寸前
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モブレな嫁
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却説と。何でこうなったのかしらね。その背広、森先生が買ってくれたものだから、あんまり手荒に扱わないで欲しいんだけど。下着も太宰さんが選んでくれたやつだから、触らないでもらえると有り難い。
「首領への反逆罪かな、これ」手首は縛り上げられてるし、目の前の莫迦は猿轡の代わりかな、厚めの多織留を手にしてる。というか、地下牢ってこういう事するところじゃ無くない?男が四、五人。あ、今電話してるからもっと増えるなあ。
「……末端の掃除ってこういう事?」
織田作から云われたな。末端の奴らなんて、本当に組織に忠誠を誓っているのかなんて解らない、って。虎の威を借りるなんとやら、も多いって。そういう可哀想な人たちの躾ってことかしら。
「さあ、幹部の愛人さん。あの色欲幹部をどうやって丸め込んだ?」
「抱いてって云ったら抱いてくれた」ちょっと違うけど、事実は事実。私から強請ったんだよね。
「遊女の娘は尻軽かぁ!」
楽しそうに笑いながら、太腿を撫でてくる。次第に内腿へと入ってくる。太宰さんまだかなあ。今、母様のこと、侮辱したよね。
「太宰幹部は女好きだろ?お前がそうさせたのか?俺たちも色狂いにしてもらえれば、幹部になれるかもな」
「だったらさっさとヤッちまおうぜ。そうそうヤれねぇよこんな女。高級泡嬢よりも上玉だろ」
「あの人は変態だろうから、後ろも開発済みだろ」まだなんだよね。意外と。
異能を使えばさっさと始末出来るけど、使うのも勿体無いし、今は使う時じゃない。
男たちは、私の体中に手を這わす。嫌悪感しか無い。治さんがしてくれる時は凄く気持ち良いのに。
「少しは声出せよ!」お腹に膝が入りそうだったから、脚で防いでそのまま蹴り飛ばした。治さんの赤ちゃん産むかもしれないんだから、やめて。他の奴にそのまま脚を掴まれたのは誤算だったけど。
「マジかよ……全剃りかよ……」下着をずらして覗く。吹き掛かる息も気持ちが悪い。治さんがしてくれる時はそれだけで達しちゃうのに。つるつるの秘部を見ようと、顔を寄せてくる。だらしない顔。
「本当に女と無縁そうなお顔ね。童貞さんなの?」
「マフィアってだけで寄ってくる女が居るのはお前も知ってるだろ?」
「そういう莫迦を始末する仕事もしてるんだけどね、私」
いい加減、脚が痛い。一人が内腿を舐めようと顔を近づけてきた。流石に勘弁して。そこは治さんが沢山口付けてくれた処なんだから。「舐めるのも得意だろ?」脚、お腹、あらゆるところに一物を擦り付けてくる。それにしたって……
「小さ……」治さんの半分以下じゃない?嘘でしょ。「太宰さんのが普通だと思ってた……」
「さっきからお前はぁ!女は黙って悦ばせてろよ!」
「自分を高級娼婦とでも思ってるのか?」
「売女は奉仕してろよ。俺たちが伝えておいてやるよ。男を悦ばせてる方が性に合ってるって」
あ───駄目だ。
これ、駄目だわ。
自分の手首に異能花を咲かせて、関節を外す。軟体化した手は、そのまま、ずるり。鎖から抜ける。大丈夫。私、治せるから。脚から男へ蔦を生やして、腕を砕く。漸く自由。背広まで逃げて、短刀を回収。抜刀しながら、脚で円を描くように、鳥兜を咲かせる。「ごめんなさいね、幹部の女になるには、力も無いと駄目なのよ」こいつらは、この組織には要らない。居たって、マフィアの品が落ちるだけ。薔薇の蔓を、そのお粗末なそれぞれに巻き付けて、ぎゅっと手を握ると、棘が食い込む。そのまま引き寄せれば、茨は私の方へと戻ろうと、それを裂きながら進んでくる。
「ほらほら、女はなんだっけ?」先ずは一人目。頸動脈。
「悦ばせてくれるんじゃなくて?」二人目。腹部大動脈。
「此処、好きなんでしょ?」三人目と四人目。大腿動脈。
「男なのに、女に善いようにされて、だらしないわね」五人目。鎖骨下大動脈。
「太宰さんは私の内膜まで好むの」最後。肝臓。
帰ったらお風呂入らなきゃ。この下着も、背広も、お洗濯しないと。
「だから云ったろ?私は特別だって」地下牢に響く、低く、魅力的な声。あ、待って、ちょっとゾクッとした。びちゃびちゃと、何も気にせず私へと真っ直ぐ来てくれる。
「卯羅はね、私でしか快楽を得られないんだよ」
私に云っているのか、それとも周りの男たちに云っているのか。定かではないけれど。
男たちの痕をなぞるように、治さんの手が動く。それだけで、息が乱れて、ましてや「私を見てよ」って云われながら、悪い顔されて。仄暗く細められた目と反して上がる口角。腰の疼きが止まらない。さっきみたいに、脚をあげられ──でも私が楽なように、肩に乗せてくれた。内腿から、秘部へと動く口。キスするみたいに、顔が近付いて……