騎士のようなアナタに捧ぐ物語 - episode1 09
エンジンをふかしてランブレッタが止まった。
首を絞められた苦しさに危険を感じて止めたわけではない。
前方にうねった長い黒髪を持つ大柄な男が立っていたからだ。
「…よお、ザップ、◯◯。世間が大変な事になってるな」
『大変な事』を微塵と感じさせない口調で話す男。
ライブラとも深い関わりのある男だ。
「………『武器庫(アーセナル)』のパトリックだ」
「パトリックさん、こっちは、しんいりのレオナルドくん」
「よろしくな、新入り」
レオナルドにパトリックを、パトリックにレオナルドを紹介するザップと◯◯。
座ったままも良くないと思いレオナルドはランブレッタから降りる。
「通常火器から払魔用護符展開キット、ドイツの最新鋭多脚戦車から部◯分爆撃系人◯工精霊まで、およそこいつに揃えられねえ物は何も無え」
「…強そうですね」
ザップの説明、そして、パトリックの雰囲気を見て、レオナルドは素直な感想を述べる。
「バカ言うな。こんな気の弱い男は他にいねえよ」
「みためとちがって、ヘイワシュギだよね」
「はっはっは、その通り。俺が用意してお前らが使うんだ」
笑って朗らかに言うが内容は全く平和ではない。
本当の平和主義は武器なんか用意しない。
そのツッコミが出る前にレオナルドの手に重みのある武器が乗せられる。
「…な…!? …これ…!!」
「何だよ、お前用に決まってンだろうが」
レオナルドが手に持つ物は思念誘導式40ミリハンドランチャー。
至近距離で放てばほぼ100%当たる代物。
目が良いだけの素人でも外す事なく当てられるだろうとザップは説明する。
「威力こそ抑えてあるが、あの猿粉砕するには十分よ」
「………!! …粉砕!?」
物騒な物、そして、物騒な言葉に怯むレオナルド。
そんな彼を説得するようにザップは続ける。
「4ツ目の強盗野郎を見たろ。ああいう風に生きたまんま召喚門(ゲート)の依り代にされる場合、大抵躰の中に術式が埋め込まれてるわけさ。その術式の繋がりを一発で破壊するには具体的に肉体を吹っ飛ばすしか無えんだよ」
その説明を聞いたレオナルドの頭の中に、モザイク必至の粉砕された音速猿の姿が浮かび上がる。
それを自分がやる?
「えええええええ。いやちょっと…僕には…無理…」
「あぁ!? 無理もゲリも無え!! やるorダイor…デスだ!!」
何故2択でなく3択にした。
短気なザップは弱気なレオナルドにまたもや掴みかかる。
もはや癖になっているのではないだろうか。
「後ろ2つは同じじゃねえのか?」
「ちょーリフジン、ちょーゴクアク」
「うるせえッ」
イライラするザップの後ろで冷静にツッコミを入れるパトリックと◯◯。
それに更に苛立つザップ。
「ハゲた事ばかり言ってるとイワすぞコラ」
ヤのつく商売の人間ではないかと思うザップの雑言。
それを遮る着信音が響く。
まだまだ言い足りない思いはあったが、連絡を無視できず、ザップは携帯を取り出し通話ボタンを押す。
「…何だ」
『どこにいるのウジモンキー!! もうすぐ次の『解放』だわ!! グレートセントラルパークに追い込むわよ!!』
スピーカーモードでないにも関わらずチェインの声が周りに響く。
それを聞いて◯◯はタイマーを確認する。
確かに後数分で次の解放だ。
「とりあえず、じぶんができるコト、やろう」
◯◯は小さな手でぽむぽむとレオナルドの脚を叩き慰めの言葉を投げ掛ける。
「う、うん…」
レオナルドは手元の銃を見つめ、迷う様子を隠せずに頷く。
覚悟は簡単に決まりそうもない。
それでも◯◯、ザップ、レオナルドはパトリックと別れ、チェインの言葉に押されるようにして駆け出した。
2015.05.31 up
- 9 / 13 -
prev | next
[ menu ] [ top ]