二ヶ月

ここ最近、一ヶ月程体調が悪い。
心当たりは一つしかなくて、試薬を買って来、手順通りに試す。
陽性。
相談する相手は一人しか居ない。治さんが休みの日に、医務室の扉を叩いた。
腹部の不快感が止まらない、なんとなく熱っぽい日が続く、食欲がさして無い、試薬の結果。洗いざらい先生に報告する。
「めでたくご懐妊だよ」
与謝野先生が、母子手帳を貰うための届け、基礎体温を記す用紙を用意してくれる。
「先生、治さんにどうやって説明しよう……」
「どうもこうも無いだろう。あいつは腹の子の父親に成ったんだ。あいつも避妊しなかった、つまりそういう事だろ?」
もしかしたら、昔からの癖の所為かもしれない。入社してからは、ちゃんと避妊具をするようになったけど、その前は私が避妊薬を飲んで、妊娠を回避してた。この間は珍しく、避妊具をせず情事に耽った。それが、子供が欲しくてなのか、ただ、欲を満たしたいだけだったのかは解らない。
「でもね、治さんは、本当に赤ちゃん欲しいのか解らないし、それに……」
前職は「そんなのは親の勝手だろ?」
最近は「もう少し待って欲しい」
拒絶され、突っぱねられ。けれど私は望んでしまった。女、雌として仕方のない事のように思える。彼の遺伝子を遺したい。
「あんたが一番信じてやらなきゃ駄目じゃないか、ええ?」
「信じる、信じてるよ、でもね、怖くて……」
先生は知らない。私には本当の両親が居ないことを。居るには居る。だって私は存在しているから。けれど、私の記憶には存在していない。つまり、棄てられた。朧気な記憶すらない。知っているのは、私を産んだ事、私に犬のぬいぐるみをくれた事、私を棄てた事。そんな私が、ちゃんとこの子を愛して育てられるのか、自信も保証も無かった。
「卯羅、あんたがしっかりしな。太宰への説明は、時期を見て、妾が居る時に三人で話す。社長には妾から話しておくよ」
与謝野先生がきゅっと手を握ってくれた。暖かくて、治さんとも違う力強さ。
「妾が付いてるんだ。大船に乗ったつもりで居な」

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