赤信号

治くんとお出かけ楽しかったな。
ママとお姉ちゃんとお夕飯食べて、今日の事お話して。お風呂入って、化粧水パシャパシャ。治くんが香水と同じ匂いのボディミルク買ってくれたから、早速使おう。
ベッドに入って、わんわん撫でなでして、治くんが買ってくれたうさちゃん抱っこして、おやすみなさい。
変な夢見たの。
怖くて気持ち悪い夢。
私の周りにお花がひらひらしてて、動物も沢山いた。目の前に知らない男の人が立ってて、物凄い罵り。
私がお前を捨てた、とか、何で産まれたんだ、って。よく解んなくて、言葉だけが頭をぐるぐるして、早く起きなきゃって、思えば思うほど気持ち悪くなって。
「───っ、か……ふぅ……」
「卯羅や、如何した」
「ママ……?」
夢にママは出てこなかった。
じゃあ、あの人は誰?
心臓がバクバクして、息が上手く出来なくて、喉がヒクッて変な音してる。「怖い夢でも見なんだか。もう安心じゃ、私が傍に居る」手を握ってくれて、背中を撫でてくれる。
「あんね、知らない人がね、うーちゃん怒るの。要らないって云うの」ずっと前にもあった気がする。けれどよく解らない。「ただの夢じゃ。気にするでない」ぎゅっと抱き締めてくれて。暖かくて安心する。なのになんか違和感。何でだろう。「学校は休むと連絡をしておくからの」
「ん……」
頭がぼんやりしてる。眠いって感じじゃなくて、何も考えたくないって感じ。
何となく治くんに電話したいけど、疲れちゃって動きたくない。「ママ、私もう少し寝てるね」
「そうか。食事の支度はしてある故、好きなときに食べると善い。私も仕事に行くからのう」
「行ってらっしゃい。お洗濯物、やっとくね」
「無理はするな。ゆるり休んでおれ」
バイバイ、手を振って。戸締りの音を確認してからもう一度布団に潜り込む。
でも怖くて目は瞑れない。またあの人が出てきたらどうしよう。やっぱり治くんに電話しようかな。学校だよね。でもな。でもな。
携帯の画面を見てみたら、留守電一件。
『卯羅?休むって聞いたから、君の家向かってる。卯羅は一人でおするばんが出来ないからね。紅葉さんには私が居ること、連絡してあるから。私が行くまで、絶対に誰が来ても答えないこと。善いね』
治くん来てくれる。
彼が来るまでずっとその録音を聞いていた。泣きながら、何回も。
埋められない何かを埋めようとするみたいに。





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