隣で丸まる背中に、体重を掛けた。其のまま、反応はない。
「ねえ」
「ん」
「太宰さん」
「なに」
後に言葉は続かなかった。
背中に手を置いた。少し、心臓の拍が伝わる。
それから頬を寄せた。骨張っている。そろり、とはいかないが、腕を胸へ回した。男の人。あんなに細いのに、矢張、男の人。
「何処からこうなったのだろうね」
「気付いたら」
ぐっと脇腹を引くようにして、体勢を変えさせる。顔も近づく。細く柔らかい髪が流れる。眼も其れに追従する。見上げるように其の顔を眺める。彼の腕が、私の髪を掻き分けるように、頭の下へ。もっと近付きたくて、肩の近くまで頭を乗せた。
「済まない」
腕を抜いて、また背を向けた。何度見ても寂しそうで、充たしてあげたくて。けれど、きっと、私なんかでは充たせない。それでも。それでも私は。
「此処に居るから、ね」
襯衣越しに背へ口付けた。
それからまた、背中をくっつけた。
彼の心拍が伝わる。其れと少しの震え。何かを啜る音。僅かに洩れた、短い吐息。