甦った先代の調査中、爆発に巻き込まれ医務室にそのまま泊まり込んだ。
その翌朝、早くに森さんが、一人女の子を連れてきた。「お話相手するの?」と僕の目の前に回り込んできた。
「太宰くん」
目の前で彼女の手がひらひら。頬を突っつかれる。瑠璃玉のような眼に僕が映る。頭を撫でられる。
「なあに?」
流石に返事をしないと、ずっと構われそうだ。
「起きてた」
「誰も寝てなんていないよ」
「じゃあ何してたの?」
「新しい自殺方法を考えてた」
ずっと彼女の眼から視線を外せなかった。この世界で、誰よりも澄んだ眼をしている。まだ血塗れても、深淵を覗いてもいない。
「森先生、この子、可愛い」
「へ?」
森先生が間抜けな声を出した。僕ではなく、彼女が発したからだろう。診察台に座ってきた、瑠璃の子が膝枕。
「猫みたい」
頭を撫でられ、脇腹に優しく手が置かれる。なんだこの状況は。居心地が悪い訳ではない。何故だかこのまま眠ってしまいそうだ。
「太宰くん、私は先にあの子の様子を見てくるよ」
森さんはそう言い残して、部屋を出た。診察室に僕たち二人。
「君が僕の世話役と言うことは、僕の好きなように使って善いってことか」
「多分そう」
「なら決めた。好きなように使う」
僕は、にやっと、彼女に笑った。それに対して、顔をしかめるでもなく、解った、と頷いた。
ずっと僕の頭を撫で続けてる。
「名前は?」
「卯羅、尾崎卯羅」
「卯羅ね。僕は太宰、太宰治だ」
「太宰くん」
本当に猫を撫でてる気分なのか、耳の後ろ辺りを頻りに撫でてる。居心地の悪さは無い。
「そろそろ森さん追い掛けなきゃ」
「そっかあ……行ってらっしゃい」
もう一度、その瑠璃の眼を見ておこうと、身体を起こす。「卯羅」
「なあに」
首を傾げて答える。マフィアにしては、真っ直ぐと輝く眼。
「君の眼は沈んでしまいそうだよ」
解らない、そういう風にまた首を傾げた。
見詰めていると吸い込まれそう。蒼に反射する光。海底の様に輝く。
最深部に在るのは何だ。