面会

集中治療室が暫くの棲みかになった。その控え室で呼ばれるのを待つ間も、尾崎は始終不安そうだった。病棟の事務に呼ばれ、入り口で手続きを行って、中へ入った。面会簿に続柄を書けとあり、少し迷ったが、保護者と書いた。「連れは?」と訊かれ、更に迷った。
「御友人ですと、基本的に御面会は……」
暫く考えて「本人の許嫁」と答えた。嘘を付くのは気が引けたが、尾崎が会えないというのは何か違う。特別に許可が降りて、彼女も面会できるようになった。
常に様々な音が鳴り響く。太宰の寝台は病棟のほぼ中央に位置していた。頭の上には、心拍、体内酸素、呼吸回数を表す波形と数字が画面に映されている。呼吸器の音が気味悪く響く。
「治くん……」
絞り出した声は弱々しかった。点滴をしていない腕には動脈圧を測定する管が入っていた。何処に触れるか戸惑っていた。
「触れたり、声掛けてあげてくださいね。ご本人にとって一番の薬ですからね」
福沢校長と歳の近そうな看護師が、優しく尾崎に声を掛けた。
「治くん、もっと可愛げあることにしてよ」
何となく太宰の指が動いた気がした。
「太宰、俺に一言云ってからにしろと言ったろ」
尾崎は手を握り、頬を擦っている。
「凄く美人。織田作先生、こういうこと云うの、どうかと思うけど、治くん凄く綺麗」
「国木田先生に連絡をしてくる」
二人きりにしてやろうと席をはずした。国木田先生は電話の向こうで呆気に取られていた。

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