食べようか

今日の食堂は今まで見たことの無い混みようだった。

それもそのはず、本来なら今日の午後の授業はなく午前で帰れる予定だった。だが、急遽午後から政府の方々が雄英高校の視察に来るとのことで午後の1時間だけ授業をやらなくてはならなくなってしまったのだ。普段ならお弁当を持参し、教室で食べるのだが、午前で帰れると思っていたのでお弁当を作ってこなかったのだ。

自主練などがある生徒はお弁当を持参しているから全校生徒が学食に集まっている訳ではないが、それにしても人が多い。

学食でカレーライスを注文し、席を探していると運良く2人掛けの席に座ることができた。この混雑だ。誰かと相席になっても仕方ないなと思いつつ美味しそうなカレーライスに手をつけ始める。


食べ始めて数分、目の前に美味しそうなカツ丼が置かれる。

(カツ丼美味しそうだな…。次きた時はカツ丼頼もう…。)

そう思いながら、ふと頼んだ人の顔が気になって正面を見ると座っていたのは

「爆豪君!?」

「あ?ンだよ」

「いや…!なんでもないけど、まさか目の前に座るのが爆豪君とは意外だった。」

「ココしか空いてねぇんだよ。いいから黙って食えや。」

本当に意外だった。
まさか爆豪君が目の前に座るなんて想像もして無かった。いや、この状況だから誰が座ってもおかしくはない。おかしくはないのだが同じクラスでもあまり話をしたことのない爆豪君が今目の前にいる状況。下手なことを言ったりして彼を怒らせたらどうしようか、本当なんていうか、

「緊張する…。」

「何がだよ。」

「へっ、あ、いや。爆豪君と一緒にいることとか今まで無かったし今凄い緊張してるんだよ…。」

「ンなことかよ。つか入試ん時1回一緒になったことあんだろ」

「入試の時?」

「あ?覚えてねぇのかよ。」

「恥ずかしながら自分のことに精一杯過ぎて入試の時誰と会ったのか全然覚えてないんだよね、」

「はっ、鶏かよ。」

「ひどっ…!」

「つかお前いつも1人で食ってんのか。」

「いつもではないけど…、学食の時は大体かな…?響香ちゃんとか梅雨ちゃんとかお弁当だしね。」

「そうかよ。」

「なんか…爆豪君今日はよく喋るね。」

「あ?俺はいつでも喋り倒してるわ。なめてんのか。」

「えええ…喋り倒してるの…?それはそれで爆豪君らしくないね」

「るせぇ。」

気付けば爆豪君が食べていた筈のカツ丼は見事に無くなっていて、もう席を立とうとしている。
割と楽しかった時間はもう終わりそうだ。

「爆豪君もう戻る?」

「戻る。」

「そっか、じゃあまた教室で。うるさくしちゃってごめんね。」

「ん。」

爆豪君が食器を戻しに立ち上がり背を向けた後、私も早く教室に戻るためカレーライスを口に入れる

すると突然爆豪君が振り向いた。

「おい。」

「…?」

「明日の昼、またここの席に来い。来なかったら殺す。」

「!?」

それだけ言って爆豪君はまた前に向き直し食器を片付けに行った。

カレーライスを食べていた手がまた止まる。
今の言葉は明日も一緒にお昼を食べてもいいということだろうか。
なんだそれ。凄く嬉しい。

明日のお昼は何話そう。
今からそんなことを考えてしまう

今日が午後の授業になって本当に良かった。

そう神様に感謝しながら私も食器を片付けた。

食べようか

(そういえば筆記試験の時、爆豪君の隣の席だった気がする…。)
(試験前、爆豪君が落としたペン拾ったんだっけ、爆豪君あれもカウントしてくれてるのか…!)
(明日のお昼はこのことを話そうかな)