夢を見ていた。永い永い夢だった。
 誰かと誰かに手を引かれ、何処かへと歩いていた。笑っていた。今も一緒に居るぬいぐるみを、手渡された。「卯羅の一番のお友達だよ」と男の人が云った。私は其れに大きく頷いた。
場面が変わった。
 或る場所に居た。私は集団に囲まれていた。馬乗りになっている男が、胸ぐらを掴んだ。反射的に其の腕を掴んだ。骨が砕ける感触がした。力が緩み私は頭を床に打ち付けた。蜘蛛の子が散った。私は独りになった。
「此の子にそんな力が在る訳がない」男と女が云い争っていた。「医者に診てもらおう」結論を出していた。たらい回しで最後に行き着いた診療所が一番小さかった。先生は「精密検査の必要がある」と私を預かった。別れ際に女の人が、あのぬいぐるみを渡してくれた。「卯羅の一番のお友達だよ」と。
其処からは見覚えがあった。血だらけの白衣。背広と包帯の少年。紅蓮の髪の女性。帽子の少年。一緒に菓子を食べる少女。

前の話目次次の話