お義姉さん

珍しい人からの電子手紙。
治さんに女の子だけのお話、と伝えて待ち合わせの喫茶処に向かう。マフィアを抜けてから、折々では会うけど、私的には初めて。
「へ……?」
彼女の第一声に間抜けな声が出た。持っていた陶器杯が滑りそうになる。
「どういう事なの……」
「詳しく話しますと、探偵社の関係の男性から恋文を渡され、何故か彼等と一緒に樋口さんまで居て……」
「銀ちゃん」
「はい?」
「モテ期だよ」
はあ、と可愛い声で溜め息を吐くこの娘は、黒蜥蜴の十人長。仕事着じゃなきゃ大変可憐。女の子も惚れるのが解る。
「それにしても探偵社は誰が居たの?」
「人虎と手帳の……」
「国木田さんと敦くんか」
どっちかが渡した?絶対無い。ということは国木田さんが探してた元探偵社員という人か。
「……布団?」
「そう、その方です」
「はあ」
今度は私が溜め息を吐いた。
「樋口ちゃんは何で居たの……というか、同業者の匂い嗅げないの……部下でしょ……」
幼い頃から裏社会に足を突っ込み続けた結果、同業者の匂いを嗅ぎ分ける事が得意になった。時々街で見掛けたり、仕事で対峙する彼女はまあマフィアには向いていなかった。人を殺した後に病まないかなって少し心配になる。
「大方、銀ちゃんと芥川くんが一緒に居るのを見掛けて、変な勘繰りしたんだろうね」
「義姉さんと試しに呼べ、と云われました」
「あー……」
そうだろうね。そもそも芥川くんってそういうのに興味あるの?太宰に執着してるところしか見たこと無いけど。
元部下ながら色々疑問は浮かんだ。
「樋口ちゃんは、そっとしておいてあげて……」
「なるべく触れないでおきます」
銀ちゃんの話を聞く限り、完全に行動が不審者だ。とはいえ、相手は芥川くんだ。別に護身ぐらい雑作も無い。
話終えて、心安らいだのか、ほっと笑顔を浮かべてお茶を啜った。
「皆元気そうで善かった」
「元気ですよ。色々騒がしいですけど」
「今度女子会しない?マフィアの女子会」
「色々と濃そうですね……」

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