「ただいま。遅くなってごめんなさいね」
溜まっていた書類仕事を片付けていたら、大分遅くなってしまった。それなのに、部屋は真っ暗。
玄関を上がると、足先に何か当たった。拾えば酒瓶。
「治さん、よく見つけ出したわね」
「……何しに来たの?」
彼の悪い癖。私も時折なるから、強くは責められない。
「お夕飯作るから、待ってて。お風呂は後で入りましょ」
「要らない」
卓袱台に突っ伏して、愛読書を枕にして。十五歳の頃と根は変わらない。
割烹着を着たけれど、お夕飯作るのは後回し。隣に座って、背中を擦る。出るのは深い溜め息ばかり。「お疲れね」
「異能力者って何故こうなんだろうね」
「歪だから異能力者なのよ」
歪んでいるからこそ異能力を得た。何故ならそれでしか満たせないから。
「私は愛されたかった。愛して欲しかった。誰にかは解らないけども。そしたら花で人を殺すようになったわ」
「……私はね」
「薬、でしょう?」
森先生が彼に約束した、楽になれる薬。それはどうやら私らしい。だったら彼が望む時に処方され、望む薬効をもたらすだけ。
「卯羅、私が君の異能で死にたいと云ったら、どの花を咲かす?」
「西洋木蔦で締めてあげるわ」
でもそれは不可能だから。隣で見守るだけ。
「中華粥でも作りましょうか。お風呂も熱めにゆっくり入りましょう」
「二人で?」
「そう、二人で」
少し声に嬉しそうな色が戻った。
「お風呂先がいい」
可愛い人。甘えん坊なのに孤独を好むの。でも一人にするなと泣く。面倒な人。
「お風呂の前にぎゅーしてよ」
「はいはい」