1.プロデュース科


「よろしくお願いいたします!」

ゆっくりと礼をして、顔を上げる。
みんな一斉に大きく手を打ってくれて、ほっと息をついた。

「じゃあ、そこの空いている席に」

担任の先生に言われ、窓際の席に腰を下ろす。
先生は私が座ったのを見届けると、滞りなく今日の連絡事項を話し出した。










チャイムが鳴ると、ホームルームも終わり、自由時間になった。
とはいえ、やはり周りが男子ばかりなので、なんとなく話しかけにくい。
暇ができてしまい、次の授業の教科書類の角を揃えてみたり、筆箱の中を点検してみたりしたのだが、勿論不備があるはずもなく、すぐに暇がやってくる。

プロデューサーって、何をすればいいのだろうか。
私はプロデューサーとしてこの教室にいるはずなのだが、全くそういうことには疎くて、未だになんでここにいるのかがわからない。

ただ、生徒会長が直々に家に来て、プロデュース科に転入してほしいって言うものだからそのまま流れで......。

そうだ、会長に呼ばれているのだった!
私は勢いよく立ち上がり、慌てて教室を出た。
周りの生徒が、急に立ち上がった私を見て、ぎょっとしていたが、今は気にしていられない。

生徒会室の場所は事前に教えてもらっていたし、ここから近いので、迷うこともなくすぐに行けた。

少し息を整え、きっちり3回、ドアをノックする。

「失礼します」

一声かけてドアを開けると、広く沢山の机が置かれているそこには、会長しかいなかった。

「すみません、遅れてしまいました」
「いや、気にすることはないよ」

彼の儚げな笑顔に、謝罪の意味を込めて頭を下げる。

「今回はどのようなご要件でしょうか」
「今日は僕と授業なんだ」

彼が、さも当たり前のことを言うかのようにさらっとそう言ったが、一瞬、言葉の意味がうまくのみこめず、首をかしげる。

「...と、いいますと?」
「僕が教師で、名前が生徒。
途中からの転入になったからね、授業についていかないといけないだろう?」
「で、すね」

確かに、このままだと授業についていけないのはわかる。
しかし、それは先生が了承して下さることなのだろうか。

「勿論、もう先生からは了解を得ているよ」

不安そうにしている私を見て、彼はそう付け足した。

「チャイムが鳴る前に、今日の教科分の勉強道具を持っておいで」
「あ、はい!」

彼の言葉に壁にかかっている時計を見ると、あと数分でチャイムが鳴ってしまいそうだった。
少し急いで礼をして、生徒会室を後にする。

それが普通だとは思っていなかったけど、私もこの時期の転入生である以上、ある程度は先生方も許してくれたのかもしれない。

深く考えるのはやめて、筆記用具と教科書、ルーズリーフを引っ掴む。
あと一分しかない。

ノックを忘れずに生徒会室へ滑り込むと、丁度授業開始のチャイムが鳴った。

「一時間目、始めようか」
「よろしくお願いします」

礼をすると、

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