Largo


紅い



それは、今から7年前。

国家錬金術師を投入したイシュヴァール殲滅戦を通達されてから、内乱は終結を迎えようとしていた。

それは、その中でももっとも血を流した日であった。




―――ドォォォン!!

どこかでまた爆発。

土煙が舞い上がり、さらに視界は悪くなる。

「ゲホッ、どこだ…」

負傷した片足を引きずりながら青年は歩いた。

ズキリ、と痛む肩。気休めにしかならないが手を押さえつける。


風が吹く。


地に転がる死体があらわになる。

「うっ…」

受け止められない現実が吐き気になって溢れ出そうだった

「ぶじ、でいて…くれよ…!」

変わり果てた見慣れた風景。
涙とともに流れる後悔。


―――このへんの、筈なんだっ

ドンッと地響き。また起こる爆煙。吹き飛ぶ体は地に転がされる。

「ガッ、ハ…」

トンッと何かが体にぶつかる

「………?」

ゆっくり、上げた顔。その双眸に写る、残酷な、もの。

見慣れた服、見慣れた手、見慣れた…


「う、そ…だろっ」


ヒュッと息が上手く吸えない。

あぁ、気持ち悪い。

こんな、夢…はやく、醒めてくれ


はやく、


はやく、


はやく!!


「うあぁぁぁぁぁ!」


驚愕と悲哀と絶望の全てが混ざりあい、なにも…なにも…信じたくなかった

「うっ…うぅ、そんなっ…」

あったはずの少女の体。大好きだった紅い瞳。綺麗な褐色の肌。長く美しい銀髪。優しい手。

彼女だと思うものはなにひとつそこにはなくて。

半分吹き飛んでしまった彼女の体を思い切り抱きしめる。
聞こえてくる微かな息遣い。ヒュー、ヒューと。

「おまえ、まだ生きてっ…!」

体を少し放し、彼女の顔を見る。ごぽっと口から零れる血。

“死”を意味していた。

だけど、まだ死んでいない


閉じられた瞼に唇を落とす。


「きみは、いきて…いいんだ」


そして青年は両手を合わせた―――……




おわり
更新日2011.8.6


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