…まあいい、 上手くやれ。話は通しておく」
「悪いね、助かるよ。彼によろしく。先に合うのは君だろうから」
「ああ、お前も…気をつけろ。武運を祈る」
「うん。じゃ、行ってくる」


カービィの常習



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