太宰治と

『俺は太宰治!この世に彗星の如く現れた天才小説家だ!』

太宰治という男は、何故こんなにも面倒なのだろうか。
「名前!被ってるじゃんか!」
「嫌だなぁ、君に肖ったんだよ?」
「えっ…そ、そうなの?なら仕方ないなぁ」
「嘘だけど」
顔を合わせる度に何かしら言い合う。赤毛の可愛い猫目の太宰は、とても言動が幼い。治さんと言い合う姿は、父親に文句を言う子供。
「司書!俺、あいつやだ!」
「私も願い下げだね」
治さんも治さんで大人げない。
「あんたは俺の親父か?!親父気取りなの?!」
「君のような不肖の息子なんて嫌だよ」
「私は善いよ?」
「司書が母さんでも良いけど、こいつが親父は嫌だ!」
「君、父親嫌いだものねぇ」
私にはどうしてもこの子が見た目より幼く見える。頭を撫でてやると予想以上に喜ぶし、何かあるとすぐ私の所に報告しにくる。母性を擽られるってこういうことなんだろうね。
「ねえ、私たちに子供が居たら、こんな感じなのかなあ」
司書室で、館長への報告書、社長への報告書を纏める。何処でも報告書は付いて回る。
「さっき『君が息子とか有り得ない』って言ってたの誰?」
「アレはあれだよ」
「何だかんだ、気にかけてるんでしょ」
「なんだか、ああいう危なっかしいの、放っておけなくてね」
照れたように笑う。大好きな彼の横顔に、戻ったらお願いを聞いて貰おうと、決意した。

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