『やあ、僕の名は芥川龍之介。これからよろしく頼むよ』
貼り紙をしている。図書館の至るところに。特に食堂と補修室には念入りに。
「『禁煙につき火気厳禁』か…弱ったな」
「芥川先生、煙草は喫煙室かお庭で」
「嗚呼、司書さん。ごめんね、なかなか分煙というものに馴染みが無くて」
芥川は燻らせている煙草をもみ消した。
「君たちも大変だね。こんな仕事押し付けられて」
「昔読んだ本が無くなるなんて嫌だもの。それに、治さん───旦那にとっては、本が過去とを結び付けているから」
「指揮官の方?彼、君の夫なんだ」
芥川はさして興味も無いように、答えた。
「ほら、火消して」
「嗚呼そうだった。どうも癖でね」
「龍!」
「やあ寛。どうしたんだい?眼が怖いよ?」
菊池寛が、芥川の腕を掴みズカズカと歩いていく。
「指揮官様がお呼びだよ」
「えー……」
「頗る機嫌悪いからな。さっさと行くぞ」
二人を見送りながら、部隊が帰ってきたら何を食べさせようか、と考えた。
「その前に……」
書庫を覗いた。太宰と第一会派が次の潜書に関して、話し合っている。
太宰の眼が、肉食獣の光を帯びている。対する芥川は、何処か他人事のように話を聞いている。
「菊地くんと芥川くんなら、より善い連携が出せるだろう」
「俺が龍をサポートすればいいんだな?」
「そう。他の二人は、後方支援を頼む。指示は適宜出す」
どこか楽しそうな太宰をみて、献立を決めた。
「今日はビフテキかな」