姉さんと休みを被せて、評判の喫茶処で甘味を堪能する。どの報道も、先の『輸入商社会長、心中事件』を熱心に報じていた。
「流石に引くわ」
卵菓子を食べながら姉さんが云った。今回の件は、組織内でも大々たる事件だった。各幹部は御抱え企業の潔癖を調べ上げ、構成員の上から下まで蚤取りをする事になった。
「でも鼠はもう失せた訳だし」
「いやそっちじゃなくて、卯羅の殺り方」
「殺り方?」
「中也さんすら引いてたから」
「だって、太宰さんの指示だったし」
紅茶を啜りながら、自分が始末した時の事を思い出す。男は兎も角として、女に関してはやり過ぎた気もしなくない。あの後、気の済むまで蹂躙しつくした。燈が消えるまでの五分間。自覚して、想いを深くするには十分だった。
「本当、太宰治の云うことなら何でも聞くね」
「なんか、聞いちゃうんだよね」
「それにしたって」
彼の唇が私のそれを捕らえ、手が身体を這った時。誰にも云えない関係が出来上がった。
「きっと、ひめごと」
「ひめごと?」
意味が解らないという顔で姉さんが聞き返した。
「私と太宰さんのひめごと」
前に読んだ本にあった。人と動物の違いはひめごとが有るか無いか。実を結ぶ事の無いひめごと。きっと結んでしまったら、居場所を喪うひめごと。
「くれぐれも踏み外さないでね」
姉さんは心の底から心配そうな顔をしていた。
「堕ちたらその時は、その時だよ」
窓の外は陽が陰っていた。