1.「好き」「愛してる」を使わないでラブラブ

私の1日はこの人と始まり、この人と終わる。長身に蓬髪、全身の包帯。物腰柔らかそうな表情だが、眼は笑っていない。
「ねえ、そんなに熱心に私の指見つめてどうしたの」
「綺麗だなって」
「この指に君は日々愛撫され、攻められ、絆されているんだよ」
この人は言葉の選び方がたまに変。わざとなんだろうけども。
「卯羅、あれ取って」
「ん」
この間から担当している事件の中間報告を手渡した。ついでに関連資料。
「あと…」
「これ?」
「そうそれ」
彼の陶器杯も。ミルクたっぷりの冷たい珈琲。
「太宰さんと卯羅さんって言わなくても通じてるんですね」
「長い付き合いだからねえ」
やり取りを隣で見ていた敦くんが、何か新しい発見でもしたように言う。
「そういうの羨ましいというか憧れます」
「私生活も仕事もずっと一緒だし」
「相思相愛ってやつだね」
端から見れば腐れ縁的に付き合ってる。当人たちはお互いが必要で付き合っているけれど。
「というより、私が治さんの意向に沿うように教育された」
「でも行き着く先は此処だろう?」
治さんが控えめに手を広げた。それに答えるべく、彼の背に手を回す。
「矢張、収まりが善い」
こんな駄目な先輩で済まないなと、敦くんたちには思うけれど。こうしているのが心地好い。前職では叶うはずもなかった夢。その夢の中で共に居れるなら、思い残すことなんて、きっと無い。

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