お誘い

隠れながらの恋。
隠しながらの恋。
けれどしたいことは、したい。執務室の中だけで深めるものなんて。
「太宰さん」
「なに?嗚呼、この書類は確認終わったよ。あと此方は……そうだ、これを広津さんに。遊撃部隊の新しい職務についてだ」
書類の束を二つ。それを受け取りに、執務机の前へ。「それと」
書類に伸ばした手を引かれる。高い鼻と、少し笑んだ瞳が近づく。
「顔に出ているよ?」
「あ、え……っ……」
顔がみるみる赤くなるのが解る。昔から解りやすいと彼には云われてるけれども。ここで云わなかったら、永遠に機会は失われる。
「太宰さん……あの、一緒に……」
「やり直し」
ピシャリ。要求を理解し、更に顔が赤くなる。
「治、さん……一緒に、出掛けませんか?」
「何故敬語なの?善いよ、何処に行きましょう、お姫様?」
「茶化さないで!」
「だって必死なんだもの。ああ可愛らしい」
そのまま、言葉を舐め取るようにキス。
この人は、本当にもう……。
「今日、仕事終わりに。善いだろう?」
「……うん」
何処に行こうかしら。
私としか行けない場所、行かない場所が善い。
「この間、首領に連れてかれた料亭が中々に善かった」
美味しいご飯。どうしてこうも釣られてしまうんだろう。でもなんか、もっと別なこともしたい気がする。
「そうだ……お買い物行かなきゃ。洗濯洗剤が無くなりそうだったし、治さんも襟衣新しいの買おう?」
「……ねえ、自覚ある?」
「何が?」
私が並べたものに色気がないというなら、自覚はある。でもそうじゃ無さそう。
「夫婦じゃないかまるで」
「あー……」
日用品の買い出し、確かにそうかもしれない。かといって、特別行きたいところが在るわけではない。一緒に居て、でもそれが仕事じゃなきゃ善いんだ。
「そしたらこうしよう。明日は休業だ」
「明日会議あるけど」
「知らなーい。今の私は、君とのデートが大事だから……首領、明日の会合、織田作連れてってよ。どうせ私を連れてくのは護衛だろ?それか、広津さんの部隊を──えっ理由?とても大切な用事が入ったから。うん、可愛い部下がね、久しぶりにおねだりしてくれたんだ……違うよ、そうじゃない。まあそういうわけだから」
殆ど一方的に先生をやり込めた。この人に口で勝てる人って居るのかしら。
「さあ、これで明日は自由だ」
頬杖を付いて、満面の笑み。頭に浮かぶ「好き」の二文字。
そういえば、山下公園で何かお祭りやってた。確か……
「治さん、一緒にお花が見たい。お弁当も作る」
「花見?善いよ。なら、帰りに買い出しに行かなくてはね。……おや、結局君とはこうなる運命のようだね」
「そうやって……」
「君となら、素敵だと思うけど?」





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