ー小指の約束 01ー


あれから何年もの月日が過ぎた。
トムは面影を無くすほど実験を繰り返し、今は見る影も無い姿なってしまった。

反対にティナはミュータントだからか20を過ぎた頃から成長が止まりあの頃のままの姿でここにいる。

変わった貴方と変わらない私。


時はずれてしまったけれどトムはまだあの時の約束の通りティナとともに合った。

たくさんの犠牲を生んでも約束を破らずティナとともにいてくれる。
それだけで、ティナは言いようのない幸福感を感じていた。











「明日、敵を僕自ら殺しに行く」

その言葉にティナは胸騒ぎがした。
とても、とても悪い予感だ。
嫌な汗がじわじわと背中を伝い流れるのを感じる。

「ダメよトム、いかないで。
行っちゃ、駄目。」

ダメダメと、繰り返してティナは彼の黒い黒いローブに縋り付いた。

よくない予感がするの、いかないで。

ティナは何度も何度も言葉を紡いで、終いには頬を涙が伝った。

それを見てトムは少し驚いたようだったけれど、涙を優しく拭き取ってくれる。
あの時と変わらない瞳はで宥めるようにティナに言い聞かせた。

「大丈夫だよ、僕はここに帰ってくる。

君の隣に、だ。
僕は君に嘘はつかない、知ってるだろう?」

知っている、トムのいうことを聞いていれば全て上手く行くって分かってる。それでも言いようのない不安はティナの心を蝕んだ。
どうしても嫌な予感がする。そして、こういう時の勘は嫌なほど当たった。


失いたくない。彼を失ってしまったら、ティナには何も残らない。

「トム、お願いよ」

行かないで、
そう言わずにはいられなかった。トムはひどく切なそうな目でティナを見つめ涙で濡れた頬を撫でた。

「ごめんよ。」

目の前が真っ黒になるような不安感。ティナの涙は止まらなかった。
だって、私にはあなた以外何もない。



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