手紙

「同窓会だって、行くかい?」
「行く!」
皆、元気かなぁ。小学校の同窓会。治くんと一緒に、招待状の【出席】に丸を付けた。
何着てこうかなぁ。先生も来るんだって。驚くかな、私と彼の薬指。
「四年生のときに、未来の自分に手紙を書いたの覚えているかい?」
「そうだっけ?」
全然覚えてない。治くんは笑って頭をくしゃくしゃ撫でてくれた。「治くん覚えてる?」
「いいや、忘れてた」
なぁんだ、一緒だね。

先生も、皆も元気で何より。やっぱり指輪は驚かれた。大学入学と一緒に、同棲始めた事も驚かれた。
「手紙見ようぜ!」
クラスで一番元気だった子が叫んだ。それに釣られて皆集合。先生が持ってきた、お煎餅が入ってそうな一斗缶を覗き込みながら、これ誰のだろう、こっち多分俺の。
「はい、卯羅の」
「ありがとう!治くんのあった?」
「うん」
私のはウサギさん。治くんのは、それコピー用紙じゃない?
何書いたんだっけなぁ。全然思い出せないや。封筒を開けたら、クレヨンでいっぱい書いてあった。お絵描きも沢山。
『20才のうーちゃんへ 楽しいこと、いっぱいしてる?おさむくんと、いっしょにいる?けっこんした?およめさんになった?』
……一気に顔が赤くなった。覗き込んだ治くんがニヤニヤしてる。
「へぇ、卯羅は随分と私が好きなんだねぇ」
「好きだもん……治くんは!治くんは何書いたの?」
「私は……大したことは書いてないよ」
後ろに隠して見せてくれないの。「そんなのよりも、十歳の君のお願いは叶った?」
「叶った!叶ったよ。治くんが居てくれるんだもの」
「それは何より」

『彼女を、尾崎卯羅を頼む』
こんなこと書いたっけ。あり得ない。何故なら、今の私の字だから。
あの男だろうか。
私に余計な事を吹き込んだ男。
「手離す訳ないだろう……」
懐かしい学友と笑う彼女。
もう何があっても手離さないと、とうに決めている。私の所為で悩み、謂われない噂を流布された。償いかもしれない。だが、それだけでは無いのは確かだ。
「卯羅、そろそろ」
流れで二次会まで来てしまった。今日は彼女の実家に寄る予定だったのに。
「んー……ぎゅ!」
頬を桃に染め、私に手を広げる。「誰だい、人の婚約者を泥酔させたの」
「治くん〜……怒んないでぇ」
「全く……」
冷やかしてくる男達を一瞥し、その場を後にした。
「歩ける?」
「歩けるよ。平気」
「……これは一本取られた」
またそうやって。愛想を撒くのは私だけにしておくれよ。
「帰ったら、また未来にお手紙書こうかな」
「今度は何時の君に?」
「花嫁さんの私と、お母さんの私」
叶えよう。叶えてやろう。
ぎゅっと手を握り、もう離れないから。その手紙を読み返し、また、次の手紙を書こう。
あいつにも書いてやる。私が彼女を幸せにしたと。





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