騎士のようなアナタに捧ぐ物語 - episode1 08

いつも以上に騒ぎ混乱する街中。

そんな街中を1台のランブレッタが走行していた。
それに乗っているのは3人。

運転するため前方に座るザップ。
その後ろにレオナルド。
身体の小さい◯◯はザップに肩車してもらう形で乗っている。

2つしかなかったヘルメットはレオナルドと◯◯がつけている。
◯◯は身軽さやヘルメットの大きさから考えて自分はいらないと断ったが、問答無用でザップに被せられ首元のベルトを止められてしまった為、渋々とされるがままになった。

道路交通法的に間違いなく捕まっているだろう図。
最も無法地帯に近いHLでは関係ない。

あの場を受け持つと言ったクラウスを置いて、ゲートの鍵となる音速猿を追い掛ける為、彼らは走っていた。

クラウスさんの勇姿が〜と名残惜しそうに零した◯◯のセリフは割愛。
チャンスがあればクラウスの闘う姿を惚れ惚れと見ているのだ。
クラウス命と言って憚らないこの少女の感性は他の者からすれば少々不可思議なものである。

「◯◯、雌犬に繋いでくれ」
「はーい」

ザップに言われ◯◯は彼から受け取った携帯でチェインの番号を探す。
ボタンを押し呼び出し画面になったところでそれをザップの耳に当てる。

これならザップは両手でハンドルを握れる。
通話しながら運転する事は危ないが、両手を使えれば多少危険も減るだろう。

『はい…何か用? SS』
「SS? 何だSSって」
『シルバーシット、ぎんいろのクソ』
「あーもー、お前早く真っ二つにならねえかな」

流れるような罵倒会話。
あまりの自然さに普通の会話をしているように思えてしまうから不思議だ。

「お前の位置はGPSで確認してる」
「ストーカーか」
『訴えるわよ』
「…」

真面目に話をしようとしたが、頭上と電話の両方から容赦ない言葉が降ってくる。
ザップは言い返すか迷ったが、時間の余裕もない為、諦めて話を進める。

「それでな、あのガキが半身出現の瞬間を『視れる』らしい。猿を遠距離から視認できる場所に何とか誘導してくれ」
『了解』

手短に用件を伝え通話が終了する。
ひとまず指示が来るまでチェインのGPSを追うように走る。

「あ、あの、君…」

ザップが返された携帯を閉まったところでレオナルドが◯◯に声を掛ける。

「◯◯」
「え?」
「◯◯、だよ。レオナルドくん」
「あ、うん、◯◯?」

振り返ってレオナルドと目を合わせ名前を告げる◯◯。
その名をレオナルドに呼ばれると彼女は綻ぶように笑う。

事務所にいた時は幼い外見に見合わない雰囲気に違和感を覚えていたが、今の笑みは歳相応の無邪気なもので、レオナルドは少し安心した。

「君みたいな小さい子が一緒に来て大丈夫なのかい?」

ひとつ間違えば失礼な質問だろう。
レオナルドも分かっているのか、「いやッ、バカにしてるわけじゃないんだけど…!」と慌てて付け足している。

ライブラに所属しているとはいえ幼い子供となればそう思われても仕方がない。
◯◯自身も理解している。

「こんなスガタでも、せんとういんなんだよ。だいじょーぶ」
「おお、こんなクソチビでもちゃんと役に立つから心配すんな」

よく言われるのだろう。
気にした様子もなく答える◯◯。
しかしザップの入れたフォローは聞き捨てならなかったようだ。

「チビは、よけい」
「ぐっ!? ほ、ほらな…人の首絞めるくらいだ…強…って、おまっ、マジで絞めんなッ!!」

◯◯はザップの言葉に怒りを覚え、肩車状態を良い事に首に脚を絡めて絞める。
入り所が良いようでザップは途中からやめろと深刻に訴えたのだった。

2015.05.31 up

- 8 / 13 -
prev | next



[ menu ] [ top ]